監督・撮影:ニック・リード
製作兼共同監督:マーク・フランチェッティ
製作総指揮:サイモン・チン(『マン・オン・ワイヤー』『シュガーマン 奇跡に愛された男』)、マキシム・ポズドローフキン
出演:マリーヤ・アレクサンドロワ(プリンシパル・ダンサー)、アナスタシア・メーシコワ(ファースト・ソリスト)、マリーヤ・アラシュ(プリンシパル・ダンサー)、セルゲイ・フィーリン(ボリショイ劇場 バレエ芸術監督)、ウラジーミル・ウーリン(ボリショイ劇場 総裁)
2013年1月17日、ボリショイ・バレエ団の芸術監督セルゲイ・フィーリンが帰宅途中、覆面の男に襲われ、顔に硫酸を浴びせられた。美形でスターダンサーとして有名だったフィーリンの顔は焼けただれ、失明の危機に瀕した。やがて容疑者として身柄を拘束されたのは、バレエ団のソリストであるパーヴェル・ドミトリチェンコと実行犯の運転手。パーヴェルの恋人ダンサーがフィーリンから主役を貰えなかったことを恨んでのこととされた。バレエ団のメンバーに取材を続けるうち、襲撃されたフィーリンを支持する人たちがいる一方で、独断的なキャスティングをするフィーリンに反発する者も多く、ドミトリチェンコが労働組合のリーダーとして皆に慕われていることもわかってくる。
バレエ団内の勢力争い、横領、賄賂などのスキャンダルまでもが暴かれていく中で、ロシア政府は新しい総裁としてモスクワ音楽劇場バレエ団の総裁だったウラジーミル・ウーリンを送りこむ。そこへ片目を失明したフィーリンが復活する。フィーリンはかつてモスクワ音楽劇場でウーリンのもと芸術監督を務めていたが、何かと反目していた因縁の仲だった・・・
ロシアが世界に誇るボリショイ・バレエ団の華麗な表舞台の裏に潜む、どろどろとした世界を暴き出したドキュメンタリー。
気になったのは、タイトルに付けられた「バビロン」という文言。バビロンといえば、メソポタミアの実在の古代都市。ユダヤ人を強制移住させた「バビロン捕囚」や、バベルの塔を思い起こします。ウィキペディアには、「新約聖書のヨハネの黙示録の故事から、ヨーロッパなどのキリスト教文化圏においては、退廃した都市の象徴(大淫婦バビロン)、さらには、富と悪徳で栄える資本主義の象徴、として扱われることが多い」とありました。う〜ん、このタイトルを付けた監督たちの思いは?
この映画が描き出した権力を巡る争いや嫉妬は、どこの世界にもあることだけど、バレエという世界、主役や撮影監督となれば目立ち方が違います。しかも、ボリショイ・バレエ団ともなれば、誰が主役になってもおかしくない実力者揃い。本作は、裏舞台での熾烈な争いを暴きながらも、あくまで華麗で、人々を魅了するボリショイ・バレエ団の真髄を見せようとしたのではないかとも思います。
実際、「白鳥の湖」「ラ・バヤデール」「スパルタクス」「ロスト・イルージョン:失われた幻影」「イワン雷帝」「アパルトマン」などのバレエの華麗な舞台もたっぷり楽しめます。(咲)
2015年/イギリス/ロシア語・英語/87分/シネスコ
配給:東北新社 / Presented by クラシカ・ジャパン
公式サイト:http://bolshoi-babylon.jp/
★2015年9月19日(土)Bunkamura ル・シネマほか全国順次公開