2017年07月30日

海辺の生と死

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監督 : 越川道夫
出演者 : 満島ひかり、永山絢斗、井之脇海、川瀬陽太 、津嘉山正種

太平洋戦争末期の昭和19年12月、奄美・カゲロウ島。国民学校の代用教員・大平トエは、校長から海軍特攻隊の朔中尉を紹介され、父上の書庫から隊員の指導用に書物を選んで貸し出してほしいと頼まれる。朔中尉が隊長を務める部隊のために、トエの家で演芸会が開かれる。トエの生徒ケコちゃんが「八月おどりのうた」の踊りを披露する。兵隊たちが「同期の桜」を歌うが、朔中尉は一緒に歌わない。「あんな歌よりも、ケコちゃんが歌った歌を覚えたいです」という朔中尉。数日後、部下の大坪が朔中尉の手紙を持ってくる。「今夜9時ごろ、浜辺に来てください」
惹かれ合う二人は、その後、周りの人に気がつかれないように塩焼小屋で逢瀬を重ねる。
沖縄が陥落し、広島に新型爆弾が落ちた数日後の夏の日、ついに朔中尉に出撃命令が下ったことを大坪が知らせにくる・・・

「死の棘」の著者である島尾敏雄と、その妻、島尾ミホの出会いを、ミホの短編集「海辺の生と死」や、島尾敏雄の「島の果て」など、二人の戦争経験を綴った小説を基に描いた作品。
奄美 カゲロウ島のモデルとなった加計呂麻島でロケを敢行。トエを演じた満島ひかりは、沖縄県で育ったが、ルーツは奄美大島。しっとりとした中に情熱を秘めたトエを体現していて、まさに適役です。
死の淵にいたからこそ、精一杯愛し合いたいと願った二人の思いが、奄美の風景と共にずっしりと伝わってきました。

朔中尉のモデルとなっている島尾敏雄は、1943年、8月に九州帝国大学を半年繰り上げで卒業し海軍予備学生を志願。1944年(昭和19年)10月、第十八震洋特攻隊隊長となり、奄美群島加計呂麻島で待機中に終戦を迎えています。
特攻艇・震洋は、小型のベニヤ板製モーターボートの船内艇首部に炸薬を搭載し、搭乗員が乗り込んで操縦して目標艦艇に体当たり攻撃をするもの。私の父も、長崎の大村湾・川棚で震洋特攻隊隊長をしていました。川棚で震洋の模型を見たことがあるのですが、父から「こんなベニヤ板で作ったお粗末な特攻艇を見て、日本の海軍も終わりだと思った」と聞かされました。この映画の中でも、永山絢斗演じる朔中尉が同じようなことをつぶやいています。当時は、そんなことを表立っては言えなかったことでしょう。
敵艦に体当たりしても、それほどの打撃を与えるとは思えない震洋の特攻隊員2500人程が戦死しているとのこと。ほんとに虚しいです。(咲)


2017年/日本/DCP/5.1ch/16:9/カラー/155分
配給:フルモテルモ、スターサンズ
公式サイト:http://www.umibenoseitoshi.net
★2017年7月29日(土)テアトル新宿ほか全国順次ロードショー
posted by sakiko at 22:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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