監督・脚本:ハンネス・ホルム
出演:ロルフ・ラスゴード、バハー・パール(バハール・パールス)、フィリップ・バーグ,アイダ・エングヴォル,カタリナ・ラッソン
原作:フレドリック・バックマン訳:坂本あおい(ハヤカワ書房刊)
59歳のオーヴェは、妻を亡くし、郊外の住宅地で妻の思い出が詰まった家でひとり暮らし。ある日、43年間勤めていた鉄道局から突然クビを言い渡される。かつては町内の自治会長も務めていたが、選挙で落選。もともと厳格な性格のオーヴェは、暇に任せて共同住宅地の敷地内の規律が守られているか見回る日々。それも虚しく、首を吊ろうとしたところに、子ども連れの家族が騒々しく隣りに引っ越してくる。夫パトリックの運転する車がオーヴェ宅の郵便受けを壊してしまい、お詫びにと、妻パルヴァーネは故国イランの料理を差し入れる。「美味しかった」とメモをつけ器を返すオーヴェ。少しずつだが、パルヴァーネや二人の娘たちと打ち解けていくオーヴェ。
ある日、倒れたオーヴェのために家に入ったパルヴァーネは、台所の作りが低めなことより、オーヴェの妻ソーニャが車椅子生活だったことを知る・・・
妻のもとに行こうと首を吊るオーヴェの頭に、母を早くに亡くし、育ててくれた父も残念な事故で亡くした過去や、妻ソーニャと出会った頃のことが走馬灯のように駆け巡ります。頑固で偏屈な性格のオーヴェを、パッと咲いた花のような笑顔で包み込むソーニャ。そのソーニャが車椅子生活を余儀なくされるようになった事故。教師として働きたいソーニャのためにオーヴェがしてあげたこと等々、オーヴェの人生が次第に明かされていきます。
共同住宅地に住み始めた頃、規律を一緒に作った性格の似たルネが、今や認知症になり、強制的にケアハウスに入れられようとしているのを助けたりもします。
私にとっては、何より、隣りに越してきた一家の若い身籠った奥さんがイラン人ということに興味津々。オーヴェに差し入れたのは、サフランを使ったイラン料理。さて、どの料理かなと想像を巡らしてしまいました。演じたBahar Parsさんは、1979年イランのシーラーズ生まれ。10歳の時に家族でスウェーデンに移住。28歳の時、女優として本格的デビューした後、舞台と映画で活躍。近年、映画監督としても活躍しているそうです。
バハー・パールと表記されていますが、バハール・パールスが近いと思います。バハールは「春」の意味。役名のパルヴァーネは、映画の中でも自身で語っていますが「蝶々」のこと。時々、ペルシャ語で独りごとを言うのですが、娘たちにもペルシャ語で話しかけています。二人の娘たちも「yek do seh(ペルシャ語で、1,2,3)」と言いながら縄跳びをしていて、スウェーデンに居ても、母親の母国語も使っているのが嬉しいです。
本作を観て、最近だんだん薄れているご近所付き合いの大切さを思いました。素敵な一作です。(咲)
2015 年/スウェーデン/HD/116 分/カラー/シネマスコープ/5.1ch/スウェーデン語・ペルシャ語
配給:アンプラグド
公式サイト:http://hitori-movie.com/
★2016年12月17日(土)新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ 渋谷ほかにて全国順次公開
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