2018年11月24日
斬、
監督・製作・脚本・撮影・編集:塚本晋也
音楽:石川忠
出演:池松壮亮、蒼井優、中村達也、前田隆成、塚本晋也ほか
250年にわたり平和が続いてきた国内が、開国するか否かで大きく揺れた江戸時代末期。貧窮して藩を離れ、農村で手伝いをしている浪人の杢之進(池松壮亮)は隣人のゆう(蒼井優)やその弟(前田隆成)たちと、迫り来る時代の変革を感じつつも穏やかに暮らしていた。
ある日、剣の達人である澤村(塚本晋也)が現れ、杢之進の腕を見込んで、京都の動乱に参戦しようと誘いかける。旅立つ日が近づくなか、無頼者(中村達也)たちが村に流れてきた。
人を斬る。この一線を超えられない、腕の立つ若い浪人が極限状態に追い込まれたとき、どうするのか。
江戸時代末期、農家の手伝いをしながら生活する主人公が時代の波に翻弄されながら模索し続ける。
主演の池松壮亮がいい。『散り椿』では頼りなさを感じる役だったが、今作はぐっと大人びた感がある。蒼井優が演じる農家の娘と気持ちは通じ合っていたが、ここでも一線が超えられない。古家の板壁の隙間から手を射し伸ばす。その指先から想いがほとばしる。蒼井優もそれに応える。
塚本晋也が監督・脚本・撮影・編集・出演を兼ねる。殺戮シーンはグロいと言えるかもしれないが、それを越えて訴えてくるものがある。(堀)
2018年/日本/アメリカンビスタ/5.1ch/80分
配給:新日本映画社
(C) SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER
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★2018年11月24日(土)より渋谷・ユーロスペースほか全国公開
恐怖の報酬(オリジナル完全版)(原題:Sorcerer)
監督:ウィリアム・フリードキン
原作:ジョルジュ・アルノー
脚本:ウォロン・グリーン
撮影:ジョン・M・スティーブンス
音楽:タンジェリン・ドリーム
出演:ロイ・シャイダー、ブルーノ・クレメル、フランシスコ・ラバル、アミドゥー、ラモン・ビエリ、ピーター・カペル、カール・ジョンほか
南米の小国、ポルヴェニールの油田で大火災が発生する。祖国を追われ、この熱帯の地に流れてきたニーロ(フランシスコ・ラバル)、カッセム(アミドゥー)、マンゾン(ブルーノ・クレメル)、スキャンロン(ロイ・シャイダー)の4人は、生き地獄のようなこの地を離れるため、それぞれ1万ドルの「報酬」と引き換えに、消火用のニトログリセリンの運搬を請け負う。4人は2台のトラックに分乗して旅立ったが、火災現場までの300キロにはさまざまな危険が待っていた。
1952年に公開されたイブ・モンタン主演、アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督の同名フランス映画をウィリアム・フリードキンが1977年にリメイク。日本では監督に無断で30分カットされた短縮版が公開された。それを監督が2013年に4Kデジタル修復。オリジナル完全版が日本で公開されることとなった。
ヒヤヒヤする場面の連続だが、最大の危機は吹き荒れる嵐の中、崩壊寸前の吊り橋をトラックで渡るシーン。撮影もかなり苦労と危険を伴ったことだろう。下手なホラーより怖い。危険を1つ1つ乗り切ることでバラバラだった4人に信頼関係が生まれる。表情も穏やかになっていく。しかし、危険は自然だけではなかった。因果応報とはこのことである。(堀)
1977年/アメリカ/テクニカラー/ビスタサイズ/5.1ch/DCP/121分
配給:コピアポア・フィルム
(C) MCMLXXVII by FILM PROPERTIES INTERNATIONAL N.V. All rights reserved.
http://sorcerer2018.com/
★2018年11月24日(土)公開
ポリス・ストーリー REBORN(原題:机器之血 Bleeding Steel)
監督・脚本:レオ・チャン
撮影:トニー・チャン、ジャック・ジアン
音楽:ポン・フェイ
出演:ジャッキー・チェン、ショウ・ルオ、オーヤン・ナナ、エリカ・シアホウ、カラン・マルヴェイ、テス・ハウブリックほか
国際捜査官リン(ジャッキー・チェン)は危篤に陥った幼い娘を病院に残したまま、証人警護作戦に急遽駆り出されるが、ある陰謀に巻き込まれ、瀕死の重傷を負ってしまう。
13年後、かつての事件を元ネタにした小説「ブリーディング・スチール」の出版をきっかけに、黒ずくめの犯罪組織&謎のハッカーなど、過去に因縁のある者達が次々に姿を現わし、正体を隠して暮らしていたリンも、事件の鍵を握る最愛の娘を守る為、再び立ち上がる!
ジャッキー・チェンが国際捜査官の身分を隠し、養護施設の掃除人、大学の学食従業員などをしながら、記憶を失っている娘を守り続ける。ヤキモキしながら娘を見つめるジャッキーの父親顔がいじらしい。
一方、オペラハウス屋上で見せたスタントはまだまだ健在さを感じる。『カリオストロの城』のルパンを思い出した。リンの部下を演じたエリカ・シアホウはキレのあるアクションを披露するが、カッコよくて見惚れてしまう。ショウ・ルオ演じるリ・スンは不死身すぎるが、ここは突っ込んではいけないところかも。(堀)
『ポリス・ストーリー/香港国際警察』(1985)のジャッキーは30歳そこそこ。ユーモア溢れるアクションに釘付けになりました。後で無声映画を見るようになって、三代喜劇王のキートン、ロイド、チャップリンを継承している人だと気づきました。
無敵のジャッキーも今や定年退職の年頃だけれど、現役で活躍して今回も目を見張るアクションを披露しています。シルバー世代の星!!
たぶん10年以上前、六本木ヒルズのアリーナでCM撮影があったときに、友人たちとワイワイ見物に行きました。ハイタッチしたり日本語交えて声かけてくれたりファンサービス満点でした。最近は超多忙で映画公開があっても来日していません。来てくれないかなぁ。懐かしい主題歌「警察故事」を新しく歌いなおしたそうで、北京語です。(白)
2017年/中国=香港/カラー/シネスコ/5.1ch/109分
配給:ツイン
(C) 2017 HEYI PICTURES CO., LTD., PERFECT VILLAGE ENTERTAINMENT HK LIMITED, DADI CENTURY (BEIJING) CO., LTD., MANGO ENTERTAINMENT, CHEERFUL LAND PICTURES CO., LTD., YOUKU PICTURES (HK) CO., LIMITED ALL RIGHTS RESERVED
http://policestory-reborn.com/
★2018年11月23日(金)全国ロードショー
ハード・コア
監督:山下敦弘
原作:狩撫麻礼/いましろたかし「ハード・コア−平成地獄ブラザーズ」 エンターブレイン刊
脚本:向井康介
撮影:高木風太
音楽:Ovall
出演:山田孝之、佐藤健、荒川良々、石橋けい、首くくり栲象、康すおん、松たか子ほか
純粋すぎて世間に馴染めない兄・右近(山田孝之)は精神衰弱気味の牛山(荒川良々)とともに右翼系弱小団体に属し、埋蔵金を探している。エリート商社マンの弟・左近(佐藤健)が兄の不始末の尻拭いをしている。
ある日、牛山が古びた謎のロボットを発見。右近が「ロボオ」と命名して友情関係を深めていく。AIの知識もある左近が、ロボオが見た目とは違い、現代科学の水準を遥かに凌駕する高性能であることを突き止めた。3人はロボオの能力を使い、100憶を超える本物の埋蔵金を見つける。
左近が握る埋蔵金の行方、悲しい牛山の過去、右近の水沼の娘・多恵子(石橋けい)との禁断の恋、会頭・金城の失踪― この腐れきった世の中で、ジレンマを抱えながら生きる彼らの運命は何処へ向かうのか……。
兄は真っ直ぐ過ぎてトラブル多発。しかし、大切な存在は必死に守る。その純粋さが魅力的。弟は兄をバカにしているかと思いきや、兄のダメな点をはっきり口にして、世間と折り合いをつけさせようと心を砕く。演じる山田孝之と佐藤健がいい。距離を置きつつ心配し合う兄弟の間合いが抜群。弟が兄の部屋にいるロボットのことを遠慮がちに聞くシーンのぎこちなさは完璧!
兄は友に対しても家族のように親身になる。それは友が見つけたロボットに対しても同じ。次第に兄、弟、友、ロボットは心を通じあわせた仲間となっていく。オリジナルラストに鑑賞後は温かな気持ちになれるだろう。(堀)
2018年/日本/カラー/アメリカン・ビスタ/124分
配給:KADOKAWA
(C) 2018「ハード・コア」製作委員会
http://hardcore-movie.jp/
★2018年11月23日(金)公開
オンネリとアンネリのふゆ(原題:Onnelin ja Annelin talvi)
監督:サーラ・カンテル
原作:マリヤッタ・クレンニエミ
脚本:サーラ・カンテル、サミ・ケスキ=バハラ
撮影:マリタ・ヘルフォルス
音楽:アンナ・マリ・カハラ
出演:アーヴァ・メリカント、リリャ・レフト、エイヤ・アフヴォ、ヤッコ・サアリルアマ、ヨハンナ・アフ・シュルテン、エリナ・クニヒティラほか
クリスマスの近づくある日、バラの木夫人から買った小さなかわいい家で暮らすオンネリ(アーヴァ・メリカント)とアンネリ(リリャ・レフト)のもとに、小人の一族・プティッチャネンの家族がバラの木夫人を訪ねてきた。家をなくした小人の家族は、彼らをつかまえようとする悪い人間たちから逃げているという。そこでふたりは、夫人の居場所が分かるまで、ふたりのドールハウスに家族をかくまうことに。しかし、お金に困っているガソリンスタンド店の夫婦が小人の家族の存在に気づいてしまう。はたして、ふたりは彼らを守ることができるのか。
フィンランドの児童文学を原作とする作品の映画化第2弾。
クリスマスが近いある日、女の子の夢が詰まったかわいい家に住むオンネリとアンネリが小人一家に助けを求められ、一緒に過ごす数日間のハートウォーミングな顛末を描く。
雪と氷に閉ざされるフィンランドの冬を白やブルーを基調に明るく表現。小人一家の存在を隠す2人と一儲けを企み、探りを入れる女性との攻防戦が微笑ましい。全てが丸く収まるラストにホッとした。多様性の受け入れをさりげなく描いているところがいい。(堀)
ふたりがなぜおうちを持っているのかは、『オンネリとアンネリのおうち』の紹介をどうぞ。続編を楽しみにしていたところでした。前回も楽しい隣人が登場し、ふたりは問題を見事に解決しました。今回はドールハウスにぴったりの大きさの小人さん一家を手助けします。
小人さん一家といえばイギリスの作家メアリー・ノートンの「床下の小人たち」から始まる小人の冒険シリーズが有名です。わくわくしながら岩波少年文庫を読み続けました。ジブリのアニメ作品『借りぐらしのアリエッティ』(2010/米林宏昌監督)をご覧になった方も多いでしょう。小人さんはファンタジーだけれど、現実でもそんな風に生き抜く人たちが世界中にいることにハッとしました。(白)
2015年/フィンランド/フィンランド語/カラー/ビスタサイズ/81分
配給:アットエンタテインメント
(C) Zodiak Finland Oy 2015 All rights reserved.
http://www.onnelianneli.com/
★2018年11月24日(土)公開
イット・カムズ・アット・ナイト(原題:It Comes at Night)
監督・脚本:トレイ・エドワード・シュルツ
撮影:ドリュー・ダニエルズ
音楽:ブライアン・マコンバー
出演:ジョエル・エドガートン、クリストファー・アボット、カルメン・イジョゴ、ケルビン・ハリソン・ジュニア、ライリー・キーオほか
父ポール(ジョエル・エドガートン)、母サラ(カルメン・イジョゴ)、17歳の息子トラヴィス(ケルビン・ハリソン・ジュニア)の3人は夜にやってくる“それ”の感染に怯えながら森の奥深く、ひっそりと暮らしていた。そこにウィル(クリストファー・アボット)と名乗る男とその家族が、助けを求めてやって来た。ポールは“それ”の侵入を防ぐため「夜、入口の赤いドアは常にロックする」というこの家のルールに従うことを条件に、ウィル一家を受け入れる。交流が増えるにつれ、互いに心を開き、上手く回り始めたかに思えた共同生活だったが、ある夜、赤いドアが開け放たれていたことが発覚。互いへの猜疑心と、迫り来る“それ”への恐怖が、少しずつ2家族の本性を露にし、疑心暗鬼に陥った彼らは、予想だにしない結末へと突き進んでいく―
受け入れた若い家族との穏やかな時間はつかの間。疑念が悲劇の引き金となる。その疑念は二つの家族を分けただけだろうか。自分の家族を守るという強い使命感によって生きてきたポールにとって、家族以外の人間や世界のことは頭にない。外部はすべて脅威。では家族とは? ラストで向き合う家族会議の明らかにされない議題を考えると背筋が凍る。
父ポールを演じるのは、ジョエル・エドガートン。『華麗なるギャツビー』『ブラック・スキャンダル』『レッド・スパロー』などに出演し、主演と長編初監督を務めた『ザ・ギフト』では招かれざる客として主人公を不安に陥れた。本作では若い家族を受け入れることで疑心暗鬼になっていく。(堀)
2017年/アメリカ/英語/カラー/シネスコ/5.1ch/92分
配給:ギャガ・プラス
(C) 2017 A24 Distribution,LLC
https://gaga.ne.jp/itcomesatnight/
★2018年11月23日(金)公開