2016年02月21日

大地を受け継ぐ

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監督:井上淳一
出演:樽川和也、樽川美津代

2016年5月、16歳から23歳まで11人の学生が福島県須賀川へ向かった。原発から65qにある農家、樽川さんを訪ねるのだ。和也さんとお母さんの美津代さんが出迎える。2011年の3月24日、和也さんの父は農産物出荷停止のFAXを受け取った翌朝、キャベツ畑で自死してしまった。農業を継がせた和也さんに「お前に農業を勧めたのは、間違っていたかもしれない」という言葉を残して。大きなテーブルを囲んだ学生たちに、訥々と語る和也さん。その言葉を食い入るように聞く学生たち。

福島の人たちを記録したドキュメンタリーはこれまでにもたくさん観てきましたが、細切れになったりエッセンスだったりでなく、一人の言葉をこんなに長い時間きかせてもらったのは初めてです。自分も同じようにあの畳の部屋にいたような気がしました。
一人息子の和也さんは途中から農業に転身しました。先祖からの土地を守り、美味しい作物のために土づくりを大切にしていたお父さんの志を継ごうと思ったに違いありません。それが原発事故のために何よりも大切な田畑が汚染され、せっかく成長した作物は出荷できず廃棄処分になります。農家にとって何よりも辛いことです。いろんな思いを持って(あるいは持たないまま)やってきた学生たちの質問や感想は率直です。聞く前と後で必ず何かが違って、忘れていったとしても深いところに何かは残ったはず。(白)

ゆっくりと福島弁で語る樽川さんの姿は、朴訥な人柄があふれ出ていました。実は、最初はゆっくりと話す言葉にちょっといらいらしていました。でも、そのうちに樽川さんの話に引き込まれていきました。
彼が話したのは原発事故からの4年間の出来事。放射能に汚染された土地で農作物を作り続けることへの不安。「全検査をして放射能に汚染されていないと証明されても、福島の米や野菜は今までの値段では売れないし、売れても黒字になることはない。農業だけで生きていくことは難しい現状だけど、それでも自死した父や先祖から受け継いできた土地を捨てるわけにはいかない」と語る。
彼の穏やかな話し方の中から、彼が絶望することなくこの土地を耕していく決意が見えてくる。最後は心揺さぶられる映画でした。(暁)

樽川和也さん.jpg
(C)「大地を受け継ぐ」製作運動体

2015年/日本/カラー/HD/86分
配給:太秦
(C)「大地を受け継ぐ」製作運動体
https://daichiwo.wordpress.com/
★2016年2月20日(土)ポレポレ東中野ほかロードショー
posted by shiraishi at 20:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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