監督・撮影・編集:土井敏邦
太平洋戦争下、「慰安婦」にさせられた朝鮮半島出身女性たちの消せない記憶”
元「慰安婦」の女性たちがよりそって暮らす韓国の「ナヌム(分かち合い)の家」を、土井監督は1994年から2年間に渡って取材した。取材したハルモニたちはすでに亡くなっているが、撮影から20年近くたった今、日本軍「慰安婦」問題が深刻な国際問題になっている状況に、「この証言映像が歴史的な資料となる。今きちんと記録映画としてまとめて残さなければ」という思いで、3時間半を超えるドキュメンタリー作品を作った。
第1部「分かち合いの家」で6人のハルモニ(おばあちゃん)たちの日常と証言をありのままに伝える(124分)。慰安婦にさせられた経緯、慰安婦時代の話、苦労した戦後の生活。慰安婦だったと申し出るかどうか、さんざん迷ったこと。ほんとは話したくない半生を彼女たちは声を振り絞って語る。深く刻まれた傷を抱え、戦後、壮絶な半生を送ったハルモニたちのありのままの声と日常生活を丹念に記録。
第2部では6人のうちで一番年下の姜徳景(カン・ドクキョン)の心情あふれる絵と、肺がんに倒れ、亡くなるまでの2年間を記録している(91分)。「女子挺身隊」として日本に渡るが、脱走したことで「慰安婦」にされたという。波乱の半生の体験と心情を姜徳景は絵で表現した。
姜徳景「奪われた純潔」
「強制連行」があったかなかったか、「軍の管轄か民間か」というような話ばかりが議論され、当事者たちの身に起こったこと、‶思い〞や‶痛み〞が何も語られていないことに疑問をもち、その手助けとなる映像を提供している。自分の妻や娘が慰安婦にされたらどう考えるか。売春婦として金もうけのために行ったなどという人たちは、自分の家族がそういう目にあったらと考えてみてほしい。「慰安婦」になった経緯や、正確な人数は確定されなくても、大勢のいろいろな国の女性が自分の意思に反して拘束され、「慰安婦」生活を強要されていたことは事実である。
「慰安婦」の存在は日本軍ばかりではない。韓国軍や米軍がベトナム戦争当時ベトナムの女性を凌辱したり、ボスニアやルワンダでも女性が蹂躙された。そして、今は「イスラム国」など、イスラム圏でも女性が性奴隷にされている。戦争がそういう状態を引き起こす。残念ながらそれは今も変わらない。戦争が起こらないようにすることが歴史の教訓である(暁)。
土井監督 著の書籍も発刊されました。
『“記憶”と生きる』 元「慰安婦」姜徳景の生涯
232ページ 本体1,800円+税
2015年4月20日 発売(大月書店)
2015年/日本/カラー//215分
配給:きろくびと
http://www.doi-toshikuni.net/j/kioku/
★2015年7月4日(土)アップリンクほか全国順次公開