2017年01月15日

アラビアの女王 愛と宿命の日々  原題:Queen of the Desert

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監督・脚本:ヴェルナー・ヘルツォーク
出演:ニコール・キッドマン、ジェームズ・フランコ、ダミアン・ルイス、ロバート・パティンソン

ガートルード・ベル(1868年〜1926年)
20世紀初頭、オスマン帝国崩壊後のアラビア半島で国境線引きに関与し、アラブの民に“砂漠の女王”“イラク建国の母”と呼ばれたイギリス女性。
本作は、ガートルード・ベルが情熱を注いでアラビアの地を歩いた軌跡を、彼女の愛した男性たちを軸に描いた物語。

英国鉄鋼王の家庭に生まれ、オックスフォード大学を女性として初めて首席で卒業し、社交界にデビューしたガートルード・ベル(ニコール・キッドマン)。女性の社会進出は難しく、また、高学歴の彼女に求婚者も現れない。父は、そんな彼女に、叔父がテヘラン駐在公使をしているペルシアへの旅を勧める。テヘランでガートルードは、三等書記官のヘンリー・カドガン(ジェームズ・フランコ)と出会い、彼からペルシア語やペルシアの詩の文化を学ぶ。彼と一緒になりたいと願うガートルードだったが、身分が違うと父は認めない。父を説得しようと一時帰国している間に、ヘンリーは亡くなってしまう。
傷心の彼女は、考古学とベドウィンの研究に熱意を注ぎ、優秀な召使いファトゥーフ(ジェイ・アブド)を伴い、アラビア半島2,500キロに及ぶ砂漠縦断の旅へと出る。旅の途中、ぺトラの遺跡でT.E.ロレンス(ロバート・パティンソン)と出会う。のちにアラビアのロレンスと呼ばれる男の若き頃だ。
彼女のアラビア半島縦断に、アンマンの英国領事館は難色を示したが、ダマスカスの英国総領事であるリチャード・ダウティ=ワイリー(ダミアン・ルイス)は思いやりを持って見守る。そんなリチャードに恋心を抱くが、彼には妻がいた・・・

冒頭、カイロでイギリスの男どもがオスマン帝国領土分割について「シリアやレバノンは宗教や民族がややこしいからフランスに任そう」と話している姿が映し出されます。
自分たちの都合で考えている男たちと違って、ガートルード・ベルがアラブの民族自決を優先して国境線を引こうとしたことが描かれていました。
実際に引かれた国境線は、まさに定規で引いたようにまっすぐなところが多く、そも、オスマン帝国のもと、多様な民族や宗教の人々が複雑に絡み合って暮らしていたものを、無理矢理、いくつかの国として独立させたのがよかったのかどうかと、混迷する中東情勢を見て考えてしまいます。

本作は、ガートルード・ベルの実らなかった恋を軸に描いていますが、それでも彼女の功績の大きさを知ることのできる貴重な作品になっていると思います。
もちろん映画ですから、いろいろと脚色されたところがあります。
アラビアのロレンスことT.E.ロレンスと出会ったのは、実際にはシリアの遺跡発掘現場でしたが、映画ではヨルダンの壮大なぺトラ遺跡となっています。
ペルシアの場面では、いくつか気になるところがありました。恋仲になったカドガンと馬に乗って郊外の砂漠に行くのですが、テヘランから馬で行ける範囲に砂漠はあっても、ヤシの木はないだろうとか、馬子がアラブの風俗でペルシアの風俗ではないとか。また、鳥葬の塔で語る場面があるのですが、数層の塔になっていて、本来のゾロアスター教の鳥葬の塔は、最上部が広く平なものなので違和感があります。知らなければ、そんなものかと思ってしまう場面です。
ヨルダンのぺトラは本物ですが、ほかのアラビア半島やペルシアの場面はモロッコで撮影しているので、砂の色が違ったり、建物の形が違ったりするのは仕方ないのですが。

もうずいぶん前にペルシアやアラビアの砂漠を旅した女性の話を読んだことがあるのですが、思えばそれがガートルード・ベルだったようです。ペルシアの詩人ハーフェズの詩を英訳したり、イラクの考古学博物館開設にも力を注いだ女性がいたことをあらためて知りました。(咲)


撮影地:モロッコ、ヨルダン、英国(ウェストワイクーム公園)

2015年/アメリカ・モロッコ/128分/カラー/シネマスコープ/5.1chデジタル
配給:ギャガ・プラス
公式サイト:http://gaga.ne.jp/arabia/
★2017年1月21日(土)より新宿シネマカリテ、丸の内TOEIほか全国順次公開
posted by sakiko at 21:19| Comment(0) | TrackBack(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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