
監督:ロバート・ドーンヘルム(『戦争と平和』『ラ・ボエーム』)
出演:マルコ・ボッチ、マッシモ・ポッジョ、ミケーレ・アルハイク、ジュゼッペ・チェデルナ、ジョルジョ・ルパーノ、アルベルト・モリナーリ
1954年、イタリア・ミラノのデジオ教授は世界で2番目に高い山K2(8611m)初登頂を目指して、12名の最強のアルピニスト・チームを組む。第二次世界大戦で負け、まだ貧しい時代のイタリア。遠征にお金は出せないと渋る首相に、ようやく後押しもして貰い、国の威信を賭けての挑戦となる。
そして、ついにアキッレ・コンパニョーニ、リーノ・ラチェデッリの二人が初登頂に成功する。だが、イタリア隊は「登頂は隊全体の名誉」として、長い間二人の名前を公表しなかった。その後、50年以上にわたり初登頂をめぐって名誉を賭けた訴訟が繰り広げられた。いったい、初登頂の栄光の蔭に何があったのか・・・
チーム12名中、最年少のボナッティ。若い彼は高所でも無類の強さで仲間を支え、初登頂を夢見ていた。だが、隊長が登頂アタックのクライマーに選んだのは、コンパニョ―二。そして、もう一人はコンパニョ―二自身に選ばせるというものだった。若いボナッティには酸素ボンベの荷揚げを指示するが、コンパニョ―二は合流予定地よりも高所にキャンプを設ける。出会うことのできなかったボナッティは、疲れ切ったハイポーターと共に下山。一方、コンパニョ―二はラチェデッリと共に、ボナッティが決死の思いで荷揚げした酸素ボンベを使って初登頂に成功する・・・ というのが、本作で描かれた「初登頂の真実」。でも、何が真実かは、その場にいた本人たちにしかわからない。
登山家たちの偉業を成し遂げたいという野望。でも、それは死をも覚悟の上での挑戦。チームを結成した教授が、「K2はイタリアの山」と豪語する場面がある。確かに、K2制覇は、敗戦で沈んでいたイタリアの人たちを元気づけたのだろう。一方で、「山は自分のものにならないけど、経験は残る」と語る登山家の姿も描いている。まさに、山に挑む勇士たちの気持ちだと思う。
K2というと、広島三朗さんを思い出す。日本人で K2に初登頂した一人だ。日本パキスタン協会の集まりで、裸足にサンダル履きの広島さんは、いつも大声で山のことや聖者廟のことを楽しそうに語ってくれたものだ。その広島さんも、カラコルムのスキルブルム峰(7360m)登頂成功後に遭難されてしまった。亡くなられる前年の日本パキスタン協会の泊りがけシンポジウムの最後に集合写真を撮る時に、「山の仲間だと、この中で来年いなくなってる奴がいるんだよな」とおっしゃっていたのが今でも耳に残っている。(咲)
2012年/イタリア/イタリア語/120分/カラー/アメリカン・ビスタ/ドルビーデジタル
配給:Republic-A
公式サイト:http://www.mtk2.net/
★2014年5月10日(土) ヒューマントラストシネマ有楽町にてロードショー