2018年12月02日
ピアソラ 永遠のリベルタンゴ 原題:Piazzolla, los anos del tiburon
監督:ダニエル・ローゼンフェルド
出演:アストル・ピアソラほか
踊るためのタンゴから、聴くためのタンゴへ。
アルゼンチン・タンゴに革命を起こしたアストル・ピアソラ(1921年〜1992年)。
71歳で亡くなり、没後25周年にあたる2017年、母国アルゼンチンで開催された回顧展にあわせ、ピアソラの功績と家族の絆を紡いだドキュメンタリー。
4歳の時、音楽愛好家だった父の独断で、アルゼンチンからニューヨークへ一家3人で移住。貧困と暴力が渦巻く環境の中で、父は幼いピアソラに中古のバンドネオンを買い与え、息子の奏でる音に聞き惚れていたという。アルゼンチンに帰国し、本場のタンゴを聞きまくり、当時大人気だったトロイロ楽団に入団。妻となるデデと出会い、娘ディアナと息子ダニエルに恵まれる。自身の楽団を立ち上げるが、革新的なタンゴは非難をあび、古巣のニューヨークに舞い戻る。そして、故国から届いた愛する父の訃報。30分で書き上げた父に捧げた曲「アディオス・ノニーノ」は、後にピアソラの代表曲となる。アルゼンチンに帰国し、五重奏団を結成。ようやく耳の肥えた音楽ファンに注目されるようになる・・・
ピアソラというと、私が思い浮かべるのは、ウォン・カーウァイ監督の『ブエノスアイレス』で流れた2曲。なんともけだるいムーディな曲。あの音色は、バンドネオンの奏でるものだったのだと知りました。
息子ダニエルが語る父の姿。ダニエルが幼い頃の8mmフィルムの映像も多用されていて、郷愁をそそられます。ですが、1966年2月に、ピアソラは家族を残して家を出てしまいます。息子の目から見た父親の歴史なので、その後の女性遍歴などは、さすがに語られていません。
世に数々の名曲を遺したピアソラにも不遇の時代があったこと、それを支えた家族がいたこと、彼の生きた時代のことなどが、憂いあるメロディーとともに語られ、なんとも切ない思いにかられました。(咲)
2017年/アルゼンチン・フランス/英語・フランス語・スペイン語/94分/カラー(一部モノクロ)
配給:東北新社 クラシカ・ジャパン
後援:アルゼンチン共和国大使館、インスティトゥト・セルバンテス東京
公式サイト:http://piazzolla-movie.jp/
★2018年12月1日(土)Bunkamuraル・シネマ ほか全国順次ロードショー.
セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー! 原題:Sergio&Sergei
監督・脚本:エルネスト・ダラナス・セラーノ
出演:トマス・カオ、ヘクター・ノア、ロン・ パールマン
1991年、ベルリンの壁が壊され、ソ連をはじめ社会主義国家の体制が次々に崩れ、経済危機がキューバにもおよんでいた頃のお話。
大学で教鞭を執るエリート共産主義者のセルジオ(トマス・カオ)だが、幼い1人娘のマリアナと母の食費にも事欠く日々。アマチュア無線愛好家の彼は、ニューヨークの無線仲間ピーター(ロン・パールマン)からキューバでは報道されない不都合な情報を入手して、生き残る道を探っていた。そんなある日、宇宙ステーション「ミール」滞在中の宇宙飛行士セルゲイ(ヘクター・ノア)と無線交信するようになる。実は、セルゲイは、ソ連崩壊のあおりを食って、地球への帰還が無期延期を宣言されていた。セルジオは、冷戦時代には熾烈な争いを繰り広げていたアメリカを巻き込み、セルゲイ救出作戦に乗り出す・・・
物語のモデルは、実在する元宇宙飛行士で“最後のソビエト連邦国民”と呼ばれたセルゲイ・クリカレフ。ソ連崩壊で、地球帰還が何度も延期され、最終的にアメリカのスペースシャトルで新生ロシアに帰還した人物。
経済危機で貧困に苦しむ大学教授と、宇宙で先の見えない孤独な日々を過ごす宇宙飛行士が無線で励ましあうという、ありそうでありえないハートフルな物語に、ほっこり♪(咲)
冷戦下の殺し合いやスパイ合戦の映画ばかり観てきたので、この国も政治も大気圏も越えた友情物語にぐっときました。しかも曲者揃いの俳優さんたちがとても楽しそうに演じています。とても解決しそうにない難題を智恵を絞ってクリアしていきます。憎みあうより愛し合うほうが演じるのも観るのも嬉しいはず、急に寒くなったこのごろ、この作品を観て心ほっこり暖めてきてください。(白)」
2017年/スペイン・キューバ/スペイン語・ロシア語・英語/93分/ビスタ/5.1ch
配給:アルバトロス・フィルム
公式サイト:http://sergiosergei.com/
★2018年12月1日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー!
共犯者たち(英題:Criminal Conspiracy)
監督:チェ・スンホ
脚本:チョン・ジェホン
撮影:チェ・ヒョンソク
製作:ニュース打破
2008年、〈米国産牛肉BSE問題〉などの報道により国民の支持を失いかけた李明博政権は、メディアへの露骨な政治介入を始める。狙われたのは公共放送局KBSと公営放送局MBC。政権に批判的な経営陣が排除され、調査報道チームは解散、記者たちは非制作部門へと追われた。両局の労働組合はストライキで対抗するが、政権が送り込んだ新しい経営陣は解雇や懲戒を濫発。その結果、政府発表を報じるだけの「広報機関」となった放送局は、〈セウォル号惨事〉で「全員救助」の大誤報を流し、〈崔順実(チェ・スンシル)ゲート事件〉の隠蔽に加担することになった……。
しかし、それでも諦めないジャーナリストたちがいた。局内に残った記者たちは、さらに激しいストライキに突入。いっぽう、不当解雇されたチェ・スンホ監督たちは、市民の支援で立ち上げた独立メディア「ニュース打破」で調査報道を継続。言論弾圧の「主犯」である大統領と、権力に迎合して韓国の報道を骨抜きにした放送業界内の「共犯者たち」をカメラの前に立たせ、その実態と構造とを明らかにしていく。
テレビ局への露骨な介入がこれでもかと描かれる。狙われたのは受信料収入で運営される公共放送KBSと、政府が出資して民間が運営する半官半民の公営放送MBC。政権から送り込まれた経営陣によって不当解雇や配置転換が繰り返される。言論弾圧が現実にあったのだと思い知らされた。政権寄りの報道で市民の支持は失われ、局内に閉塞感が漂う。お昼休みに局内の廊下で「社長退陣!」と叫び自撮りでネット配信するプロデューサーは、妻に「変人扱いされて辞めさせられたらそれで終わり」と諭される。笑っているうちに、切なくて泣けてきた。監督のチェ・スンホがMBCの元社長に突撃取材で迫る。元社長が質問に答えず、「MBCは民営化しなくてはいけない」と繰り返したのが印象的。権力と放送メディアの距離感、放送労働者の連帯、市民からの支持・信頼…。隣国の出来事として片付けられないことばかりである。(堀)
2017年/韓国/カラー/DCP/105分
配給:東風
(C) KCIJ Newstapa
http://www.kyohanspy.com/
★2018年12月1日(土)よりポレポレ東中野ほか全国順次公開
マダムのおかしな晩餐会(原題:Madame)
監督:アマンダ・ステール
原作:アマンダ・ステール
脚本:アマンダ・ステール、マシュー・ロビンス
撮影:レジス・ブロンド
編集:ニコラ・ショドールジュ
音楽:マチュー・ゴネ
出演:トニ・コレット、ハーヴェイ・カイテル、ロッシ・デ・パルマ
エレガントなパリの都に越してきた、裕福なアメリカ人夫婦のアン(トニ・コレット)とボブ(ハーヴェイ・カイテル)。セレブな友人たちを招いてとびきり豪華なディナーを開こうとするが、手違いで出席者が不吉な13人に!
大慌てでスペイン人メイドのマリア(ロッシ・デ・パルマ)を“ミステリアスなレディ”に仕立て上げ、晩餐会の席に座らせる。ところが、緊張のあまりワインを飲みすぎたマリアはお下品な“ジョーク”を連発、逆にこれが大ウケしてダンディーな英国紳士から求愛されてしまう。今更正体を明かせないアンとマリアたちのから騒ぎの行方は・・・?
セレブな生活を堪能するアン。それは全て、歳の離れた夫の経済力があるからこそ。しかし、勝気な主人公は高齢の夫を労わることはない。他人事ながら「そんなことで大丈夫?」と心配になる。案の定、夫婦の関係は微妙な模様。数合わせでテーブルにつかせたマリアがいい思いをするのを許せないのは、自分が満たされていないからではないか。しかも、略奪婚をしたアンには「次は略奪されるかもしれない」不安もあるだろう。一度手に入れた立場を手放すのは受け入れがたい。人間の弱さを見た気がする。
一方、マリアは初めこそ裕福な男性のアプローチに戸惑っていたが、デートのときにマダムと呼ばれて気持ちが大きくなり、次第に振る舞いも大胆に。自信は人を魅力的にする。マリアが自分で考え、行動する姿はなんと凛々しいことか。しかし、これはかつてのアンの姿でもある。マリアはこれからどうなっていくのか。興味深い。(堀)
2016年/フランス/英語・フランス語・スペイン語/カラー/スコープ/5.1ch/91分
配給:キノフィルムズ
(C) 2016 / LGM CINEMA ? STUDIOCANAL ? PM - Tous Droits Reserves
http://www.madame-bansankai.jp/
★2018年11月30日(金)よりロードショー
へレディタリー 継承 (原題:Hereditary)
監督・脚本:アリ・アスター
撮影:パベウ・ポゴジェルスキ
美術:グレイス・ユン
音楽:コリン・ステットソン
出演:トニ・コレット、ガブリエル・バーン、アレックス・ウォルフ、ミリー・シャピロ、アン・ダウド
グラハム家の祖母・エレンが亡くなった。娘のアニー(トニ・コレット)は夫・スティーブン(ガブリエル・バーン)、高校生の息子・ピーター(アレックス・ウォルフ)、そして人付き合いが苦手な娘・チャーリー(ミリー・シャピロ)と共に家族を亡くした哀しみを乗り越えようとするが、奇妙な出来事がグラハム家に頻発。不思議な光が部屋を走る、誰かの話し声がする、暗闇に誰かの気配がする。そして最悪な出来事が起こり、一家は修復不能なまでに崩壊。そして想像を絶する恐怖が一家を襲う。
恐怖で顔が引き攣るとはこのことかもしれない。もう少し美しいトニ・コレットの写真はなかったのかと思ってしまう。こんな顔になるくらい怖い場面があるのかと見る前に覚悟を決めた。しかし、実際には目を覆うようなショッキングな場面はほとんどない。むしろ、直接的に描かず、状況をイメージさせる。ところが、これがかえって恐ろしい。目を閉じたところで、その場面から逃げることはできないのだ。
主人公の母が亡くなって以来、何かわからない違和感が不安とともに家族の心を侵食してくる。リアルすぎるドールハウス、作り物のような自宅のリビング。現実と妄想の境界が曖昧になり、見ている者の混乱を誘う。
全ての伏線が回収された先にあるのは希望か。それとも恐怖か。考え始めると止まらなくなり、作品の余韻が続く。(堀)
2018年/アメリカ/ビスタサイズ/127分
配給:ファントム・フィルム
(C) 2018 Hereditary Film Productions, LLC
http://hereditary-movie.jp/
★2018年11月30日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードジョー
旅するダンボール
監督:岡島龍介
製作:汐巻裕子
撮影・編集:岡島龍介
L.A.撮影:サム・K・ヤノ
音楽:吉田大致
ナレーション:マイケル・キダ
出演:島津冬樹
段ボールアーティスト島津冬樹さんの活動に密着したドキュメンタリー。大学生のころから、ただただ純粋に段ボールに魅せられている島津さんは、国内外で道端やゴミ捨て場にうち捨てられている段ボールを拾い集める。ゴミだった段ボールからたった一つの財布を作り出したことから、島津さんの活動が始まった。ガラクタから価値あるものを生み出す「アップサイクル」は世間の目を集め、展示やワークショップを通じて広がっていく。ある日、市場で可愛いキャラクターの描かれた「徳之島産のジャガイモの段ボール箱」に目が止まる。島津さんはその作り手を捜し出すことになり、カメラはその旅を追ってどこまでも行く。
試写を観て「こんなにユニークな人がいるとは!」と驚きました。大手の広告会社に勤めたときのエピソードも型破りで、本人はガチガチの芸術家ではなく、いたって飄々としています。段ボール愛に突き動かされて、地球のどこまででも段ボール拾いに出かけ、見つけたお宝をリュックやケースにいっぱい詰めて意気揚々と帰ってきます。小さいころから好きだったモノ集めが、今に繋がっています。段ボールのお財布から始まった「Carton」の活動が、海を渡って海外にも広がりリサイクルよりさらに進んだ「アップサイクル」となり、多くの人の目を開かせています。段ボールから始まった人と人との繋がりは、やはり「あったかい」ものでした。
かくいう私も段ボール熱に感染、島津さんにインタビューしましたのでご覧下さいね。最近は近所の酒屋さんに「収集前の段ボールの中から欲しいものがあったらもらえる」許可をいただきました。その前にうちにある段ボールでワークショップのおさらいをしなくては。(白)
2018年/日本/カラー/91分
配給・宣伝:ピクチャーズデプト 特別協賛:サクラパックス株式会社
(c)2018 pictures dept. All Rights Reserved.
http://carton-movie.com/
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★2018年12月7日(金)YEBISU GARDEN CINEMA/新宿ピカデリーほか全国順次公開
☆「段ボールはたからもの 偶然のアップサイクル」
映画公開と同じ12月7日に、島津冬樹さん初のエッセイ本が発売されます。
これまでの旅の記録や語り尽くせない段ボール愛、段ボールクラフトの作り方までたっぷりつまっています。
ぜひ映画とあわせてごらんください。
著者 : 島津冬樹(文と絵)
発行 : 柏書房
出版年月日 : 2018/12/7
ISBN : 9784760150731
判型・ページ数 : 4-6・208ページ
定価 : 本体1,400円+税
キックス(原題:KICKS)
監督:ジャスティン・ティッピング
脚本:ジャスティン・ティッピング、ジョシュア・ベアーン=ゴールデン
撮影:マイケル・ラーゲン
美術:エリン・マギル
編集:ドミニク・ラペリエール、トマス・ベングリス
音楽:ブライアン・レイツェル
出演:ジャキング・ギロリー、クリストファー・ジョーダン・ウォーレス、クリストファー・マイヤー、コフィ・シリボエ、マハーシャラ・アリほか
カリフォルニア、リッチモンド。15歳の少年ブランドン(ジャキング・ギロリー)はクールなスニーカーさえあれば、貧乏やイジメ、女子からモテない現実から逃れられると思っていた。必死に貯めたお小遣いで最強のスニーカー“エア ジョーダン1”を手に入れるが、地元チンピラのフラコ(コフィ・シリボエ)に襲われ、スニーカーを奪われてしまう。ブランドンは悔しさのあまり、友だちのリコ(クリストファー・マイヤー)とアルバート(クリストファー・ジョーダン・ウォーレス)を巻き込み、命よりも大切なスニーカーを奪い返しに行くことを決心する。
イケてるスニーカーがあれば、すべての問題がクリアするという発想に「そんなもの?」と思ったが、エルメスのケリーを欲しがる女性と根本的には変わらないのかもしれない。
欲しいものは力づくで取る。奪われたら奪い返す。被害者だったブランドンが加害者になる。貧しさが心を荒ませるのか。まともにケンカをして一人前の男になる価値観は理解しづらいが、危険を承知で助けてくれる友に希望は残っていると感じた。(堀)
2016年/アメリカ/英語/シネマスコープ/87分
配給:SPACE SHOWER FILMS=パルコ
(C) 2016 FIGHT FOR FLIGHT,LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
http://kicksthemovie.jp/
★2018年12月1日(土)より渋谷シネクイントでロードショー、ほか全国順次公開
アース:アメイジング・デイ(原題:Earth:One Amazing Day)
監督:リチャード・デイル、ピーター・ウェーバー、ファン・リーシン
脚本:フランク・コットレル・ボイス、ゲリン・ヤン
監修:新宅広二
音楽:アレックス・ヘッフェス
ナレーター:佐々木蔵之介
日の出から日の入りまで1日の太陽の流れを軸に、動物たちに限りなく近づき、同じ目線で見ているかのような迫力の映像で生き物の姿を捉えたネイチャー・ドキュメンタリー。
全世界で120億円以上の興行収入を叩き出した『アース』を制作したBBCアース・フィルムズが最新の4K技術や超軽量カメラ、1秒に1,000コマ以上の撮影を可能にしたハイスピード4Kカメラ、200台のドローンを駆使して、世界22カ国でロケを行い、生き物たちの貴重な姿を撮影した。
ウミイグアナの赤ちゃんはヘビの大群からの脱出に挑み、シマウマの親子はサバイバルな移動を続ける。ペンギンの親は過酷な通勤を耐え、ヒナに餌を与える。穏やかそうに見えるキリンの世界にも縄張り争いはある。ヒグマは季節の変わり目に冬毛を落とそうと、体を木に擦り付けて腰を揺らす。その様はちょっとセクシーで笑ってしまう。ナマケモノが求愛相手のもとに必死に出掛けるが、そこで知る状況に同情したくなる。マッコウクジラは大きな体を垂直に立て、家族みんなで眠りにつく。技術の進歩が見せてくれる動物の世界にワクワクする。
私たちが住む地球では多くの生命が生き延びていくためにさまざまな活動をしている。いま、ここに生きていることは奇跡の積み重ねかもしれない。(堀)
亡くなった父が動物好きで、子どものころからよく一緒にテレビの番組を見ていた。父も私も自然豊かな(というより、それしかない)島で育ったので、自然に生きている姿をこそっと見られる映像が嬉しい。以前『WATARIDORI』(2003年)で鳥と一緒に空を飛んでいるようで、ニルスもこうだったかもと想像しました。前作の『アース』(2007年)よりもさらに進んだカメラや技術が、どうやって撮ったのだろうと驚くほどの映像を見せてくれる。いのちはただ生きることに向かうのに、金銭欲にまみれて他者を省みない人間は自滅していくだろうな、と思う。(白)
2017年/イギリス・中国/5.1ch/アメリカン・ビスタ/94分
配給:KADOKAWA
(C) Earth Films Productions Limited 2017
https://earthamazingday.jp/
★2018年11月30日(金)、TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
選挙に出たい
監督・撮影・編集:ケイヒ
出演:李小牧
中国・湖南省出身の李小牧さんは、1988年留学生として日本にやって来た。日本で勉強して祖国に貢献したいと考えていた李さんは、生活のために様々な職業を体験する。中国人観光客を相手に、飲食店や風俗店をガイドする「歌舞伎町案内人」として身を立て、その経験が本になり映画にもなった。そんな李さんが、中国籍を捨て日本に帰化して、2015年に新宿区議選に立候補した。そこまでして政治家になろうとする理由は何か?
自身も日本在住の中国人女性、ケイヒ監督が李さんの選挙活動に密着した。
試写室にかけつけた李小牧さん
李小牧さんの著書「歌舞伎町案内人」は評判を呼び、2004年(張加貝監督)に、チューヤン(李暁強)、山本太郎(劉剛)のキャストで映画化されています。チューヤンといえば、1998年人気のテレビ番組「進ぬ!電波少年」で過酷なヒッチハイクの旅をするユニット 朋友(パンヤオ:チューヤン、伊藤高史)の一人でした。今は香港に戻ってディレクターになっているそうですし、共演した山本太郎さんは2013年から参議院議員です。
挨拶に登場したケイヒ監督(暗くて写真失敗)は河北省の出身。中国の大学で日本語を専攻、ジャーナリストを目指して来日したそうです。途中から映像の道に進み、英国で映像製作を学んだ方。知的でクールな印象で日本語も正確でした。李小牧さんは長く日本にいるわりに日本語が不確かなところがあるのですが明るく賑やか、人好きのする方でした。選挙運動中罵声を受けても腐ることなく、街頭で話し続けます。離婚した妻子まで選挙運動を手助けしていたのが印象的。(白)
選挙権を得た40年以上前、政治に全然期待できなくて、「選挙なんて意味がない」と思って以来、ずっとその思いがある。20歳の頃は選挙になんて行くものかと思っていたけど、一応ずっと参加している。でも、私が投票した人はほとんど当選していない。なので、やはり選挙に行くのが嫌になることも多い。今まで日本の政治に自分の思いが反映されたことがないから。
そんな思いでいたら、なんと中国から日本に帰化してまで選挙に出た人がいるという。いったいどういう思いでと思っていたら、出馬の原点は文化革命だという。中国では選挙権自体がないというのは知っていたが、なかなか自分の思いは反映されなくても、選ぶ権利があるというのはやはりいいことなのだろう。これからも選挙に行き続けるしかないかな。(暁)
◆『選挙に出たい』シネマジャーナル紹介記事
特別記事
山形国際ドキュメンタリー映画祭2017 高野史枝記事内
http://www.cinemajournal.net/special/2017/yamagata/index.html#p02
スタッフ日記
座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバルに行ってきました2
宮崎暁美記事内
http://cinemajournal.seesaa.net/article/456954971.html
2018座・高円寺ドキュメンタリーフェステイバルでの李小牧さん
2016年/中国、日本/カラー/シネスコ/78分
配給:きろくびと
http://kiroku-bito.com/election/
★2018年12月1日(土)ロードショー
jam
監督・脚本:SABU
エグゼクティブプロデューサー:EXILE HIRO
撮影:柳田裕男
音楽:松本淳一
出演:青柳翔(横山田ヒロシ)、町田啓太(西野タケル)、鈴木伸之(川崎テツオ)、秋山真太郎(山下)、八木将康(金城)、小澤雄太(世良)、小野塚勇人(滝口)、佐藤寛太(前島)、野替愁平(港町)、筒井真理子(向井昌子)、清水くるみ
横山田ヒロシは場末の演歌歌手。熱いファンに支えられながらメジャーではない自分に空しさを感じている。コンサート後の恒例のファンミーティングも、ファンに押され気味。帰り道で熱心なファンの一人、向井昌子がヒロシを待ち構えていた。西野タケルは恋人がヤクザの抗争の流れ弾にあたり、意識不明の状態が続いている。毎日良いことをし続ければ彼女の目が覚める、と信じているまじめな青年。ヤクザの構成員の川崎テツオは一人で罪をかぶったものの、残していく祖母の世話をする約束を反故にされたのを知り、出所後に復讐を果たそうとしている。
この3人が思わぬところで交錯して運命が転がっていく。
TIFFでの舞台挨拶@EXシアター(2018年11月1日)レポはこちら
EXILEのHIROプロデュースによるオリジナルの新作。SABU監督と劇団EXILEがコラボし劇団EXILEのメンバー総出演が実現しました。全く関わりのない人生を歩んでいるかに見える3人が、実は微妙に接触していてその糸がほどけていきます。SABU監督の脚本と演出は、このドラマをスピード感たっぷりに展開し、観客がひきこまれていきます。
演歌歌手をとりまくおばさまたち、熱い視線がほとんど少女のようです。ただただ自分のアイドルを見つめているのが、純情というか健気というか。はたから見るとかなり痛いのですが、本人達は幸せ。まるで自分の姿を見るようでした(実はミーハーで嵌りやすい筆者)。母親役を見慣れた筒井真理子さんの演じる、アイドルへの濃すぎる愛でふりきってしまう昌子の姿がすごいです。鬼気迫る快×怪演。EXILEメンバーの一人ひとりが活躍していますので、ファンは必見。(白)
2018年/日本/カラー/シネスコ/102分
配給:LDH PICTURES
(C)2018「jam」製作委員会
https://ldhpictures.co.jp/movie/jam/
★2018年12月1日(土)より新宿バルト9ほか全国公開
脱皮
『脱皮』 脱皮しない蛇は滅びる ニーチェ
劇場公開日 2018年12月1日、2日
渋谷ユーロスペースにて モーニングロードショー
監督:大木一史
脚本:渡辺典子、大木一史
プロデューサー:佐藤慶子
ラインプロデューサー:有馬尚史
音楽監督:佐藤慶子
キャスト
和泉妃夏
伊藤寛明
岩田継昭
小黒三重子
まろ
(チラシより)
山間の美しい村を流れる川に、一人の女が流れ着いた。
偶然居合わせた村に住む能面師がその女を助ける。
だが、女は自分の素性は一切明かさない。
吐く言葉はすべて嘘にまみれている。
次第に不信感を募らせる村人たち。
女は、日がな一日川に浸かり何かを探し続けている。
女が探しているものは、一体何なのか。
映画は、自然豊かな村に現れた虚言癖のある女性(主演女優・和泉妃夏さん)に、村民たちの生活がかき乱されながらも触れ合いを通じ製作て成長し、新たな人生へと向かう姿を捉えた物語。
シネマジャーナル読者の方が脚本に協力している。
『脱皮』は、長野県下條村と天龍村を舞台に、音楽家の佐藤慶子さんがプロデュースし、NHK連続テレビ小説「おしん」の製作に携わった大木一史さんが監督を務めた自主製作映画で、長野県飯田市中央通りの飯田センゲキシネマズで23日から先行上映が始まっている。初日は監督や金田憲治下條村長らが舞台あいさつし、村の魅力や撮影の苦労話で会場を盛り上げた。飯田での上映は12月5日まで。
佐藤さんが運営し、大木監督が指導する演劇ワークショップの生徒が中心のキャスティングで、下條村民十数人もエキストラとして出演。村の古民家や神社、ソバ畑、和知野川など各所で撮影が行われた。
(暁)
製作年2018年
製作国日本
上映時間103分
劇場公開日 2018年12月1日、2日
渋谷ユーロスペースにて モーニングロードショー
監督:大木一史
脚本:渡辺典子、大木一史
プロデューサー:佐藤慶子
ラインプロデューサー:有馬尚史
音楽監督:佐藤慶子
キャスト
和泉妃夏
伊藤寛明
岩田継昭
小黒三重子
まろ
(チラシより)
山間の美しい村を流れる川に、一人の女が流れ着いた。
偶然居合わせた村に住む能面師がその女を助ける。
だが、女は自分の素性は一切明かさない。
吐く言葉はすべて嘘にまみれている。
次第に不信感を募らせる村人たち。
女は、日がな一日川に浸かり何かを探し続けている。
女が探しているものは、一体何なのか。
映画は、自然豊かな村に現れた虚言癖のある女性(主演女優・和泉妃夏さん)に、村民たちの生活がかき乱されながらも触れ合いを通じ製作て成長し、新たな人生へと向かう姿を捉えた物語。
シネマジャーナル読者の方が脚本に協力している。
『脱皮』は、長野県下條村と天龍村を舞台に、音楽家の佐藤慶子さんがプロデュースし、NHK連続テレビ小説「おしん」の製作に携わった大木一史さんが監督を務めた自主製作映画で、長野県飯田市中央通りの飯田センゲキシネマズで23日から先行上映が始まっている。初日は監督や金田憲治下條村長らが舞台あいさつし、村の魅力や撮影の苦労話で会場を盛り上げた。飯田での上映は12月5日まで。
佐藤さんが運営し、大木監督が指導する演劇ワークショップの生徒が中心のキャスティングで、下條村民十数人もエキストラとして出演。村の古民家や神社、ソバ畑、和知野川など各所で撮影が行われた。
(暁)
製作年2018年
製作国日本
上映時間103分