監督:アリーチェ・ロルヴァケル
出演:マリア・アレクサンドラ・ルング、アルバ・ロルヴァケル、サム・ルーウィック、ザビーネ・ティモテオ、モニカ・ベルッチ
イタリア中部・トスカーナ州の人里離れた自然に囲まれた地に住むジェルソミーナは、養蜂を営む一家の4姉妹の長女。ちょっと頑固なドイツ人の父ヴォルフガングは、息子がいない分、長女のジェルソミーナに養蜂の仕事を教え込み頼りにしている。
ある晴れた日、家族そろって湖水浴に出かけた先で、「ふしぎの国」というテレビ番組の収録の場に出会う。司会をしているのは、きらきら輝く銀色のカツラに白いドレスを着た妖精のようなミリーという女性。ジェルソミーナは彼女の魅力に一気に惹かれてしまう。番組では、この地に根づくエトルリア文化の伝統に則した生活をする家族を募集しコンテストをするという。ジェルソミーナは秘かに応募する。
ある日、父親が14歳のドイツ人の少年マルティンを連れてくる。盗みと放火で捕まった彼を、「少年更生プラン」で預かることになったのだ。言葉を発せず、鳥のような口笛を吹く少年にジェルソミーナは次第に惹かれていく。
そんなある日、父が母アンジェリカと二人で外出し、留守の間、子どもたちだけで蜂蜜作りをしていた時、事故は起こる・・・
頑固者の父親が、有り金はたいて駱駝を買って帰ってきます。ジェルソミーナが小さい時に欲しいと言っていた駱駝。でも、夢見ていた幼い頃は脱していて、しかも両親不在の間に事故が起こったこともあって駱駝どころじゃないのです。駱駝の二つのコブが揺れる様がなんとも悲しくみえます。
映画の前半は、養蜂一家の日常生活を細かく見せてくれて、すごく現実的。後半、テレビ番組「ふしぎの国」のコンテストに家族ぐるみで出場することになって、嫌がる父を説得して、皆で伝統的な衣装に身を包んで収録現場の島の洞窟に行きます。そこは、古代エトルリアのお墓だったところ。モニカ・ベルッチ演じる司会者ミリーの妖艶な魅力もあって、幻想的な雰囲気。
一つの映画で、ドキュメンタリーのような場面と、ファンタジーのような場面が共存して、とても不思議な映画。
アリーチェ・ロルヴァケル監督は、1982年生まれで、まだ30代前半の女性。本作が長編2作目。実際にドイツとイタリアのハーフで実家は養蜂を営むが、物語はあくまでフィクション。なお、母親役のアルバ・ロルヴァケルは、監督の実の姉。また、ジェルソミーナを演じたマリア・アレクサンドラ・ルングは映画初出演。少年の口笛にあわせて蜜蜂を顔にはわせる姿が絶品でした。(咲)
☆第67回カンヌ国際映画祭グランプリ
2014年/イタリア・スイス・ドイツ/1時間51分/カラー/1:1.85/5.1chデジタル/DCP
配給:ハーク 配給協力:アークエンタテインメント
公式HP: http://natsu-yuku.jp/
★2015年8月22日(土)より岩波ホール他 全国ロードショー