2015年09月12日

ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女   原題:A Girl Walks Home Alone at Night

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監督:アナ・リリ・アミリプール
出演:シェイラ・ヴァンド、アラシュ・マランディ、マーシャル・マネシュ、モジャン・マーノ、マースカ(猫)

人気のない夜のバッド・シティ。黒いチャードルを纏った美少女がスケートボードに乗って現れる。町にはびこる悪人を見つけては、そのあとをつけていく。少女の正体は、人間の血を吸って生きるヴァンパイア。
バッド・シティに住む青年アラシュ。父親の借金のカタに、薬の売人でポン引きのサイードに、バイトで溜めたお金でやっと買った愛車を奪われてしまう。
サイードは盗んだピカピカの車で、チャードルの美少女をナンパし家に連れ込むことに成功する。彼女がヴァンパイアだとも知らずに・・・
車を取り返そうとサイードの家に向かったアラシュは、美しい少女とすれ違う。家に入り、サイードの変わり果てた姿に出くわすアラシュ。車のキーを取り戻し、麻薬の入ったアタッシュケースを奪って、これで貧しい暮らしから抜け出そうと決意する。
ハローウィンの夜、ドラキュラに扮したアラシュはチャードルの美少女と出会い、恋に落ちる・・・

アナ・リリ・アミリプール監督は、イラン人の両親のもとイギリスで生まれ、8歳の時、アメリカに移住。その後、イランにも住み、現在はアメリカ在住。
イラン映画を作りたかったという監督。もちろんイランでは撮影できないので、カリフォルニア州の誰もいなくなった石油の町をイランの「shahare badi(Bad City)」という町に仕立てて撮影。実は、イラン革命後、アメリカに移住したイラン人の多く(百万人以上!)がカリフォルニア州にいて、ロサンジェルスはイランジェルスと呼ばれるほど。ピスタチオやレーズンが名産なのでもわかる通り、気候が似ていて居心地がいいのだと思う。ちょっと乾いた感じのBad City。夜のシーンばかりだし、イランにある町と言われてもあまり違和感がない。といっても、手書きのペルシャ語の町の標識が、いかにも偽物っぽいのですが。ちなみに、ペルシャ語でも「悪い」はbad。
本作は、全編ペルシャ語ですが、これがまたすごくわかりやすいペルシャ語で、勉強中の学生さんにお奨めしたい。背後にはペルシャ語の曲も流れてきて、イラン贔屓にはどこか懐かしいものばかり。イランを知らない人には、異国情緒を楽しんでいただければと思う。そして、本作、吸血鬼の登場するホラー映画というより、boy meets girl の物語。ホラーはちょっと・・・という方も、怖がらずにどうぞ!
猫が、ちゃんとマースカとキャストの中に入っているように、重要な役どころ。猫好きにもお奨め。

同じ9月19日公開の『ハッピーボイス・キラー』のマルジャン・サトラピ監督も国外に住むイラン女性。彼女は自身のグラッフィックノベルを映画化して『ペルセポリス』を作っているが、本作のアナ・リリ・アミリプール監督は、映画を作った後に、映画をもとにグラッフィックノベルを出している。アナ・リリ・アミリプールも、マルジャン・サトラピ同様、多才なイラン女性。映画の資金は、ポールダンサーとして稼いだお金をもとに増やしたのだとか。今後の活躍が楽しみだ。(咲)


2014年/アメリカ/ペルシャ語/101分/モノクロ
配給:ギャガ・プラス
公式サイト:http://vampire.gaga.ne.jp/
★2015年9月19日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー
posted by sakiko at 14:54| Comment(0) | TrackBack(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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