監督:ホン・サンス
出演:チョン・ウンチェ、イ・ソンギュン、ユ・ジュンサン、イェ・ジウォン
特別出演:ジェーン・バーキン
ヘウォン(チョン・ウンチェ)は、映画を学ぶ大学生。離婚してカナダに移住する母親と会うことになって、カフェで日記をつけながら待っているうちにうとうとしてしまう。そこへ、外国人女性が現れ、「West Villageはどちらですか?」と尋ねるが、へウォンは答えられなくてうろたえる。「娘のシャルロット・ゲンズブールに似ているわ」と言われ、その女性がジェーン・バーキンだと気づき、シャルロットの大ファンであるヘウォンは舞い上がる。
やがて母(キム・ジャオク)が来て、二人で西村(ソチョン)界隈を散歩する。(さっきバーキンに尋ねられたWest Village!) 途中で見かけたモーテルは、そろそろ別れようと考えている妻子ある映画監督で教授のソンジュン(イ・ソンギュン)との思い出の場所だ。母と別れた後、無性に寂しくなって、ソンジュンに電話してしまう。ソンジュンと夜の町を歩くうち、お酒が飲みたくなり、かつて入ったことのある居酒屋に行くと、ソンジュンの授業を一緒に受けている学生たちが先客で飲んでいる。二人の関係を勘ぐられないように平静を装って彼らと同席して飲み始める・・・
数日後、へウォンは再びソンジュンを誘い、南漢山城(ナムハンサンソン)を散策する。「いつまでも一緒にいよう」とキスする二人。
ある日、ヘオゥンが古本屋の店先で本を見ていると、米国で大学教授をしているという男(キム・ウソン)に声をかけられお茶をする。「あなたのような人と結婚したい」と言われ、それも悪くないなと思うヘオゥン。
別の日、ヘウォンが友人のヨンジュ(イェ・ジウォン)に会うため南漢山城へ行くと、ヨンジェはジュンシク(ユ・ジュンサン)と一緒に現れる。彼らは7年におよんで不倫の関係を続けているカップルだ。そこへ、ソンジュンも現れ、妻と喧嘩したという・・・
夢と現実が交錯して語られ、これはどっち?と一瞬わからなくなる。
実際、男と女の関係って、夢を追いかけている一方に現実があるようなもの。
男は勝手だとよく言うけれど、女だって負けずに勝手だ。
ホン・サンス作品は、いつも恋の駆け引きの裏側を覗いているようで可笑しい。
そして、ホン・サンス作品のもう一つの楽しみが、昔の面影を残した何気ない町並みや史跡。本作に出てきた西村の社稷壇、そして南漢山城は、あまり観光客には知られていないところ。ちょっと行ってみたくなった。
そして、『ヘウォンの恋愛日記』の豪華な出演陣。ホン・サンス作品でお馴染みのイ・ソンギュンやユ・ジュンサンはもちろんのこと、母親役のキム・ジャオクや、南漢山城でソンジュンとヘウォンに「素敵な日ですね」と話しかける登山客のキ・ジュボンといったベテラン俳優の手堅い演技がきらりと光る。そして、たまたまコンサートツアーで来ていたジェーン・バーキンが忙しい合い間をぬってカメオ出演! もちろん、チョン・ウンチェも、特に目立って綺麗じゃないけど、男がほおっておけないタイプの女の子を好演。小悪魔的なチョン・ユミ演じるソニと好対照。(咲)
◆『ソニはご機嫌ななめ』
監督:ホン・サンス
出演:チョン・ユミ、イ・ソンギュン、キム・サンジュン、チョン・ジェヨン
ソニ(チョン・ユミ)は大学を卒業したばかり。アメリカに留学しようと思い立ち、久しぶりに大学を訪ねる。自分に好意を寄せているチェ・ドンヒョン教授(キム・サンジュン)に良い推薦状を書いて貰おうという魂胆だ。その帰り道、先輩で元カレのムンス(イ・ソンギュン)に偶然出会う。チキン屋で自分たちの恋愛話を映画に使ったとソニにクダを巻かれたムンスは、親しい先輩で映画監督のジェハク(チョン・ジェヨン)を訪ね、ソニへの感情をぶちまける。ジェハクは家に籠って滅多に外出しないが、翌日、出かけた先で偶然ソニを見かけ声をかける。一緒に酒を飲み、キスしてしまう・・・
ソニと彼女に好意を寄せる3人の男たちの物語。ソニはいったい誰が本命?
昌慶宮で教授から推薦状を受け取るソニ。そこへムンスとジェハクが現れて、3人の男が鉢合わせ。ソニはこっそり一人で外に出てしまいます。残された3人の会話が、なんとも可笑しい。気儘なソニに、大の大人が振り回されている図。
ホン・サンス作品でお馴染みのイ・ソンギュンに加え、本作ではチョン・ジェヨンが初参加。9月6日公開の『さまよう刃』での鬼気迫る姿と対照的に、のほほんとした役どころを自然体で演じています。
そして、本作でも、北村や西村の風情ある町並みや昌慶宮が舞台になっているのが魅力。
(咲)
2013年 ロカルノ国際映画祭 監督賞受賞
2013年/韓国/ビスタ/カラー/88分
配給:ビターズ・エンド
公式サイト: http://www.bitters.co.jp/h_s/
★2014年8月16日(土)よりシネマート新宿にて<2作品>同時ロードショー