2018年11月25日

かぞくいろ RAILWAYS わたしたちの出発

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監督:脚本:吉田康弘
撮影:柴崎幸三
音楽:富貴晴美
出演:有村架純(奥薗晶)、國村隼(奥薗節夫)、桜庭ななみ(佐々木ゆり)、歸山竜成(奥園駿也)、木下ほうか(相羽雅樹)、筒井真理子(楠木幸江)、板尾創路(水嶋徹)、青木崇高(奥薗修平)

奥薗晶は夫修平の息子 駿也を連れて鹿児島に向かっている。駿也は前妻の子どもで晶との血の繋がりはないが、3人は睦まじく暮らしていた。修平が友人に騙されたうえ急死してしまい、会ったこともなかった修平の父節夫を訪ねてきたのだった。疎遠だった息子の妻と孫に突然対面した節夫はとまどうが、遺された二人を受け入れぎこちない共同生活が始まる。熊本と鹿児島を結ぶローカル線「肥薩おれんじ鉄道」の運転士を長く勤めてきた節夫は定年間近で引退を考えていたが、人手不足のため慰留を懇願されている。晶は鉄道好きの駿也のため、亡き修平が夢見ていた運転士の試験を受けることにする。

電車をもうひとつの主人公にした「RAILWAYS」シリーズの第3弾。若い晶が急死した夫の連れ子、夫の父親と再出発をはかります。4人をつなぐのが鉄道です。冒頭で鉄道好きの修平と駿也が、晶にうんちくを披露しながら歩道橋の上にいるシーンがありました。いくつもの線路が眼下に見えるきっと鉄道マニアには知られた場所だと思うのですが、どこなんでしょう?
晶が受験を決心して、体験する珍しい現場のシーンや國村さん有村さんの運転のようすなど、鉄道好きには見逃せないのではありませんか?
家族の数だけそれぞれの色がある、というのがタイトルの意味でしょう。多様性を認めるのが開かれた社会のはずですが、凝り固まった意識を変えていくのには時間がかかりそうです。そんな色もちゃんと加えています。主題歌は斉藤和義さんの「カラー」。(白)


2018年/日本/カラー/シネスコ/120分
配給:松竹
(C)2018「かぞくいろ」製作委員会
http://www.railwaysmovie.jp/
★2018年11月23日(金)鹿児島・熊本先行公開、11月30日(金)全国ロードショー
posted by shiraishi at 13:53| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

チェコ・スワン(原題:Czech Swan)

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監督:アレクサドラ・テルピンスカ

チェコの農村に暮らすシニアの女性たち。一仕事終えると、おやつやお酒を持ち寄っては盛大に食べ、飲み、お喋りをして笑いあう。そんな彼女たちのもう一つの楽しみはときどき大勢の前で披露するダンス。このところマンネリになっているので、新しい出し物を考えている。一度は踊ってみたいのは「白鳥の湖」。自分たちにできるのか?と訝りながらも高名な振付師に相談の電話を入れた。みんながそんなに真剣ならば、とプロのバレリーナ、マルケタを指導者として紹介される。

田舎のおばちゃんたちが、憧れのスワンになるべく挑戦するドキュメンタリー。孫娘のようなプリマの指導で、彼女の2倍は体重のありそうなスワン予備軍がダンスのレッスンに励みます。これまでのダンスは民族衣装を着て、ゆったりと踊るシンプルなもの。まったく違うクラシックバレエは無謀だと思うものの、年は取っても好奇心旺盛、楽しむこと優先の彼女たちは意に介しません。いつしかマルケタも親戚のおばちゃんやお婆ちゃんに対するように、親密になってゆきます。52分の中篇。はるか遠くのチェコの美しい風景や、可愛い民族衣装などもお楽しみください。(白)

2015年/ポーランド、チェコ/カラー/シネスコ/52分
配給:コピアポア・フィルム
http://www.czechswan.jp/

★2018年11月24日(土)〜12月7日(金)
劇 場:東京都写真美術館ホール
休映日:11月26日(月)、12月1日(土)、12月3日(月)
上映時間:10:20/11:40
posted by shiraishi at 12:55| Comment(0) | チェコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

家族のはなし

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監督:山本剛義
原作:鉄拳
脚本:青塚美穂
撮影:関毅
音楽:遠藤浩二
出演:岡田将生(拓也)、成海璃子、金子大地、佐藤寛太、水田信二、渡辺憲吉、財前直見(母)、時任三郎(父)、田中レイ(拓也子ども時代)

りんご農家を営む両親のもと、愛情いっぱいに育てられた一人息子の拓也。子ども時代は陸上競技で頭角を現し、周囲の期待にそって上を目指していた。しかし思いがけない大怪我で将来の夢が断たれてしまう。挫折した息子を両親は見守り、東京の大学にいく拓也を黙って送り出す。バンド活動にのめりこんだ拓也はメジャーデビューに夢をかけるが、鳴かず飛ばずでバンドは解散寸前。そんなとき父親が入院したと母からの知らせがあり、急ぎ帰郷する。

原作は、鉄拳が2013年に信濃毎日新聞との企画で発表したパラパラ漫画。りんご農家1本でやってきた父親に時任三郎さん、母親に財前直見さん。おふたりが青春ものに出ている頃から見ているので、こんなに大きな息子の両親役になったんだなぁとしみじみしてしまいました。そんな両親に育てられながら、岡田将生さんの拓也ときたら大学を中退してしまったのに報告もせず、仕送りはそのまま受け取っている始末。せっかく届いたりんごもありがたく思うことはありません。幼馴染ならずとも「全く罰当たり!目ぇ覚まさんかい!」と説教したくなります。身体は大きくなっても気分は子どものまま。それでも、挫折した拓也の心中を知る両親は責めたりしません。親心に泣けます。

ずいぶん前のことですが、りんご農家の方が台風の被害で売り物にならなくなったりんごを、「自宅で食べるのには問題ありません」「1円即決・送料だけ負担してください」と、オークションに出したのに出会ったことがあります。なんの利益もなく手間がかかるだけですが、丹精こめたりんごを誰かに受け取ってほしい気持ちが溢れていました。すまなく思いながら、いくつか申し込みました。自分や友人用のほか、いつも通販でお世話になるお魚屋さんにも1箱贈りました。お魚屋さんに理由を伝え、そちらのお魚をりんご農家さんに贈りたいと頼むと、お魚屋さんがお礼とお見舞いを上乗せして送ってくれて、りんごとお魚があちこちへ回りました(笑)。りんご農家さんとお魚屋さんも喜んでくれて、とても嬉しかったのを思い出します。パソコンの記録が飛んでしまって、今は連絡がつきませんがお元気でいらっしゃるでしょうか。(白)


2018年/日本/カラー/シネスコ/80分
配給:KATSU-do
(C)「家族のはなし」製作委員会
http://kazokunohanashi.official-movie.com/
★2018年11月23日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 11:39| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ギャングース

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監督:入江悠
原作:肥谷圭介、鈴木大介「ギャングース」(講談社モーニング KC 所載)
脚本:入江悠、和田清人
撮影:大塚亮
音楽:海田庄吾
出演:高杉真宙、加藤諒、渡辺大知、林遣都、伊東蒼、山本舞香、芦那すみれ、勝矢、般若、菅原健志、斉藤祥太、斉藤慶太、金子ノブアキ、篠田麻里子、MIYAVIほか

親から虐待され、ろくに学校にも行けず、青春期を少年院で過ごしたサイケ(高杉真宙)・カズキ(加藤諒)・タケオ(渡辺大知)。社会に見放された3人が生き抜くためにつかんだ仕事は、犯罪者だけをターゲットにした“タタキ”(窃盗、強盗)稼業。そんなある日、タタキの最中に偶然にも振り込め詐欺のアガリ(収益金)の隠し場所を知ることとなった3人。それは“半グレ”系アウトローによる犯罪営利組織カンパニーとして台頭する「六龍天」のものだった。「六龍天」に身元がバレないよう、慎重にタタキを繰り返すも、あるきっかけから3人の身元が「六龍天」に知られ、絶体絶命の状況に追い込まれてしまうが・・・

【カンパニー】半グレ系アウトローの人間で構成された、犯罪営利集団。営利を目的としている組織体制の為、仁義や体裁を重んじるヤクザとはその根本が異なる。
【タタキ】窃盗、強盗の隠語。
【半グレ】暴力団に所属せずに犯罪を繰り返す集団のこと。「グレる」、白(堅気)でも黒(ヤクザ)でもない「グレー」などを語源とする。
(以上、公式サイトより)

講談社のコミック「ギャングース」の実写化であるが、その原案となっているのが、ストーリー共同制作者である鈴木大介のルポルタージュ「家のない少年たち」。少年院から出所しても社会で生きる術は犯罪しかないという少年たちの実情が綴られている。しかも、映画化にあたり、入江悠監督は紙ベースの情報だけでなく、本に書かれているような過酷な環境で育った人や児童養護施設をずっと取材してきた監督など10人以上の人に会って話を聞いた上で、脚本を書いた。社会の底辺に生きるしかない少年たちのリアルな姿が映し出されている。
作品が提示する問題は社会の闇を深く見つめたヘビーなものであるが、入江悠監督はエンタメ的要素も盛り込み、少年たちの青春グラフィティともいえる作品に仕上げた。主人公の1人、高杉真宙のパンチもライダーキックも決まらないヘタレぶりには驚愕!「仮面ライダー出身なのにぃ」と思わず叫んでしまった。しかしどんな時も助け合う3人を応援したくなる。仲間の心を癒す加藤諒の変顔は救いのない社会の一服の清涼剤のよう。
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ところで、高杉真宙のこの2年の映画での活躍は目覚ましいものがある。2017年には『PとJK』、『ReLIFE リライフ』、『想影』、『逆光の頃』、『トリガール!』、『散歩する侵略者』と6作品に出演して、『散歩する侵略者』で第9回TAMA映画賞 最優秀新進男優賞、第72回毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞受賞。そして、2018年にも『プリンシパル〜恋する私はヒロインですか?〜』、『世界でいちばん長い写真』、『虹色デイズ』、『君が君で君だ』と4作品に主演、もしくは主要人物として出演し、劇場アニメ「君の膵臓をたべたい」では主人公の「僕」役に声優として参加。東京国際映画祭で特別招待作品としても上映された本作で2018年を締めくくる。そして、来年度もすでに、『十二人の死にたい子どもたち』、『笑顔の向こうに』、『賭ケグルイ』の3作品が春までに公開される。今後も高杉真宙から目が離せない。(堀)


2018年/日本/カラー/シネスコ/120分
配給:キノフィルムズ
(C)2018「ギャングース」FILM PARTNERS (C)肥谷圭介・鈴木大介/講談社
http://gangoose-movie.jp/
★2018年11月23日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほかロードショー
posted by shiraishi at 11:24| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年11月24日

斬、

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監督・製作・脚本・撮影・編集:塚本晋也
音楽:石川忠
出演:池松壮亮、蒼井優、中村達也、前田隆成、塚本晋也ほか

250年にわたり平和が続いてきた国内が、開国するか否かで大きく揺れた江戸時代末期。貧窮して藩を離れ、農村で手伝いをしている浪人の杢之進(池松壮亮)は隣人のゆう(蒼井優)やその弟(前田隆成)たちと、迫り来る時代の変革を感じつつも穏やかに暮らしていた。
ある日、剣の達人である澤村(塚本晋也)が現れ、杢之進の腕を見込んで、京都の動乱に参戦しようと誘いかける。旅立つ日が近づくなか、無頼者(中村達也)たちが村に流れてきた。

人を斬る。この一線を超えられない、腕の立つ若い浪人が極限状態に追い込まれたとき、どうするのか。
江戸時代末期、農家の手伝いをしながら生活する主人公が時代の波に翻弄されながら模索し続ける。
主演の池松壮亮がいい。『散り椿』では頼りなさを感じる役だったが、今作はぐっと大人びた感がある。蒼井優が演じる農家の娘と気持ちは通じ合っていたが、ここでも一線が超えられない。古家の板壁の隙間から手を射し伸ばす。その指先から想いがほとばしる。蒼井優もそれに応える。
塚本晋也が監督・脚本・撮影・編集・出演を兼ねる。殺戮シーンはグロいと言えるかもしれないが、それを越えて訴えてくるものがある。(堀)


2018年/日本/アメリカンビスタ/5.1ch/80分
配給:新日本映画社
(C) SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER
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★2018年11月24日(土)より渋谷・ユーロスペースほか全国公開
posted by shiraishi at 02:26| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする