監督:デイヴィス・グッゲンハイム
出演:マララ・ユスフザイ、ジアウディン・ユスフザイ
2014年、ノーベル平和賞を17歳という最年少で受賞したパキスタンの少女マララ・ユスフザイ。
本作は、『不都合な真実』のデイヴィス・グッゲンハイム監督が、彼女とその家族の素の姿を受賞以前から追ってきたドキュメンタリー。
パキスタン北西部スワート渓谷。学校を経営する詩人の父と文字の読めない母の長女として生まれたマララ。2012年10月、下校途中の通学バスが覆面の男に襲撃され、マララは頭部に銃弾を受ける。ブログを通じてイスラーム武装勢力タリバンによるテロや女子校の破壊行為を批判し、女性への教育の必要性を訴えていたことから狙われたのだ。奇跡的に命をとりとめたマララは、緊急手術を受けるため家族と共にイギリス・バーミンガムにわたる。国に帰れば身の危険があることから、今もイギリスで暮らす一家。マララは自分自身も学びながら、世界各地の教育を受けられない少女たちのために活動を続けている・・・
冒頭、かつてアフガニスタンがイギリスに侵攻された時に果敢に戦った少女マラライの物語がアニメで語られる。マララさんのお父さんはこの少女にちなんだ名を第一子に付けたのだ。父親は家計図にマララの名前を付け加える。300年遡っても、女性の名のない家計図に。パキスタンとアフガニスタンにまたがって暮らすパシュトゥーン族。元々女性隔離の因習が根強い民族だ。お父さんは苦労して大学を卒業し、女性たちにも教育をと、男女共学の学校を設立する。マララもその学校で学ぶ。2007年、タリバンがスワートで権威を振るうようになる。教育は女性に疑問を抱かせ自立を促すのでタリバンにとって脅威だと400以上の学校を破壊する。学校設立者の父もまたタリバンの標的だ。身の危険を感じながらも、誰かが声をあげなければというお父さんにも感銘を受けた。
そんな父親のもとに育ったマララさん。はっきりとした口調で英語でスピーチする堂々とした姿に、強い意志を感じる。でも、家で弟たちをからかってくったくなく笑うマララさんは、クリケットの選手やブラピに憧れる普通の少女。ほっとさせられる。
マララさんが過激派に襲撃されて重体だというニュースが世界を駆け巡った時、パキスタンのショエーブ・マンスール監督の長編第二作 『BOL 〜声をあげる〜』の紹介をちょうど書いていて、その襲撃事件のことを「まさにマンスール監督が憂う現状そのものだ」と結んでいる。
(パキスタン社会の現状の参考に、ショエーブ・マンスール監督『BOL 〜声をあげる〜』報告をお読みいただければ幸いです。http://www.cinemajournal.net/special/2015/BOL/index.html)
それにしても、タリバンに襲撃された少女がその後ノーベル平和賞を受賞するに至る活躍をするとは、その時には思いもよらなかった。本作を観て、マララさんの頭蓋骨には大きな金属片が入れられていることを知った。その身体で世界を駆け巡って活躍するマララさんなのだ。
現在、イギリスの瀟洒な一軒家で暮らすマララさん一家。
お母さん「ここは好きだけど、故郷じゃない」
「故郷と同じなのは月だけ」とつぶやくマララさん。
一家が故郷スワートに帰れる日はいつ来るのだろう・・・(咲)
2015年/アメリカ/英語(一部パシュトー語)/88分/ドキュメンタリー映画
配給:20世紀フォックス映画
公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/malala/
★2015年12月11日(金)より TOHOシネマズ みゆき座ほか全国ロードショー