2018年12月23日

アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング(原題: I Feel Pretty)

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監督・脚本:アビー・コーン、マーク・シルヴァースタイン
撮影:フロリアン・バルハウス
音楽:マイケル・アンドリュース
出演:エイミー・シューマー(レネー・ベネット)、ミシェル・ウィリアムズ(エイヴリー・ルクレア)、ロリー・スコベル(イーサン)、エミリー・ラタコウスキー(マロリー)、エイディ・ブライアント(ヴィヴィアン)

レネーは日も当たらない職場で、通販会社の事務をしている。仕事も同僚も自分もぱっとせず、女友達と愚痴をこぼす日々。何度目かのダイエットに挑戦、ジム通いを開始した。必死でプログラムについていくレネーは転倒して頭を打ってしまう。ふらふら立ち上がって鏡を見るとなんと!美女に変貌しているではないかっ!! 頭を打ったせいだとはつゆほども疑わないレネーはすっかり超ポジティブになった。周囲の反応も善意に解釈して本社勤務も叶った。憧れのエイヴリーとも親しくなって、優しい彼氏もできる。これで万事順調かと思えたが・・・。

またもこじらせ女子を演じるエイミー・シューマー。なんだか前作『エイミー、エイミー、エイミー! こじらせシングルライフの抜け出し方』(2015/日本公開は2017)より横に大きくなったような気がしますが、サモハンみたいに動きのキレがいいんです。
勘違いが始まってから、見た目は前と変わらないのに、表情は明るく姿勢がよくなります。みるみる素敵な女性になっていくのが映画らしいとはいえ「輝きのもとは自信」ということに納得。下ばかり向いてないで、胸を張って歩くことから人生は変わっていくのかも。「舌たらずな喋り方にコンプレックスを持っている」と、レネーに打ち明けるCEOエイヴリー役のミシェル・ウィリアムズがとても可愛らしいです。(白)


2018年/アメリカ/カラー/シネスコ/110分
配給:REGENTS
(C)2018 TBV PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
http://ifeelpretty.jp/
★2018年12月28日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
posted by shiraishi at 20:08| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話

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監督:前田哲
原作:渡辺一史「こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち」(文春文庫刊)
脚本:橋本裕志
撮影:藤澤順一
音楽:富貴晴美
主題歌:ポルノグラフィティ「フラワー」
出演:大泉洋(鹿野靖明)、高畑充希(安堂美咲)、三浦春馬(田中久)、萩原聖人(高村大助)、渡辺真起子(前木貴子)、宇野祥平(塚田心平)、韓英恵(泉芳恵)、竜雷太(鹿野清)、綾戸智恵(鹿野光枝)、佐藤浩市(田中猛)、原田美枝子(野原博子)

札幌で一人暮らしをしている鹿野靖明34歳目下独身。ちょっと違っているのは彼が子どものころから難病の筋ジストロフィーを患っていること。病状が進んだ今、動かせるのは首と手だけ。食事や排泄はもちろん、夜中の寝返りも人の手を借りないとできない。施設で一緒に暮らした仲間たちのうち、進行の早かった者はすでにこの世にいない。医師や家族の反対を押し切って、鹿野は一人暮らしに踏み切ったのだ。
身体は不自由でも心と口は自由な鹿野は、大勢のボランティアに支えられながら毎日を過ごしている。ある日、ボランティアの医大生田中の彼女・美咲が訪れる。お喋りで惚れっぽい鹿野、さっそく美咲をボランティアに引き入れる。

原作は渡辺一史さんの書かれたノンフィクション。第35回大宅壮一ノンフィクション賞・第25回講談社ノンフィクション賞をダブル受賞しています。舞台が札幌で、同じころに住んでいたこともあり早くに原作を読んでいました。自分ができないことを手助けしてもらうのに、多少は相手を考えて遠慮がちになってしまうものですが、この鹿野さんは真夜中に「バナナ食べたい!」と主張します。朝になってから、ではありません。ボランティアは24時間体制でついているので、財布片手にコンビニへと走っていきます。新人の美咲ちゃんがわがまま言い放題の鹿野に「何様!?」とキレてしまいます。そうやって何人ものボランティアがぶつかったり辞めたりしました。
鹿野さんはついに呼吸器をつけるようになりますが、不可能と言われた発声を可能にします。何事もあきらめず、42歳までを生き抜いた鹿野さん、ご家族、ボランティアのみなさんがこの作品の中で生きていました。
大泉洋さんが鹿野さん。この人が演じたら憎まれるより理解されるに違いない、と思わせます。高畑充希さん、三浦春馬さんが鹿野さんに出会って人生が変わっていった若者を。とりまくベテランたちが物語を支えていました。「あの人のわがままはいのちがけなんです」という医大生田中くんの台詞が今も耳に残っています。(白)


60歳までの15年ほど、障害者たちが立ち上げた会社で働いていました。障害があっても自分ができることは自分で行う。なんでもやってあげることが介護ではないという思いの元、自分たちができることをやっていくという思いで4,5人の障害者で立ち上げた会社だけど、私が入ったときにはすでに100人以上の社員がいる会社になっていた。そして、障害者だけでなく、高齢者も対象になっていて、車いす、杖、などのほか、大型のリハビリ機器なども扱っていた。入社して数年後には介護保険も始まり、デイサービス、高齢者用入居施設、グループホームなどにも広がっていった。
この映画を観た時、その会社に入って1ヶ月目くらいの経験を思い出した。車いすの人も行けるツアーに参加した人たちの、旅行後の写真交換会に初めて参加した時、そこでこの鹿野さんのように傍若無人で、やってくれるのが当然という感じの障害者がいて、私も美咲ちゃんのように「障害者だからって、何様?」と思ったのでした。その方のことを詳しくは知らないけど、もしかして鹿野さんのような心境だったのかもしれなかったのかな?と、この作品を観て思いました。でも、その後、そういう障害者にはほとんど会わず、人に何かをやってもらう時は、丁寧に頼む人がほとんどでした。
でも、何も知らずの状態で、鹿野さんのような態度で言われては、やはりびっくりしますよね。
その会社には車いすの人や杖を使っている人が20人以上いたけど、けっこう活躍していました。車いすの人などは器用に段差をクリアしていたし、スポーツをやっている人もいて、長野オリンピックのアイスレッジホッケーに出場した人もいました。鹿野さんのような進行性の筋ジストロフィーを患っている人はいなかったからかもしれませんが、それぞれ車いすの床ずれに悩んでいたり、障害のせいでそれなりにいろいろありました。
でも、杖にしても車いすにしても、ほかのリハビリ機器にしろ、障害の状態に合わせて、さまざまなものがあるということを知りました。
それに、電話相談室が隣だったので、いろいろな制度のことや、介護保険制度の使い方などについて、「門前の小僧、習わぬ経を読む」ではないけど、耳学問で知ることができ、母の介護の時にとても役立ちました。
なによりも障害者の人たちや高齢者の人の気持ちや付き合い方を知りました。気を使いすぎても使わなくてもいけない。良い加減が大事ということです。やれることは自分でやってもらう。やれないことだけ手伝うという精神が大事。なんでもやってあげるのは障害者や高齢者自身のできることを減らしてしまということでした。そして、介護は自分ひとりで担っては介護者自身がだめになる。鹿野さんのように仲間が大事です(暁)。


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11月12日完成披露試写会

12月4日にあった試写会+講演(原作者の渡辺一史氏、大泉洋さん、パラリンピックで活躍のランナー/大西瞳さん登壇)のレポを書き起こし中です。もう少しお待ちください。(白)

完成披露試写会 舞台挨拶のほぼ書き起こしアップしました。こちら

特別試写会 講演会は2回に分けてアップしました。
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/463437741.html 
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/463489650.html  こちらが続き
2018年/日本/カラー/ビスタ/120分
配給:松竹
(C)2018「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」製作委員会
http://bananakayo.jp/
★2018年12月28日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 19:55| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

それだけが、僕の世界   英題:Keys to the Heart

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監督/脚本:チェ・ソンヒョン
出演: イ・ビョンホン、パク・ジョンミン、ユン・ヨジョン、ハン・ジミン

かつては東洋チャンピオンだった元プロボクサーのジョハ(イ・ビョンホン)。40歳を過ぎた今、チラシ配りのバイトをしながらネットカフェで寝泊りする日々。そんなある日、17年前、家を飛び出して以来、会ってなかった母親(ユン・ヨジョン)と再会。一緒に暮らそうと言われる。家には、存在を知らなかった弟ジンテ(パク・ジョンミン)がいた。サヴァン症候群のジンテは、日常生活で介助が必要だが、純粋で、何を言っても「は〜い」と無邪気だ。そんな弟に苛立ちながらも、母との3人暮らしに慣れてきた頃、母から1ヶ月仕事で釜山に行くので弟の世話をよろしく頼むと言われる。さらに、近々開催されるピアノコンクールに、ジンテを出場させてほしいと懇願される。実は、ジンテは一度音を聴いただけで、ピアノ演奏できる天才的な音感を持っていることに母は気づいていたのだ。ジョハは、ジンテが憧れるピアニストのハン・ガユル(ハン・ジミン)に手助けを求める。ジョハは因縁があって彼女と知り合いだったのだ。
いよいよ、コンクールの日を迎える・・・

ぶっきらぼうで、すさんだ生活をしながらも、過去の栄光をどこか片隅に捨てきれずにいるジョハを体現したイ・ビョンホンに唸りました。ほんとに、その辺にいそうな兄ちゃん。ハリウッドで華々しく活躍する姿よりも、ぐっと親近感が持てます。弟役パク・ジョンミンも、サヴァン症候群の方たちのことを徹底的に調べ、ピアノも猛特訓して自身で弾くという渾身の演技。『空と風と星の詩人〜尹東柱(ユン・ドンジュ)の生涯〜』での、独立運動家のソン・モンギュと同じ役者とは!
そして、息子の将来を案じる母親役のユン・ヨジョン、心に傷を抱えたピアニスト役のハン・ジミンと、まさに演技派の役者が勢ぞろい。それが、監督第一作のチェ・ソンヒョンからのオファーに、脚本を読んで即決したというからすごいです。チェ・ソンヒョンの代表的な脚本作としては、『王の涙、イ・サンの決断』(2014年)があります。
『国際市場で逢いましょう』のユン・ジェギュン監督が、脚本に惚れこんで製作総指揮を引き受けたのも、名優たちのキャスティングに繋がったようです。
なんらかの障がいのある人を支えるのは、大変なこと。家族だからという義務感以上の愛と絆が大事だということを感じさせられた物語です。(咲)


別々に生きてきた兄弟が出会う。育ちや状況の違いから互いに戸惑うが、次第に大切な存在として強い絆で結ばれていく。

兄を演じるのはイ・ビョンホン。散切り頭にジャージを着て、スターのオーラを封印。弟相手に本気でテレビゲームに挑んで負けて悔しがる。家族で外食したときにお店の人に撮ってもらった家族写真のひょうきんぶりには絶句。こんな身近な存在のイ・ビョンホンは見たことない!

少しずつ兄らしくなっていくジョハだったが、ジンテと一緒にいるとトラブルは起こる。母にとって障害を持つジンテはどんなことがあっても守るべき存在ゆえ、ジョハに対してきつい言葉を投げかけてしまう。そのときのジョハの表情がなんと悲しげなことか。コミカルな演技から深い感情表現まで演じ切るイ・ビョンホンをたっぷり堪能したい。(堀)



2018年/韓国/120分/カラー/シネスコ/5.1chデジタル
配給:ツイン
http://sorebokumovie.com/
★2018年12月28日(金) TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー





posted by sakiko at 17:20| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンス   原題:Westwood: Punk, Icon, Activist

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監督 : ローナ・タッカー

エリザベス女王から「デイム」の称号を与えられた英国のファッションデザイナー、ヴィヴィアン・ウエストウッド。77歳にして世界数十カ国、100店舗以上を展開する独立ブランドのトップかつ現役デザイナー。
本作は、生涯現役を誓う彼女を追ったドキュメンタリー。

米国アカデミー賞Rの授賞式では、メリル・ストリープやヘレン・ミレンなど数々の女優が彼女のドレスでレッドカーペットを歩き、映画『セックス・アンド・ザ・シティ』ではサラ・ジェシカ・パーカー扮する主人公キャリーの大胆なウエディングドレスで登場。華やかな成功をおさめている彼女も、1985年には無一文になる挫折を味わっている。
3年間の密着取材で、現場でテキパキ指示する姿や、パートナーとのエピソード、そして、環境保護、人権保護問題への支援活動を積極的に行う姿を映し出している。

とにかくパワフル! 妻、母親としての役目も果たしながら、自らデザインして事業を拡大し、さらには社会に還元する資金援助も。
「無知だからこそ、世界で何が起きているのか知ろうとした」
「大事なのは人目を引くこと、即行動すること」
「引退した人が自由な余生を送るように、私の意志で今すべき事をしている」等々。
彼女の言葉には、人生のヒントもいっぱい。
元気を貰える映画です。(咲)


女王陛下からデイムの称号を授けられ、英国の「今年のデザイナー」賞を3回受賞しているデザイナー、ヴィヴィアン・ウエストウッド。3回結婚し、2回目の結婚相手の嫌がらせにより、生活保護を受けるほど困窮したことも。そこを踏ん張り、世界数十カ国、100店舗以上を展開する独立ブランドまでに育て上げた。現在は25歳年下の現在のパートナーとブランドを二人三脚で守る。本作は77歳にして生涯現役を宣言する彼女の波瀾万丈な人生を紐解くドキュメンタリー作品。

「世界のことを知りたい」。この好奇心が彼女の原点。知的好奇心が満たされず、最初の夫とは子どももいたが、3年で離別する。そして、2度目の夫、マルコムがプロデュースするバンドの衣装をデザインして、パンク・ファッションを生み出した。彼女が才能を感じたマルコムもやがて停滞。ヴィヴィアンがマルコムを越えてしまったのだ。この先の男女関係はよくある話。しかし、母と息子が力を合わせて乗り越えた。彼女のパワフルな生き方は真似できるものではないが、勇気はもらえる。

家族で始め、守ってきたブランドも、気がつけば世界規模の広がりに。その過程で判明する意見の相違。息子と道を分かつことに。そしてトップの意思がきちんと伝わっていない場面が出てくる。それは組織の問題ではなく、彼女の老化した記憶力の問題か。ともあれ、お金にこだわらず、自分の好きなものだけに囲まれていたい彼女と組織としての成長は相反する。図らずも組織の在り方も炙り出す。他のブランドが大企業の傘下に入っている理由がわかった気がした。(堀)


2018年/イギリス/カラー/5.1ch/ビスタ/84 分
配給:KADOKAWA
公式サイト:http://westwood-movie.jp/
★2018年12月28日(金)角川シネマ有楽町、新宿バルト9ほか全国順次ロードショー




posted by sakiko at 17:15| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

いつか家族に(英題:Chronicle of a Blood Merchant)

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監督:ハ・ジョンウ 
原作「血を売る男」余華(河出書房新社)
出演:ハ・ジョンウ、ハ・ジウォン、チョ・ジヌン、ユン・ウネ

1953年、朝鮮戦争終戦直後。現場仕事で生計を立てるサムグァン(ハ・ジョンウ)は、ポップコーン売りの美しい女性オンナン(ハ・ジウォン)に一目ぼれ。オンナンには羽振りのいい恋人がいると知りながら、猛アタックして結婚。3人の息子に恵まれて幸せいっぱいのはずだったが、長男は元カレの子と判明。家族の絆が解けてしまう。そんなとき、長男が脳炎にかかる。

血が繋がっていないとわかった途端、息子に冷たく当たるサムグァン。コミカルに見えるくらい、いい父親全開だった前半との対比が半端ない。付き合っている男性がいることを知りつつ、結婚したのだから覚悟すべき。子どもに罪はない。男としての器の小ささを突きつける。
そんなサムグァンが息子の病を知り、父親としての意識を取り戻す。命懸けで息子を助けようとする姿は気迫に満ちていた。
コミカルからシリアスまで振り幅のあるサムグァンを『1987、ある闘いの真実』のハ・ジョンウが見事に演じきる。妻は『マンハント』のハ・ジウォン(堀)


2015/韓国/韓国語/124分 
配給:ファインフィルムズ
(C) 2015 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & DHUTA. All Rights Reserved
http://www.finefilms.co.jp/kazoku/
★12月22日(土)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋他にてロードショー





posted by sakiko at 09:00| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする