監督・脚本:クリスティアン・ペッツォルト
原作:ユベール・モンティエ
音楽:シュテファン・ビル
出演:ニーナ・ホス(ネリー・レンツ)、ロナルト・ツェアフェルト(ジョニー・レンツ)、ニーナ・クンツェンドルフ(レネ・ヴィンター)
1945年べルリン。戦争が終ってアウシュビッツ収容所から生還したネリー。顔に大きな傷を負い、できるだけ元の顔にと医師に頼んで手術を受けた。生き別れてしまった夫ジョニーを探し、元の生活に戻りたい思いからだった。ピアニストだったジョニーは酒場の雑役婦として働いていた。駆け寄ったネリーが自分の妻だと気づかず、ネリーは気落ちし説明しそびれてしまう。妻はアウシュビッツで死んだものと決め付けているジョニーは、ネリーに妻の替え玉になってくれれば、手に入る遺産を山分けすると持ちかける。
『東ベルリンから来た女』のキャスト、スタッフが再び集結して送り出した作品。収容所に入れられながら生き延びた人と、送り出してしまった人々の戦後。日本と同じく敗戦を迎えたドイツの一断面です。非人間的な収容所の生活で、ネリーは顔だけでなく自分自身をなくしてしまい、夫に再会することでバラバラになった自分を取り戻そうとします。
しかし、やっと会えた夫は自分を認識しないばかりか、本人になりすまして騙しの片棒をかつげ、と。なんということ!いくら面変わりしても、声や体つきや癖でわかりそうなものです。それとも妻の財産以外に興味がない夫だったの?
ネリーが本物の妻らしくなるたびにジョニーは動揺しますが、逆にヨロヨロとしていたネリーはしっかりと胸を張って歩くようになります。原題になった「Phoenix」は自ら火に飛び込んで焼かれ、灰の中からもう一度生れる「火の鳥、不死鳥」のことです。痛切な恋愛劇であり、ネリーの再生の物語でもありました。(白)
2014年/ドイツ/カラー/シネスコ/98分
配給:アルバトロス・フィルム
(C)SCHRAMM FILM / BR / WDR / ARTE 2014
http://www.anohi-movie.com/
★2015年8月15日(土)Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー