監督:アブデラマン・シサコ
出演:イブラヒム・アメド・アカ・ピノ、アベル・ジャフリ、トゥルゥ・キキ
マリの古都ティンブクトゥ近郊のニジェール川沿いで暮らす少女トヤ。両親と孤児で牛飼いの孤児イサンとのつつましくも幸せな暮らしには、いつも父の奏でる音楽があった。町はいつしかイスラーム過激派に占拠され、音楽に煙草やサッカー、そして笑うことさえも禁じられてしまう。女性には肌を隠すよう強要し、魚を売る女性に手袋をしろとまで命じる。手袋をするのを拒否して鞭打ちの刑に処された女性が、声を絞り出すように歌いだす。やがてトヤの家族にも、過激派の不気味な影が忍び寄ってくる・・・
2015年フランスのセザール賞7部門を受賞し、同年のアカデミー賞外国語映画賞にもノミネート。6月のフランス映画祭では、原題のカタカナ表記『ティンブクトゥ』で上映された。
ティンブクトゥは、世界遺産にも登録されている沙漠の民トゥアレグ族の古都。かつて、金や塩の交易で賑わい、ベルベル人やアラブのムスリムなどが往来し、学問の研究も盛んだった時代がある。
土を固めて作ったモスクは、木の杭がいっぱい飛び出ていて、独特の造形美。
その土の美しいモスクに、土足で武器を持って乗り込んできた過激派(そも、土足でモスクは敬虔なムスリムにはあるまじきこと!)に向かって長老が諭す。「私には私の、あなたにはあなたのジハード(聖戦)がある」
まさにこの言葉が問題の真髄を語っている。本来、イスラームの信仰は神と個人の直接の繋がりで、他人がとやかく言うものではないはず。クルアーンがいかようにも解釈できるのを逆手にとって、過激派が善良な民の幸せをつぶしている。そして、貴重な文化遺産までをも破壊している。今、各地に広がる愚行。それを愚行と気付かせる手立てはないのだろうか・・・
ボールを使わないエアサッカーを楽しむ子供たちの姿に、どんなに禁じても屈しない心を感じて頼もしく思った。小さな反抗が、大きな動きになって、蛮行を覆す力になることを願うばかりだ。(咲)
「イスラーム映画祭2015」オープニング上映作品
12月12日(土)13:00〜
上映後、トークセッション「映画から読み解く、イスラム過激派と西アフリカ・サヘル地域のいま」【ゲスト】ンボテ★飯村
配給:レスぺ/配給協力:太秦
2014年/フランス=モーリタニア/フランス語・アラビア語・バンバラ語・英語・ソンガイ語/カラー/97分/DCP
公式サイト:http://kinjirareta-utagoe.com
★2015年12月26日(土)よりユーロスペースにて公開