2017年07月09日

空と風と星の詩人 尹東柱(ユン・ドンジュ)の生涯   原題:ドンジュ  英題:Dongju:The Portrait of a poet

監督:イ・ジュニク(『王の男』『ラジオスター』『ソウォン』『王の運命』)
脚本:シン・ヨンシク
出演:カン・ハヌル(『20歳』ドラマ「未生−ミセン」) パク・チョンミン(『オフィス』ドラマ「応答せよ1988」) キム・インウ(『暗殺』)

死して、韓国の国民的詩人となった尹東柱。
1917年12月、当時の満州国間島の明東村(中国吉林省東南部)で生まれる。従兄の宋夢奎(ソン・モンギュ)も同年9月に生まれ、二人はその後、平壌の中学校、ソウルの延禧専門学校(現・延世大学校)、そして、日本留学と共に人生を歩む。
ドンジュは、カトリック系の中学校時代から詩作を始める。父は医師になっても詩は書けると医科に進むことを願うが、詩人になりたい思いを貫き文科に進む。
1942年、立教大学に進学。日本留学を前に、やむなく創氏改名に応じ平沼姓を名乗る。戦時体制の気風が高まり、半年後、同志社大学に転学。京大に在籍していたモンギュと同じ下宿に移り住む。
1943年7月、独立運動に身をやつしていたモンギュが逮捕される。ドンジュも逮捕され、詩や日記は押収される。治安維持法違反で2年の懲役となり、二人は福岡刑務所に投獄される。1945年2月、ドンジュ獄死。3月にモンギュも獄死。
 1948年に遺作を集めた詩集「空と風と星の詩」が刊行される。非業の死を遂げた人生と共に、抒情詩人・民族詩人・抵抗詩人として知られるようになり、今や韓国の誰もが知る国民的詩人である。
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ドラマ「未生−ミセン」で、端正なエリート新人サラリーマンを好演したカン・ハヌルが、詩人ユン・ドンジュを体現しています。イ・ジュニク監督は、遺されたユン・ドンジュの写真に雰囲気の似たカン・ハヌルを抜擢。また、韓国の人たちのモノクロ写真のユン・ドンジュのイメージを崩さないよう、映画もモノクロで製作したそうです。

日本留学を前に、やむをえず創氏改名に応じたドンジュですが、母国の文化は忘れてはならないと母国の言葉で詩を綴り続けています。逮捕された日、ドンジュの机には帰郷するための切符が残されていたそうです。
 この映画を観て以来、ずっと重いものが心の中にのしかかっています。ドンジュの非業の死は、日韓併合時代が生んだ悲劇の一つ。あの戦争の時代、韓国人だけでなく、多くの日本人も無念の死を遂げたことにも思いが至ります。そして、今も世界の各地でやりたいことを好きなようにできないでいる人たちがいることにも。言いたいことを言えない時代がまた押し寄せてくるのではと不安にもなります。
こんな風に自由に感想を書ける幸せを大切にしなければとつくづく思います。(咲)


2015年/韓国映画/110分/B&W/2.39:1
配給:スプリングハズカム
「ハートアンドハーツ コリアン・フィルムウィーク」の1作として上映される。
★2017年7月22日(土)〜8月11日(金) シネマート新宿
7月29日(土)〜8月11日(金)  シネマート心斎橋

posted by sakiko at 18:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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