2016年02月21日
牡蠣工場(かきこうば) 英題:Oyster Factory
監督:想田和弘
瀬戸内海にのぞむ岡山県牛窓(うしまど)。日本のエーゲ海と呼ばれる風光明媚な地は、日本でも有数の牡蠣の産地である。養殖された牡蠣の殻を処理する牡蠣工場は、かつて20軒近くあったが、現在では6軒しかない。牡蠣の「むき子」は、代々地元の人々が担ってきたが、過疎化で労働不足に陥っている。中には、中国人労働者を雇い始めた工場もある。
一方、東日本大震災で家業の牡蠣工場が壊滅的打撃を受け、宮城県から移住してきて牛窓で工場を開いた者もいる。
想田監督の観察映画。
宮城県から移住してきて開いた牡蠣工場で、広島で働いている中国人労働者を受け入れる日。工場にちょっとした緊張が走る。
「牡蠣の殻をむく作業は、慣れるまでに時間がかかるけど、あの人たちは早い」と地元の老婦人。
狭い工場で、黙々と殻をむく作業。恐らく牡蠣のにおいもすごいと思う。
地元の名産を支えていくのは大変なことだと実感する。
でも、誰かがやらないと伝統は途絶えてしまう。
淡々と綴られる映像を観ながら、いろいろなことを考えさせられる映画である。だからといって、答えやメッセージは発しない。あくまで観察映画。ちょっと長いかな?(咲)
実は、牡蠣にハマっていて、この数年、毎年7月に千葉県旭市の磯牡蠣を食べに行っている。宿では生牡蠣、蒸し牡蠣、焼き牡蠣などが出る。でもなんと言っても生牡蠣が美味しい。
昔は牡蠣といえばほとんど牡蠣フライで、それは決しておいしいとは思わなかった。しかし、30年くらい前に石垣島に行った時、珊瑚礁に行き岩場にいる牡蠣を獲って、その場で殻を割って食べた。そのあまりのおいしさに驚いた。それから私の生牡蠣巡礼は始まった。旅行先で生牡蠣を食べられる時はほとんど食べている。
そして、その地方それぞれの牡蠣の養殖方法があることを知った。
この映画の舞台、牛窓には行ったことがないが、画家の友人がいつも絵を描きに行っているところで、気になっていた場所。友人はオリーブの木をいつも描いていたが、牡蠣の養殖が盛んなところだとは知らなかった。
そして、ここの牡蠣養殖の大掛りなことに驚いた。クレーンを使って養殖の牡蠣を吊り上げるとはびっくり。それに獲れた牡蠣の殻を外す作業場の作りにも驚いた。壁に向かって1日中、牡蠣を剥き続ける作業。これはかなりつらい作業だと思った。これでは20軒近くあった牡蠣工場が6軒になってしまったのもうなずける。
大量生産の影で人間性が追いやられていると感じた。確かに牡蠣剥きの作業を楽しくやるというのは無理があるかもしれないけど、せめて働く環境をもうちょっと工夫したら、若者も戻ってくるのではと思った。そして、日本の若者が嫌う3Kの仕事を外国人労働者に押し付けるのはどんなものかと思った。これでは、この産業も続いていかないのではないかという気がする。
ちなみに、今まで食べた牡蠣の中で、一番美味しかったと思っているのは、台湾基隆の夜市で食べた生牡蠣。生牡蠣はタレにレモンや酢を使うことが多いけど、ここで食べた生牡蠣は味噌と葱を使ったタレを使っていた。生牡蠣の美味しさも素晴らしかったけど、タレも意外性があって美味しかった。また、いつか食べてみたい。やっぱり牡蠣が好きだ! 牛窓にも行ってみたい。(暁)
2015年/日本,アメリカ/145分/カラー/DCP
配給:東風
公式サイト:http://www.kaki-kouba.com
★2016年2月20日(土)シアター・イメージフォーラムにてロードショーほか全国順次公開
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