監督:ソト・クォーリーカー
脚本:イアン・マスターズ
出演:マー・リネット、ソク・ソトゥン、トゥン・ソーピー他
カンボジアの首都プノンペンに住む女子大生のソポンは、病を患う母と厳格な軍人の父、口うるさい弟との息苦しい生活にうんざりしていた。父が独断で将軍の息子とのお見合いを進めることにに怒ったソポンは父親と喧嘩して家出してしまう。バイクの駐輪場として使われている廃墟のような映画館にもぐりこみ寝起きしていたが、ある日、ソポンは映写室に放置されているボロボロのフィルムを上映してみた。それは、クメール・ルージュがカンボジアを支配する前年、1974年に作られた『長い家路』という作品で、ヒロインを演じているのは、若き日の母だった。美しく輝いていた女優時代の母を知り、クメール王国を舞台にしたおとぎ話に、ソポンは惹き込まれた。しかし、内戦の混乱で映画の最終巻が紛失し、結末は観ることができなかった。ソポンは、病床の母の為に映画を完成させようと決心し、映画館を管理している映写技師ソクと、失われた最終巻をリメイクし始める。
その過程で、過去と現在、犠牲者と彼らを苦しめたクメール・ルージュのことや、両親の出会いを知り、この時代を生きた人々の、数奇な運命が明らかになる。
1975年からカンボジアを呑み込んだ暗黒の4年。知識人、一般大衆も巻き込み、空前の悲劇が生みだされ、カンボジア国民の4分の1の人が虐殺されたという。映画人も粛清の対象になったことが、『シアター・プノンペン』の中でも語られている。
カンボジアでは、1960年に映画製作がはじまり、クメール・ルージュの席巻する1975年までの15年間に約400本もの映画が作られていたのに、難を逃れたのはわずかな本数。
『シアター・プノンペン』は、かろうじて残った恋愛映画を軸にしたヒューマン・ドラマ。
公開を前にソト・クォーリーカー監督にお話をお伺いし、カンボジアでは当時のことは皆、心の奥にしまって話さないと知りました。被害者と加害者が共に暮らしている状況がいかに息苦しいものかと察します。
監督にお会いして、当事者が隠しているカンボジアの歴史を若い人たちに知ってもらいたいという思いを強く感じました。(咲)

ソト・クォーリーカー監督インタビューは、特別記事で!
2014年/カンボジア/105分/クメール語/カラー
配給:パンドラ
公式サイト:http://www.t-phnompenh.com
★2016年7月2日(土)岩波ホールほか全国順次公開