2014年02月21日

ドストエフスキーと愛に生きる   原題:5頭の象と生きる女

監督・脚本:ヴァディム・イェンドレイコ

出演: スヴェトラ-ナ・ガイヤー、アンナ・ゲッテ、ハンナ・ハーゲン、ユルゲン・クロット

 

ロシアの文豪ドストエフスキーのずっしり重い5大長編『罪と罰』、『カラマーゾフの兄弟』、『悪霊』、『未成年』、『白痴』を5頭の象と呼び、生涯をロシア文学のドイツ語への翻訳に捧げたロシア人女性スヴェトラーナ・ガイヤーさんの物語。

1923年、旧ソ連ウクライナのキエフで生まれる。

1938年、15歳の時、父がスターリンの大粛清で収監される。18ヵ月後、奇跡的に監獄から生還するが半年後に亡くなる。ソ連で政治犯の娘に将来はないと、母親は彼女に生きる術に外国語を学ぶように勧める。彼女はドイツ語やフランス語を学ぶ。

1941年、高校生の時、ドイツが侵攻してくる。キエフのユダヤ人3万人以上がバビ・ヤール渓谷で銃殺される。親友も犠牲になる。

その頃、彼女はナチス将校ケルシェンブロック伯爵と出会い、通訳を務めるようになる。1943年、ソ連軍がキエフを奪還する気配を察した彼女は、ドイツに逃れる。ドイツでは、外国人旅券を特別に与えられ、大学にも通う。ドイツ敗戦後も故郷に帰らずドイツで暮らす。

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 歴史に翻弄されながらも、自分の道を静かにまっすぐ貫いたスヴェトラーナ・ガイヤーさんの生き様に感銘を受けました。
 戦後、一度も故郷に帰らなかった彼女が、65年ぶりに孫娘を連れてウクライナに向かいます。監督も彼女を撮り始めたときには想定していなかったそうです。
「今まで帰らなかった理由は?」と監督に尋ねられて、「逆に帰る理由がなかった」と答える彼女。しばらく遠くを眺めて、「なぜかしらね。簡単には言えない。遠い昔の話」と微笑む姿に、いろんな思いが交錯しているのを感じました。
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  また、この映画を観て痛感したのは翻訳がいかに緻密な心が必要な仕事であるかということ。友人の音楽家のクロット氏が翻訳したものを朗読しながら、「ここは句読点を入れれば」とアドバイスするけれど、「原文にはないわ」とぴしゃりと答える厳格さ。

 中学生の頃、父が買ってくれた世界文学全集の翻訳は、ちょうど英文法を習い始めた頃ということもあって、英語の構文が思い浮かぶような直訳に近いものが多かったのを思い出します。あくまで翻訳だから原文に忠実でなければならないけれど、翻訳者に必要なのは、語学力だけでないことを感じます。私の恩師でペルシア文学研究者の岡田恵美子先生の翻訳は、実に美しい日本語で、まるでご本人の創作であるかのよう。ペルシア文学やイランの歴史に対する深い知識、さらにイラン人気質を理解してこその翻訳なのですが、日本語の語学力や表現力が前提。翻訳者に憧れたこともありましたが、早々に諦めて正解でした!(咲)

2011年山形国際ドキュメンタリー映画祭市民賞インターナショナル・コンペティション部門2冠受賞

スイス、ドイツ/2009年/ドイツ語、ロシア語/カラー、モノクロ/デジタル/93

公式HP http://www.uplink.co.jp/dostoevskii/

★2014年2月22日(土)より、渋谷アップリンク、シネマート六本木ほかにて全国順次公開



☆『ドストエフスキーと愛に生きる』公開記念トークイベント (予約可)

 【場所】渋谷アップリンク

http://www.uplink.co.jp/movie/2013/20712

2/23(日)12:45〜の回

【上映後トークショー】 ゲスト:野崎歓さん(フランス文学者・翻訳家)


2/26(水)1900〜の回
【上映後トークショー】 ゲスト:鴻巣友季子さん(翻訳家・エッセイスト)

3/2(日)12:45〜の回

【上映後トークショー】 ゲスト:岸本佐知子さん(翻訳家)

※このイベントは文芸フェスのサテライトイベントでもあります


3/6(木)1900〜の回
【上映後トークショー】 ゲスト:柴田元幸さん(アメリカ文学研究者・翻訳者)

★写真展 「言語をほどき紡ぎなおす者たち──

海外文学界の第一線で活躍する翻訳家9名の仕事場を訪ねて」

【日時】2014219日(水)〜33日(月)

【場所】渋谷アップリンク・ギャラリー 

150-0042 東京都渋谷区宇田川町37-18 トツネビル1

【撮影】荒牧耕司

【料金】入場無料

 

posted by sakiko at 10:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ドイツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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