2016年10月15日

ダゲレオタイプの女(原題:La femme de la plaque argentique)

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監督・脚本:黒沢清
撮影:アレクシ・カヴィルシーヌ
音楽:グレゴワール・エッツェル
出演:タハール・ラヒム(ジャン)、コンスタンス・ルソー(マリー)、オリヴィエ・グルメ(ステファン)、マチュー・アマルリック(ヴァンサン)、マリック・ジディ(トマ)

職探しをしていたジャンは、経験はないけれども写真家の助手として働くことになった。訪ねたパリ郊外の古い屋敷には気難しい写真家のステファンと、娘のマリーが住んでいた。ステファンの写真は最古の撮影方法である“ダゲレオタイプ”と呼ばれるものだった。長い露光時間をかけて銀板に直接写し込むもので、ネガはなく世界に一枚しか存在しない。妻ドゥニーズが長くモデルを務めていたが亡くなり、娘のマリーが後をついでいる。撮影の間中は動かないよう体を拘束器具で固定しなければならない。狂気とも見える父の情熱を理解しながらも、マリーは自分の人生を夢見ていた。60分、70分と長くなる拘束に耐えるマリーを見つめながら、ジャンはしだいに惹かれていく。

黒沢清監督が初めて海外で制作しオール外国人キャスト、フランス語の作品。昔の写真撮影は長い間動かないようにしなくてははいけない、と聞きかじってはいたけれど本当にこんなに長いとは!ダゲレオタイプに固執するステファンは、妻と娘を愛するが故に銀板に永遠に残したかったと言いますが、自分の執着でしょう。相手の苦痛も考えずに押し付ける愛情は勘弁してほしいです。
子どもの頃からじっとしているのが苦手な筆者には拷問としか思えず、何かわからないモノより拘束器具のほうが恐怖。自分がモデルになって体感したらどう?動かない静物や景色でも撮ってなさいよ!と映画を観ながら憤慨。ステファン役のオリヴィエ・グルメの名演ということですね。はかなげなコンスタンス・ルソーの青いドレス姿は素敵でした。もう一人の主役ともいうべきなのが、物語の舞台となる古い洋館。ジャンの目線で見るドアや階段、部屋の壁やカーテンの一つ一つに時間が積み重なり、語られない物語が潜んでいるようでした。(白)


『ダゲレオタイプの女』メイン画像 縮小.jpg
(C)FILM-IN-EVOLUTION - LES PRODUCTIONS BALTHAZAR - FRAKAS PRODUCTIONS – LFDLPA Japan Film Partners - ARTE France Cinéma

黒沢清監督が主役に選んだタハール・ラヒムは、アルジェリア移民の両親のもとに生まれたフランスの俳優。『預言者』(ジャック・オディアール監督)で、コルシカマフィアが牛耳る刑務所の中で、人望を集めていく青年を颯爽と演じているのを観て、ぐっと惹かれました。その後、『パリ、ただよう花』(ロウ・イエ監督)、『ある過去の行方』(アスガル・ファルハディ監督)、『消えた声が、その名を呼ぶ』(ファティ・アキン監督)と、私のお気に入りの監督たちの作品に出演。ついに、日本の監督に起用され、来日の運びとなりました。やっと会える!と、飛び上がって喜んだのですが、取材日に私は福岡へ・・・  
お会いする夢は叶いませんでしたが、一つだけ宣伝さんに質問を託しました。真摯な回答をいただきました。

Q: これまで、フランスの監督だけでなく、ロウ・イエ監督、アスガル・ファルハディ監督、ファティ・アキン監督、そして今回は黒沢清監督と、さまざまな国の名だたる監督に起用された理由を、ご自身、どのように考えていますか?また、それぞれの監督の演出と、今回の黒沢清監督の演出方法で、きわだって違いを感じた点はありますか?

タハール・ラヒム:比較はしにくいですが、『預言者』のジャック・オディアール監督は、瞬間的に役者の感情面に突っ込んでくる感じがある一方、黒沢監督は物静かに演出する方だと思いました。彼の演出は特徴的で感情ではなく動きで作ります。まるで一枚一枚の絵のようでした。カットとビジョンの構成の仕方が細かくて正確。特に光の使い方がさすが巨匠だと思いました。
登場人物の感情や動きを考えて演出しているんです。例えば、枯れ葉が光の中でどのように在るから、人がどう動くべきなのか、を考え、そこに感情を表現している。まるで光を操るコンダクターのようでした。
『ダゲレオタイプの女』の演出における一番の発見は、黒沢監督の人間性かもしれません。親切で物腰が柔らかく、とてもつつましい方でした。そして、彼ほど、役者を自由にさせてくれる監督はいないと思います。しかも、守られた空間で自由を与えてくれるのです。言葉よりも監督はどう動くべきかについて、細かな指示をしてくれました。各シーンを組み立てるという大きな考えの中で動かしているようでした。
ロウ・イエ監督の現場もかなり自由でしたが、フィーリングを大切にする監督なので、どちらかというと不安定ななかでの自由でした。それに対して黒沢監督は描きたいものが明確にあるので安心して役に没頭することができたのです。とても居心地の良い現場でしたね。世界にひとつしかない現場だったと思います。しかし、外国の監督と仕事をするのは楽しいですね。どのように笑うのか、泣くのか、未知の発見があります。外国の監督たちから声をかけていただけることはとても光栄なことだと思います。

☆ちなみに、私が一番好きな出演作は、2015年のSKIPシティ国際Dシネマ映画祭で上映された『サンタ・クロース』(フランス、アレクサンドレ・コフレ監督)。サンタさんの格好で屋根から泥棒に入るタハール・ラヒムの素敵なこと! ぜひ公開してほしい一作です。(咲)


2016年/フランス、ベルギー、日本/カラー/シネスコ/131分
配給:ビターズ・エンド
(C)FILM-IN-EVOLUTION - LES PRODUCTIONS BALTHAZAR - FRAKAS PRODUCTIONS - LFDLPA Japan Film Partners - ARTE France Cinema
http://www.bitters.co.jp/dagereo/
★2016年10月15日(土)、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国ロードショー!


posted by shiraishi at 14:28| Comment(0) | TrackBack(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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