2015年12月03日
放浪の画家ピロスマニ デジタルリマスター版 原題:Pirosmani
監督:ギオルギ・シェンゲラヤ
脚本:ギオルギ・シェンゲラヤ、エルロム・アフヴレディアニ
出演:アヴタンディル・ヴァラジ、ダヴィト・アバシ、ギヴィ・アレクサンドリア
一杯の葡萄酒と乾し草のベッド グルジアは私のキャンパス
古い歴史、豊かな山河 ―― 美しい映像で語る孤高の画家への追憶
グルジアを代表する画家ニコ・ピロスマニ(1862年-1918年)。
ロシア帝政下のグルジアのチフリス(現在の首都トビリシ)。幼い頃に両親を亡くしたピロスマニ。長年世話になっていた家の娘に恋文を送ったことから騒ぎとなり、その家族のもとを離れ、鉄道員として全国を旅した後、友人ディミトリと乳製品の店を開く。やがて、故郷の姉夫婦の取り持つ縁で結婚式を挙げている最中に、彼の金が目当てだとわかり式を抜け出し、姉とは仲たがい。ディミトリとも関係が悪化し、ピロスマニは店の商品を貧しい人々に分け与えて店を閉める。その後は、画材を抱えて酒場を回り、酒代の代わりに店の看板や壁に飾る絵を描く放浪の日々。ある日、フランスからきた女優マルガリータに一目惚れするが、報われない愛に、ピロスマニは一層孤独に陥る。やがて、彼の絵が中央の画壇に注目されるようになるが、それも長くは続かない・・・
乳製品の店が繁盛していても、乾し草の上で寝転がっているほうが好きなピロスマニ。
パブロ・ピカソに「私の絵はグルジアには必要ない。なぜならピロスマニがいるからだ」と言わしめたピロスマニの絵は、なんともユニーク。上手なのか下手なのか、どことなくユーモアの漂う牛の絵が微笑ましいです。また、最後の作品となった『カヘティの叙事詩』からは、当時のグルジアの村の様子が目に見えるようです。この絵を画くことになった経緯が映画で描かれていますが、人の優しさを知ることのできるエピソードです。
ピロスマニは、貧しい絵描きと女優の哀しい恋を歌った「百万本のバラ」のモデルでもあるそうです。孤独のまま病に倒れ最期を迎えたピロスマニ。自分の人生が歌や映画になるなんて夢にも思ってみなかったことでしょう。
本作はソ連時代の1969年に製作され、日本では1978年に『ピロスマニ』のタイトルでロシア語吹き替え版が劇場公開されています。今回は、デジタルリマスター版がオリジナルのグルジア語で37年ぶりに劇場公開となりました。
お薦めの1作、紹介がすっかり遅くなりました。(咲)
1969年/グルジア(現ジョージア)/グルジア語版/カラー・スタンダード/87分
配給:パイオニア映画シネマデスク
岩波ホールの作品サイト:
http://www.iwanami-hall.com/contents/now/about.html#info3
★2015年11月21日より岩波ホール他全国順次公開
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック