監督:フォルカー・シュレンドルフ
脚本:シリル・ジェリー、フォルカー・シュレンドルフ
出演:アンドレ・デュソリエ、ニエル・アレストリュプ
第二次世界大戦末期、ベルリンを破壊されたヒトラー総統がパリ壊滅作戦にでる。
本作は、ヒトラーの命を受けた男と、それを思い止まらせた男の物語。
1944年8月25日未明。パリ中心部、セーヌ河沿いのホテル ル・ムーリス。ここの一室に駐留するドイツ軍パリ防衛司令官コルティッツ将軍の前に、隠し通路から男が現れる。その男、スウェーデン総領事ラウル・ノルドリンクは、生まれ育ったパリの町を爆撃から守りたいと停戦交渉にやってきたのだった・・・
c 2014 Film Oblige – Gaumont – Blueprint Film – Arte France Cinema
フランスで大ヒットした舞台を映画化。舞台と同じくノルドリンクをアンドレ・デュソリエ、コルティッツをニエル・アレストリュプが演じ、緊張感に溢れながらも、時に人間的な心も見せる駆け引きを体現している。
「お子さんは何歳? パリを破壊すると同じ年頃の子どもたちが何人も犠牲になる」というノルドリンクに、「君が僕ならどうする? 自分の妻や子を犠牲にして町を守るか?」とコルティッツが問う。
実は、コルティッツのパリ赴任直前に親族連座法が公布されている。家族を人質に命令に従わせようという権力者の卑劣な発想に唖然とする。
国家権力に屈して戦争に加担せざるを得ない人々のやるせない気持ちに思いが至る。
シュレンドルフ監督は、ドイツで生まれ育ち、フランスで映画を学んだ方。両国への思いが公平に表れているのはそれ故か。
冒頭、破壊し尽されたワルシャワの町が写る。かつてワルシャワの旧市街を訪れたことがある。人々が記憶を頼りに復元した美しい町並みには、銃弾の跡がある壁もあって涙が出た。日本も空襲で各地の町が焼失してしまった。再生された町は伝統的町並みとは程遠い。空襲を免れた京都ですら、瓦屋根が並ぶ戦前の美しさはない。パリをはじめヨーロッパでは、外観を変えずに内部を近代化して町並みを保っていて羨ましい。一方、歴史に育まれた町を戦争で破壊するという愚かな行為は、今も世界のどこかで続いている。悲しい。(咲)
提供:日活 配給:東京テアトル
2014年/仏・独/83分/5.1ch/シネマスコープ/カラー/デジタル/字幕翻訳:丸山垂穂
★2015年3月7日(土)より、Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町他全国公開!!