監督:中みね子
出演: 八千草 薫、仲代達矢、風間トオル、竹下景子、六平直政、嶋田久作、本田博太郎、 岸部一徳
海外勤務から帰ってきた進(風間トオル)は、一人暮らしの母・市子(八千草 薫)を訪ねるが、隣家の主人から軽井沢に行ったと聞かされる。部屋には、パリ帰りの著名な画家・宮謙一郎(仲代達矢)が故郷の軽井沢で個展を開くという新聞記事と、彼の画集が残されていた。軽井沢へ母を追って行く進。
一方、秋深まる軽井沢に赴いた市子は、個展の会場で、子守する少女の後ろ姿に銀杏の黄色い葉が落ちている画「原風景」を探すが、展示されていないと聞かされがっかりする。近くの喫茶店〈珈琲歌劇〉で一休みした市子は、店のマスター(岸部一徳)と話すうちに、マスターも宮画伯のファンで個人的に懇意にしていることわかり、会いにいくことになる。市子は戦争中だった少女の頃、軽井沢に疎開していて、そこで知り合い、淡い想いを抱いたのが宮だった・・・
息子は母が自分の父と結婚する前にどんな青春時代をおくっていたのか、なかなか知ることはないでしょう。誰しも心に秘めた思い出があるもの。それを息子にわかつことができれば、それもまた素敵だなと思います。
「ゆずり葉」は、まだ葉が青いうちに地に落ち、新芽に命を託し、自らは落ちてから枯れていくことからその名がついたと言われています。監督は、知性がくずれないうちに、自身の最期を考えておきたいという思いをタイトルに込めたそうです。
人生の最後のステージを迎え、人生を振り返り、思い残すことのないよう、いさぎよく旅立ちたい・・・ そんな思いでしょうか。監督の中みね子さんは、岡本喜八監督夫人。ご主人に先立たれて10年、76歳にしてオリジナル脚本で本作を初監督されました。いくつになっても夢に挑戦する勇気をいただいた思いがします。そして、しっとりとした着物姿で晩秋の軽井沢に佇む八千草薫さん。こんな風に年を重ねたいと憧れます。(咲)
35年くらい前、白馬村で暮らそうと行った時、冬のシーズン前で森の中の木はほとんど葉を落としていた。そんな中、緑の葉をつけている木があった。それが「ユズリハ」だった。それ以来ユズリハという言葉を聞くと気になっていた。1年中、葉がついているなとは思っていたけど、次の新しい葉が出てくるまで葉を落とさない木だから「譲葉」という名前だったとは知らなかった。この作品では、「ゆずり葉」というタイトルに、母から子へ人生を託していくことの意味を込めているのだろう。私も、そろそろ、自分の来し方行く末を考えなくてはと思った。
軽井沢という地で暮らす人々とのふれ合いを映し出す姿に、白馬での日々を思い出した。
それにしても、やはり信州の秋はいい。久しぶりに軽井沢にも行ってみたいと思った。
もちろん、静かな森、カラマツの林のある軽井沢である。(暁)
2014年/日本映画/カラー/ビスタ/デジタル/DCP/1時間42分
配給:パンドラ
第36回モスクワ国際映画祭特別招待作品
助成:文化庁文化芸術振興費補助金
公式サイト:http://yuzurihanokoro.com/
★2015年5月23日(土)、岩波ホールほか全国公開