監督:ショナリ・ボース
主演:カルキ・ケクラン(カルキ・コーチリン)、レーヴァティ、サヤーニー・グプター
19歳のライラは作家になる夢を持つ大学生。生まれつきの障がいがあって電動車椅子生活だけど、家族や友達のサポートを受けて青春を謳歌している。大学の同級生たちのインディーズバンドにライラが提供した詩で、バンドはコンテストで優勝。でも、作詞者が障がい者だから優勝を決めたと司会者が発言し、落ち込んでしまう。優しく慰めてくれたバンドボーカルのニマに恋心を抱いたライラは告白するが、恋愛感情はないと軽くあしらわれてしまう。
落ち込んだライラを励まそうと、母親はニューヨークの大学への留学をさっさと決めて、一緒に渡米する。大学ではクラスメートのサポートも受け、クラブで初めてお酒も飲んだり、母親に内緒でiPadを買ったり、新しいことに挑戦していく。そんな中、盲目の女性活動家のハヌムと知り合い、いつしか恋に落ちる。一方で、クラスメートの男性ジャレットの部屋で勉強中に、トイレで手助けして貰ったのを機に初体験もしてしまう・・・
冒頭、肝っ玉母さん風の女性がバンを運転していて、隣にはターバン姿のシク教徒の男性。後ろの男の子が「お父さん」と声をかけるけれど、男の子は短髪。シク教徒なら髪を切らないはず。もう、頭の中にいっぱい????が渦を巻き続けました。
この疑問を解消してくれたのが、松岡環さんの解説。(本作の公式サイトほか、アジア映画巡礼でご覧ください) そういえば、お母さんは、ヒンドゥー教徒の既婚女性の証であるマンガルスートラというネックレスをしていました。(『めぐり逢わせのお弁当』で学んだことでした!)
また、食事の時に、「今日もまた茄子?」というお父さんに、息子が「パンジャーブの彼女(名前は失念しました)と結婚していれば、バターチキンが食べられたのにね」とからかっていました。宗教も故郷も違うお母さんとお父さんは色々なことを乗り越えて結婚したらしいことがわかる場面でした。それにしても、お父さんは、息子にシク教を強制していないのですね。
と、チャーミングなヒロインとは別のところに、まずは目がいってしまったのですが、この映画の魅力は、もちろん、障がいを持ちながらキラキラと生きるヒロインのライラ。演じたカルキ・ケクランさんは、インドで生まれ育ったフランス人。(以前に表記されていたコーチリンは、英語風の読み方で、ケクランはフランス語風の本来の読み方に近い表記だそうです。) 動作といい、喋り方といい、ほんとに障がい者にみえて、すごい演技力とびっくりでした。2013年のアジアフォーカス福岡国際映画祭で上映された『シャンハイ』に出演されているのですが、あの若い女性が???と、印象が全然違います。
NYでライラが恋する女性ハヌムを演じたサヤーニー・グプターさんも、ほんとに盲目の女性に見えて驚かされました。
そして、障がいを持つ娘を見守り、一家を切り盛りする気丈な母親を演じたレーヴァティさんからも、目が離せません。
3人の女性たちが生き生きとしている一方で、なんだか男性が情けなくさえ見えてしまうのですが、それは監督が女性だからこそ、女性をちゃんと一人一人描いているのだと感じます。同性愛というテーマや、セックスシーンというインドではなかなか描かないことにも挑戦しつつ、心をほっこりさせてくれる映画に仕上げたショナリ・ボース監督。今後も楽しみです。(咲)
配給:彩プロ
2014年/インド/英語、ヒンディー語/カラー/ヴィスタ/5.1ch/100分
公式サイト:http://www.margarita.ayapro.ne.jp
★2015年10月24日より、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開