2017年09月17日

ドリーム(原題:Hidden Figures)

『ドリーム』ポスター図s.jpg

監督:セオドア・メルフィ
原作:マーゴット・リー・シェッタリー
脚本:アリソン・シュローダー、セオドア・メルフィ
撮影:マンディ・ウォーカー
音楽:ハンス・ジマーほか
出演:タラジ・P・ヘンソン(キャサリン・G・ジョンソン)、オクタビア・スペンサー(ドロシー・ボ―ン)、ジャネール・モネイ(メアリー・ジャクソン)、ケビン・コスナー(アル・ハリソン)、キルステン・ダンスト(ビビアン・ミッチェル)

米ソが熾烈な宇宙開発競争をしていた1961年、ソ連が有人ロケットの打ち上げに成功し、出遅れたアメリカはマーキュリー計画を推進した。NASAの研究所には優秀な人材が集められ、多くの女性が計算係≠ニして働いていた。最先端のこの施設にも外界と同じく根強い人種差別が残っており、白人と黒人の場所は分かれ、黒人は管理職になれず、俸給にも差があった。
黒人女性ばかりの“西計算グループ”の仲の良い3人。ドロシーは職場の実質的なリーダーだったが、昇格も昇給もない。かけあうと白人上司ミッチェルは「仕事があるだけいいでしょ」とにべもない。この2人のやりとりに後も注目を。
キャサリンは、西グループから初めて東の宇宙特別研究本部に移動になる。山のような書類を目の前に積まれ、着々とこなしていくが、白人男性ばかりの職場には黒人用・女性用トイレもなく、仲間のいる西の端まで走らねばならない。少女のころから数学の天分を見せていた彼女は、上司のハリソンに認められ、難題を解き明かしてゆく。計算係の彼女が出した結果は全て白人男性の成果となるのだったが…。メアリーは技術部に配属され、エンジニアを目指すも、必要な学歴を身につけられるのは白人ばかり。黒人で、しかも女性には門戸が開かれていなかった。そしてある日、地球周回軌道を初めて飛ぶ予定の宇宙飛行士ジョン・グレンがNASAを訪れた。
dream main.jpg

この3人の素敵な女性たちは、実在した人たち。宇宙開発競争の時代、人種差別と男性優位の壁に阻まれながらも、卓抜な才能とスキルでNASAにおおいに貢献していきます。エンジニアを目指すメアリーが白人限定の学校に行くために、どうアプローチしたのか? 大型コンピューター(IBM)がNASAに入ってから、ドロシーが計算グループの存続を図るために何をしたのか?素晴らしい才能のある特別な人たちではありますが、ひたむきに仕事にうちこむだけでなく、それぞれが子育ても家事もする家庭人でもありました。つくづく「カッコイイ!!」。それなのに、ご当地のアメリカでさえ、あまり知られていなかったそうです。宇宙飛行士の後ろには技術と理論を支えた科学者や技術者が、その陰にはこうした女性たちがいました。原題は『Hidden Figures』(隠された人たち)。Figuresには人物、数字、など多くの意味があります。白人社会の背後にいて知られなかった彼女たちのことでもあり、彼女たちが見つけ出す数字のことでもあるのでしょう。
演じる女優3人が個性的でしかも可愛い! ジャネール・モネイはミュージシャンですが、『ムーンライト』ではシャロンを大切にするテレサ役。オクタヴィア・スペンサーは『ヘルプ 心がつなぐストーリー』(2011)のメイド役がすぐに浮かびます。タラジ・P・ヘンソンはテレビが多いようでしたが、 ジャッキー・チェン版『ベスト・キッド』(2010)のジェイデン・スミスの母役です。
リサーチした実話をドラマとして仕上げていく構成、セリフの数々も巧みです(脚色賞ノミネート)。セオドア・メルフィ監督は『ヴィンセントが教えてくれたこと』の監督・脚本、『ジーサンズ はじめての強盗』の脚本を担当しています。今後が気になる監督さん。
同じような思いをしてきた働く女性たちは、自分を重ねて涙したはず。観終わったこちらも「やった!」とガッツポーズがしたくなる元気の出る映画です。久々にスカッとさせてもらいました。(白)


2016年/アメリカ/カラー/シネスコ/127分
配給:20世紀フォックス映画
(C)2016 Twentieth Century Fox
http://www.foxmovies-jp.com/dreammovie/
★2017年9月29日(金)全国ロードショー
posted by shiraishi at 19:11| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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