監督:モフセン・マフマルバフ
脚本:モフセン・マフマルバフ、マルズィエ・メシュキニ
出演:ミシャ・ゴミアシュウィリ、ダチ・オルウェラシュウィリ
とある国の大統領。命令一つで国の灯を消せることを孫に自慢するが、孫はそんな力よりもアイスが欲しいと駄々をこねる。命令しても灯が再びつかず、大統領は革命が起こり失脚したことを知る。孫を連れ、平民のボロ服を着て逃げるうち、国民が自分の圧政に苦しんできたことを知る・・・
現在、ロンドンに居をおき亡命生活を送るイランの巨匠マフマルバフ監督が、ジョージア(旧グルジア)で撮った本作は、マフマルバフらしいダイナミックな架空の世界。イラクのサダム・フセイン失脚や、アラブの春の後の混乱、アフガニスタンやシリアなど、混迷の世界情勢に思いが至ります。
人々は本作の孫のように、甘いアイスを食べられる幸せを求めているだけなのに、なぜ争いが絶えないのでしょう。悲しいし、虚しい。
公開を前に来日したマフマルバフ監督にお話を伺う機会をいただきました。インタビューの詳細は、Web版シネマジャーナル特別記事でお届けしていますが、下記の言葉が印象に残りました。
「暴力を起こすのは、普通の国民。生まれた時には、皆、純粋な人間だった。大きくなるにつれ、自分たちの中には、純粋さと共に独裁者も存在するようになる。権力を手にすれば、独裁者になるかもしれない。映画を観て、自分の中に存在している独裁者の部分を見つめ直して悪いところを変えていこうと思っていただければと思う」
世界の権力者や暴力を好む人たちに観て貰いたい一作です・・・と、2014年東京フィルメックスの報告記事に書いたのですが、この言葉を聞いて、私自身も独裁者だったとドキッとしました。もっと周りの人たちを気遣わなくては! (咲)
2014年、東京フィルメックスで『プレジデント』のタイトルで上映され観客賞を受賞した折に寄せた監督メッセージ:
『プレジデント』の平和のメッセージに与えられた観客賞は、私にとっても非常に大きな意味があります。人間はお互いに殺し合うために生まれたのではない。地球は生が存在するたった一つの星。お互いを愛するために生まれたのだと思います。しかし今、世界には暴力が溢れています。エボラと闘う為5千人の手助けが必要という国連の声に応える人はとても少なかったのに、ISIS(イスラーム国)の暴力的な作戦の為に、一万五千人が集まりました。世界には暴力の為に命さえ差し出す人が多いことを示しています。これには大きな理由があると思います。平和を大切にする文化の存在はとても弱いということです。芸術、特に映画は暴力的な世界に平和のメッセ―ジを伝える大きな力を持っていると思います。モフセン・マフマルバフ
*監督の願いも虚しく、今や、さらに混迷の世界情勢。いつ、皆が平穏に暮らせる日がくるのでしょう・・・
http://www.cinemajournal.net/special/2015/president/index.html
2014年/ジョージア・フランス・イギリス・=ドイツ/ジョージア語/カラー/ビスタ/デジタル/119分
配給:シンカ 提供:シンカ 朝日新聞社
後援:ジョージア大使館
公式サイト:http://dokusaisha.jp
★2015年12月12日(土)新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町 他全国公開!!