監督:本郷義明
原案:三木 健
企画:はるかなるオンライ山 映画製作委員会 株式会社シネマ沖縄
企画・脚本:本郷義明、末吉真也
音楽:喜久川ひとし
ナレーター:国井雅比古
切り絵:熊谷溢夫
監修:三木 健
製作:末吉真也、糸数 淳
パイナップルを八重山に伝えたのは台湾の人たちだった
沖縄の名産品であるパイナップルを伝えたのは、戦前、台湾から石垣島に入植した人たちだという。日本の植民地だった台湾で、日本政府によるパイン缶詰工場の統合があり、台湾でパイナップルを生産できなくなった人たちは石垣島に新天地を求めた。
彼らは農業技術の遅れていた石垣島に進んだ農業技術を持ち込み、沖縄にパインナップル栽培を定着させ、パイナップルの缶詰を沖縄の産業に発展させた。しかし、そこに至るまでは多くの苦難の歴史があった。言葉が通じなかったり、習慣の違いが原因で二つの文化はぶつかりもしたが、そういう苦境を乗り越え協力しあうようになり大きな夢を実現させていった。
しかし、軌道に乗ったパイン缶詰も、戦争中は贅沢品として生産できなくなったり、戦後はせっかく復活してパイン缶詰工場が盛んになったのに、外国からの安いものが入ってきて、結局続かなくなってしまった。今は生のパイナップルが主流になっている。
歴史に本流された台湾の人たちの2世、3世は日本に帰化し、今は沖縄に根付いている。過去から未来へ、入植者の子孫たちと八重山の人たちとの文化交流活動も描かれる。
沖縄にパイナップルを根付かせた入植者たちの足跡は、知られざる台湾と八重山の交流史を、現代の私たちに伝えてくれる。
長年、台湾と八重山の交流史を調べてきたジャーナリストの三木健さん(八重山台湾親善交流協会顧問)の原案で、株式会社シネマ沖縄と琉球新報社が製作委員会を立ち上げ、『よみがえる琉球芸能 江戸上り』『徐葆光が見た琉球〜琉球と冊封』の本郷監督が台湾ロケも行い製作した。
三世の呉屋寛永さん
オンライとは、台湾の言葉でパイナップルのこと。鳳梨と書くらしい。この字を見て、台湾土産の定番であるパイナップルケーキのことを思い出した。「鳳梨酥」と書かれていた。でもオンライと読むとは知らなかった。
沖縄出身の友人から、子供の頃、パイナップル工場に台湾から出稼ぎに来ていた女工さんがいたという話を聞いたことはあったけど、八重山や沖縄のパイナップルが台湾から移住した人たちから伝わったとは全然知らなかった。
水牛も、その台湾から来た人たちが連れてきたとこの作品の中で語られる。当時は、この水牛の働きで、そのうち台湾の人たちに島が占領されるのではと思われ、それも台湾人排斥の流れに繋がったという。
実は37年前、石垣島に行ったことがある。その時、パイナップル畑が一面に広がっている丘を歩いたことがあり、初めてパイナップルが植えてある姿を見て感動した記憶がある。でも、台湾の人たちの苦難の歴史があったとは、全然知らなかった。知られざる八重山のパイナップル生産の歴史を知り、また八重山に行ってみたいと思った。その37年前に沖縄に行った時は、有明埠頭(東京)から船で行ったのだけど、那覇、石垣経由で台湾に行く船だった。今思うと台湾というのは基隆(キールン)だったのかもしれない。
その時は知らなかったけど、このドキュメンタリーを観て、那覇、石垣島間より、石垣、台湾間のほうがずっと近いということを知った。今は台湾から石垣島に来る観光客がいっぱいいるということも出てきたが、これを観て、今も有明から台湾に行く船があるのなら、今度は石垣島から台湾に行ってみたいと思った。(暁)
2015年/日本/85分
★2015年12月5日〜12月27日ポレポレ東中野で公開中