2016年07月17日

ソング・オブ・ラホール    原題:Song of Lahore

song of lahore.jpg

監督・製作:シャルミーン・ウベード=チナーイ、アンディ・ショーケン
音楽・出演:サッチャル・ジャズ・アンサンブル、ジャズ・アット・リンカーン・センター・オーケストラwithウィントン・マルサリス

パキスタン・イスラム共和国の古都ラホール。ムガール王朝時代も、印パ分離独立後も、伝統音楽の中心地だった。映画産業の中心地でもあり、楽士たちは映画音楽で生計をたてていた。
1977年、ハック将軍のクーデターで軍事政権が誕生。イスラーム化が進み、音楽は禁じられる。映画産業も衰退し、音楽家はウェイターやリキシャ引きをして家族を養うようになる。
2005年、イギリスで成功したラホール出身の実業家イッザト・マジードが私財を投じて音楽スタジオを作り、サッチャル・ジャズ・アンサンブルを結成する。
実はジャズと伝統音楽は構造が似ている。即興で演奏する部分があるのだ。しかも、国内で古典音楽の聴き手はいない。古典楽器も用いて名曲「テイク・ファイブ」をカバーしたプロモーションビデオを動画サイトに投稿するや、世界中で話題になり、百万以上のアクセスを記録する。
やがて、天才トランペット奏者ウィントン・マルサリスから彼の率いるビッグバンドと共演するべくニューヨークに招待される。彼らとのセッションは、最初は噛み合わないが、本番は見事に成功! 新聞にも大きく取り上げられ、長年やってきて初めて報われたと感無量の楽士たち。勢いをつけラホールで初めての国内コンサートを開く。

パキスタンの伝統楽器の楽団と、ジャズバンドとのコラボが実に楽しい。また、世襲楽士たちの家族の物語に、ほろりとさせられます。
この物語を伝えたいと映画製作に乗り出したのは、人権や女性問題を手がけてきたパキスタンの女性映像作家シャルミーン・ウベード=チナーイ。今年、2度目のアカデミー賞短編ドキュメンタリー賞を受賞しています。アメリカでも撮影することになりアンディ・ショーケン監督に声をかけ、共同監督となりました。

ここで触れておかなければならないのは、インド社会では古くから楽士はカースト外の不可触民であること。ヒンドゥーからイスラーム(特にシーア派)に改宗した家系も多い。それでも楽士というとさげすまれる存在。さらに政府の政策で音楽自体が疎んじられる中、世襲楽士たちに手を差しのべ、伝統音楽に生き残りの道を開いた実業家イッザト・マジード氏。 なかなかできないことと感心します。

あと、この映画の魅力は音楽だけじゃない。
冒頭、伝統的家屋の屋上で楽器を奏でる人。ラホールの古い町並みを見渡しながらの演奏、さぞかし気持ちいいことでしょう!
そして、バードシャーヒー・モスクの素敵なシルエット。ムガル王朝第6代君主アウラングゼーブが1673年に建てたモスク。ムガル王朝時代には、この立派なモスクが音楽の中心だったそうです。時代変われば・・・です。
10数年前に、ラホールの町を女性二人で歩いたことがあります。 カッワーリー(イスラム教神秘主義スーフィズムにおける儀礼音楽)を聴いてみたくて、聖者廟を訪ね歩きました。残念ながら、聴くことはできなかったけれど、私たちの周りに人だかりができるたびに、誰かしらが「お〜い、皆どけ!」とどなって野次馬を整理してくれて、「次はどこに行きたい?」と道案内までしてくれたりしました。
あの古い町には、年季の入った伝統楽器の奏でる音が実によく似合います。人々の活力になってきたはずの音楽の伝統、消えないでほしいものです。(咲)


映画をより楽しく観るためにぜひ!
◆映画『ソング・オブ・ラホール』公開記念
「パキスタンから世界へ!超絶演奏楽団サッチャルの魅力を語る」


映画『ソング・オブ・ラホール』に登場するサッチャル・ジャズ・アンサンブルの秘蔵映像を見ながら、彼らやパキスタン音楽の魅力を語り尽くします。
【出演】
サラーム海上(音楽評論家・DJ・中東料理研究家)
村山和之(中央大学・立教大学兼任講師)
ヨシダダイキチ(シタール奏者)

日時:8月3日(水) OPEN 18:30 / START 19:30
会場:LOFT9 Shibuya
渋谷区円山町1-5 KINOHAUS1F tel.03-5784-1239


2015年/アメリカ/カラー/DCP/82分/ウルドゥー語、英語
配給:サンリス、ユーロスペース
公式サイト:http://senlis.co.jp/song-of-lahore/
★2016年8月13日(土)渋谷ユーロスペースほか全国順次ロードショー
posted by sakiko at 19:38| Comment(0) | TrackBack(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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