2017年04月09日

人生タクシー  原題:TAXI

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監督・出演:ジャファル・パナヒ(『白い風船』『チャドルと生きる』『オフサイド・ガールズ』『これは映画ではない』)

タクシーに次々に乗ってくる客との会話で進む物語。最初の女性客。「これ、防犯装置?」カメラのことか。次に乗ってくる男性。「タイヤが盗まれた。盗んだ奴、絞首刑にしてやる」教師だという先客の女性が「貧しい人が追い詰められて盗んだのかも。絞首刑にし過ぎ」と諭す。
空になったタクシーに「貸切にしてくれ」と男性客。「パナヒさんですね」と助手席に乗ってきた男はレンタルビデオ屋。ここで運転手の顔が映し出され、パナヒ監督自身が運転しているのが明かされる。(2015年の東京フィルメックスで『タクシー』の題で上映された折には、ここでどっと笑いが) 「この間、あなたのところにジェイラン監督の『昔々、アナトリアで』を届けましたよ」とビデオ屋。
バイクの事故で血だらけになった男が妻と乗ってくる。「紙を! 遺言を書かないと妻が相続もできない」と息絶え絶えの男。遺言を携帯で動画で撮ってあげる監督。病院に送り届け、さらにビデオ屋との道行き。「こうでもしないと外国映画が観られない。僕と組んで商売しないか?」と監督の宣伝効果を見込む男。
 金魚鉢を持った老女二人に「アリーの泉に金魚を正午までに返さないと命にかかわるの」とせかされる。遠いので躊躇する監督。おまけに金魚鉢が割れる。二匹の金魚をビニール袋に入れてあげる。「姪を学校に迎えに行くので、ここで降りて〜」と、ほかのタクシーを探してあげて乗り換えさせる。
学校に着くと「映画監督の伯父さんが来ると言ってたのに、なんでこんな車で来るの」と怒る姪のハナちゃん。学校で映画作りのワークショップをしていて、先生からの条件は、「善人の男にはネクタイをさせない。イスラーム名をつける。髭がなかったら髭をつける。政治や経済は駄目」というもの。これはまさに今のイランで検閲を通す条件か。
この後もタクシーの運行は続き、赤い薔薇の花束を持って女性が乗り込んでくる。「弁護士会が私の停職を決めたの」という。本物の弁護士で、女性たちを擁護した罪で収監され、実際にハンストをされた有名な方だと、イランの友人が教えてくれた。「この薔薇をすべての映画にかかわる人に」と降りていく。
老女たちの忘れ物の財布に気づき、アリーの泉に届けにいく・・・


パナヒ監督は、2010年、政府への反体制的な活動を理由に、映画製作・脚本執筆・海外旅行・インタビューを20年間禁じる判決を受ける。違反すれば6年の懲役の可能性もあるのに、その後も『これは映画ではない』(2011年カンヌ国際映画祭キャロッス・ドール賞)、『閉ざされたカーテン』(2013年 ベルリン国際映画祭銀熊賞【脚本賞】)、『人生タクシー』(2015年 ベルリン国際映画祭金熊賞)と、3本の映画を政府に無許可で撮り続けています。
でも、映画を観ると、気負ったところは全然感じられなくて、ユーモアに溢れる会話の中に、しっかりメッセージを散りばめているという感じ。

姪のハナちゃんの姿には、9歳で映画を初めて作った ハナ・マフマルバフを思い起こしました。偶然同じハナ。『人生タクシー』がベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞した折には、国外に出られないパナヒ監督に代って、ハナちゃんがトロフィーを受け取りました。こちらのハナも、女優として監督として将来有望で楽しみです。

★テヘランの乗り合いタクシーの仕組み
 映画はパナヒ監督らしく、ちょっと作りこみ過ぎた感はありますが、テヘランの乗り合いタクシーのシステムなら充分ありえる展開。
テヘランでは流しのタクシーは、基本、乗り合い。座席に空きがある車に向かって、行き先を叫んで乗せてもらいます。大型バスが前と後ろで男女別になっているのに、タクシーは男女混在。最近、女性が運転手の女性専用タクシーもあるけれど、混在も健在。そこがイラン!
乗り合いタクシーは、通りを直進するのが基本。(決まったコースを行く直進でない乗り合いもある) 違う方向に行きたい場合は、交差点で降りて、別のタクシーをつかまえる。それが面倒な場合は、貸切にして貰う。レンタルビデオ屋は「ダル・バスト(直訳で扉を閉めるの意味)にしてくれ」と言って、目的地まで行って貰っています。もちろん代金はそれなりに高くなります。交渉次第。
初めてイランに行った1978年(まだ王政の時代!)、タクシーに乗ったら、途中で助手席に乗ってきた男性が運転手と親しく話しているので、友人をちゃっかり乗せたのかと思ったら、初めて乗せた客でした。イラン人は話好き。
タクシーの認可かどうなっているのか知らないのですが、運転手から「実は教師をしているけど、安月給なので」とか、「僕は大学生」とか言われたことも。なので、監督が生活費稼ぎにタクシーの運転手をしているのもありえます。身分がばれたら、「映画のネタにね」と言えば納得ですね。
本作には、これまでの監督作を彷彿させられるエピソードがいっぱい。でも、観ていない人にも、ちゃんと楽しめる作りになっています。(咲)


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公開間近! 新宿武蔵野館には、パナヒ監督の運転するタクシーが登場!

2015年/イラン/82分/ビスタ(16:9)/5.1ch
配給:シンカ  提供:東宝東和  協力:バップ
公式サイト:http://jinsei-taxi.jp
★2017年4月15日(土)から新宿武蔵野館ほかで公開
posted by sakiko at 09:37| Comment(0) | TrackBack(0) | イラン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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