2015年02月15日

女神は二度微笑む 原題:Kahaani

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監督・脚本:スジョイ・ゴーシュ
出演:ヴィディヤー・バーラン、パラムブラト・チャテルジー、ナワーズッディーン・シッディーキー、(声の出演)アミターブ・バッチャン

コルカタ空港に降り立った美しい妊婦ヴィディヤ。ロンドンに住むITセキュリティ専門家の彼女は、1ヵ月前にコルカタに出張した同業の夫アルナブと連絡が取れなくなり、心配になって探しに来たのだ。タクシーで地元警察署に直行し失踪届を出す。警官のラナに同行してもらい夫の足取りを追うが、宿泊先にも勤務先にも夫の痕跡が一切ない。やがて、夫に風貌の似たミラン・ダムジという危険人物の存在が浮上。デリーから国家情報局の捜査官カーンがやってくる・・・

 
冒頭、ネズミの生体実験。一転、満員の地下鉄で泣き止まない赤ん坊を抱えた女性。「ミルクがないの」と降りていった後に残された荷物の中にミルク入りの哺乳瓶が・・・ 一瞬にして人々が倒れる。30歳以上の日本人なら、20年前の地下鉄サリン事件を思い出す場面。
ヴィディヤがコルカタに来たのは、この無差別テロから2年後。夫の出張は1ヵ月前。どう関係あるの?と、最初から???がいっぱいの本作。
2012年アジアフォーカス福岡国際映画祭で『カハーニー/物語』のタイトルで上映され、あっと驚くどんでん返しに、え〜! もう一度観て確認したい!と思っていたのでした。
 結末がわかっていてミステリー映画を観るのはつまらないという方もいるけど、伏線があっちにもこっちにもあるのがわかって2度楽しめる!
なのですが、『女神は2度微笑む』の邦題には、どこで2度微笑んだ?と、突っ込みを入れたくなります。原題『Kahaani』は、直訳すれば「物語」ですが、本作では「作り話」がぴったりと、ウルドゥー文学研究者の麻田豊氏。でも、それでは何が作り話?と、つい考えながら観てしまうでしょう。『女神は二度微笑む』という邦題、一般の映画ファンを呼び込むのに工夫された絶妙なタイトルだと私は思います。

さて、この女神とは、物語のクライマックスに出てくる「ドゥルガー・プージャー」の祭りで祝われるヒンドゥー教の戦いの女神ドゥルガーのこと。優雅な容姿と激しい気性という二面性を持つ女神。美しく聡明な主人公ヴィディヤにも重なります。

あと、アジアフォーカスの時には知らなかった俳優さんが、その後観た作品に出ていたのを発見。
捜索を手伝う地元警官のラナが、ほんわか癒し系でいいな〜と思ったら、『オプーのうた〜「大地の歌」その後』(2014年東京国際映画祭で上映)で冴えない雰囲気の主役だったパラムブラト・チャテルジーでした。
そして、『めぐり逢せのお弁当』で電車の中で野菜を刻んでいたお調子者のナワーズッディーン・シディーキーが、本作では、デリーからやってきた切れ者捜査官。強面です。
二人とも同じ人物と思えない! 役者ですね〜
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左パラムブラト・チャテルジー  右ナワーズッディーン・シッディーキー

興味深いのが言葉。地元の人たちどうしではベンガル語で話していますが、ヴィディヤやデリーから来た捜査官とはヒンディー語で話しています。
「ビディヤ」と呼ばれて「違うわ」と怒るヴィディヤに、ラナが申し訳なさそうに「ベンガル語ではvとbの発音が同じ」と弁明。松岡環さんの字幕に工夫が光ります。

ちなみに、ラナ役のParambrata Chatterjeeは、ベンガル語映画界で人気の俳優さんで、ヒンディー語読みではパラムブラト・チャテルジーですが、ベンガル語読みでは、ポロムブロト・チョットパッダエ。
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出番は少ない夫アルナブ役Abir Chatterjee(写真:左)もベンガル映画界で活躍している方。配役をみると、Chatterjeeだらけなのですが、ベンガルの名前には、○○jeeと付く人が多いようです。
さらに、コルカタでは人の名前に愛称名と公称名二つの名前があるそうで、これも物語の隠し味。
路面電車や人力車が行き交う混沌とした町並み、躍動感あふれる市場の様子など、コルカタ出身の監督らしく、コルカタの町が生き生きと描かれていてそれも映画の楽しみ。
謎解きを楽しみながら、風物もたっぷり味わえる1作です。(咲)


2012年/インド/ヒンディー語・英語・ベンガル語/123分
配給:ブロードウェイ
配給協力:コピアポア・フィルム
公式サイト:http://megami-movie.com/
★2015年2月21日よりユーロスペースほか全国順次ロードショー
posted by sakiko at 11:54| Comment(0) | TrackBack(0) | インド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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