2016年10月09日

ある戦争(原題:Krigen)

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監督・脚本:トビアス・リンホルム
撮影:マウヌス・ノアンホフ・ヨンク
出演:ピルウ・アスベック(クラウス)、ツヴァ・ノヴォトニー(マリア)、ソーレン・マリン(マーティン弁護士)

デンマークから派遣された平和維持軍の部隊は、市民を守るためアフガニスタンの紛争地域で巡回を続けている。地雷に接触した兵士が両足を吹き飛ばされて殉死し、緊張の途切れない日々に疲弊してパニックに陥る者も現れる。隊長のクラウスは部下を落ち着かせるために、自分も一緒に巡回に出ることにした。故郷では妻マリアが3人の子どもを一人で育てながら自分を案じているのに、約束の電話ができないまま朝になった。
巡回中にタリバンからの攻撃を受け、部隊は窮地に陥った。敵の居場所が確認できないでいるうち次々と被弾していく。クラウスはここと思った地区への空撃を要請した。砲撃は止み命拾いをしたが、後日クラウスは軍規違反として強制帰国の処分を受ける。爆撃した地区で戦闘員ではない11人の民間人が亡くなったという。
突然の父の帰国に子どもたちは大喜びするが、法廷で有罪になれば懲役4年ほどになると聞き、クラウスとマリアは暗澹とする。

デンマークのトビアス・リンホルム監督、1977年生まれのまだ30代です。これまでに『光のほうへ』(2010年)『偽りなき者』(2012年)の脚本、『シージャック』では脚本・監督。どれも心にぐさっと来る真摯な作品です。
アフガンで部隊を率いる軍人が、猛攻撃にさらされ部下を守るために、空爆要請の決断をせまられます。戦争なら何でもあり、ではなくいろいろと軍規があるようです。民間人を死なせてしまうとこういう法廷に立たされるというのを、他の映画では観た覚えがありません(戦争映画を好んで選ばないせいもありますが)。
愛する妻子のいる優しい父親が、戦場では人間らしくあることができません。戦争は非情で、日常の感覚はなくなります。敵も人間である、という意識が残っていれば戦えないからでしょう。
自衛隊員を平和維持のために外国へ派遣する話も、いったん戦地に赴いたなら同じように命がけになるのではと気がかりです。身を挺して戦地で戦う人を送り出すのも、糾弾して裁くのも遠く離れて土埃ひとつかぶらずにいる側なのが、どうにも胸につかえます。観客に戦争とは、正義とはなんなのか、自分ならどうするのか、突きつけられる作品です。第88回アカデミー外国語映画賞にノミネートされました。(白)


2015年/デンマーク/カラー/ビスタ/115分
配給:トランスフォーマー
(C)2015 NORDISK FILM PRODUCTION A/S
http://www.transformer.co.jp/m/arusensou/
★2016年10月8日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー
posted by shiraishi at 16:48| Comment(0) | TrackBack(0) | デンマーク | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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