監督・脚本・撮影・編集:アレクサンダー・ナナウ
ルーマニアの首都ブカレスト。その郊外に見捨てられたようなロマ・コミュニティがある。おんぼろのアパートの1室には10歳の少年トトと姉二人、アナ17歳、アンドレア14歳が住んでいる。母親は麻薬売買の罪で服役中。父親はいない。母親の弟が子どもたちの面倒を見てくれるはずだったが、ドラッグや酒を持ち込んで悪友とたむろするばかり。男たちが注射を打っているのを目にしながら、ベッド代わりの椅子で眠るトト。アンドレアはそんな家に寄りつかず、友達の家を泊まり歩いている。アナは先が不安でドラッグに手を出し、逮捕されてしまった。アンドレアは監督から渡されたカメラに向かって、誰にもいえなかった胸の内を語り始める。トトはヒップホップのダンスを知って、初めて夢中になれるものを見つけた。
子どもは生まれてくる家も親も選べません。それしか知らなければどんな環境であろうと、それが日常で生活の場になります。『ムーンライト』のシャロンは、母親が麻薬中毒・売春で薬代を稼ぐような家で育ったけれど、他人のフアンとテレサからたくさんの愛情を注がれました。
ところがこのドキュメンタリーの姉弟には、そんな大人が身近にいません。まともな仕事も希望もない大人は、酒やドラッグに浸り過酷な現実から一時でも逃れようとしています。トトの目に希望の光が灯ったことで、アンドレアが少し変わります。明るくて暖かい方へと向かうのは自然の理なのでしょう。各地の映画祭で絶賛されたそうですが、あの子たちは今どうしているのか、その後が気になります。(白)
2014年/ルーマニア/カラー/93分
配給:東風、gnome
(C)HBO Europe Programming/Strada Film
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★2017年4月29日(土)ポレポレ東中野にて上映中 ほか全国順次公開