2018年10月21日
ガンジスに還る 原題:Mukti Bhawan 英題:HOTEL SALVATION
監督・脚本:シュバシシュ・ブティアニ
出演:アディル・フセイン、ラリット・ベヘル、ギータンジャリ・クルカルニ、
バロミ・ゴーシュ
77歳になる父ダヤ。息子夫婦と孫娘と食卓を囲んでいる時に、「死期が近づいたのを感じている。明日、牝牛を寄進し、明後日にはバラナシに行く」と宣言する。ガンジス河の畔の聖地バラナシの「解脱の家」で人生の最期を迎えたいというのだ。一人で行かせるわけにもいかず、息子ラジーヴは仕方なく会社を休み付き添っていく。
「解脱の家」では、安らかな死を求める人々が規則を守りながら、思い思いに過ごしている。解脱できなくても滞在期間は15日までだ。12日目、ラジーヴの妻ラタと孫娘スニタが会いに来る。まだ元気なダヤの姿に安心し帰っていく二人。一方、会社を休み顧客を逃したことが気になるラジーヴ。15日目になり、別名で滞在を延長できると知ったダヤは息子に「象は死期が近づくと群れを離れる」と語り、ラジーヴを帰宅させる・・・
解脱の家で息子と二人で過ごしていた父は、息子に「お前は詩をそれはそれはよく書いていたのに、才能を伸ばしてやれなかった」と謝ります。また、結婚式を間近にした孫娘が結婚に乗り気でないことを察したダヤは、「心のおもむくままに生きなさい」と語りかけます。自身の人生を振り返って、今にして悟る、こうすればよかったというダヤの思いが胸に切々と迫ります。
ラジーヴが散歩している時に、薪がうず高く積まれた場所を通ります。充分な量の薪が買えないと、火葬しても灰にならなくて形のあらわな骨をガンジスに流すことになるそうです。「バラナシとガンジス河、どちらが神聖?」という問いに、「ガンジスなら近くでも拝める」と答える場面があります。ヒンドゥー教徒にとって、バラナシで人生の最期を迎え、ガンジスに流してもらうことが最高の幸せなのだなぁと思いました。
ガンジス河を眺めながら、溶けそうなアイスクリームを家族で食べる場面がなんとも愛おしいです。しみじみと味わい深い一作です。(咲)
死期を悟り解脱を求める父と、その父に付き添いながらも携帯が手放せない息子。世俗の垢にまみれた息子の姿が他人事には思えない。親に感謝の気持ちはあるものの、言いたい文句もたくさんある。最期を前にぶつけたことで、お互いの気持ちを分かり合う。
死をテーマにした作品だが、重苦しさはない。監督自らバラナシに行き、解脱の施設を回ってリサーチし、バラナシで死を迎えたい人の願いは家族と一緒に来ることだと気がついたことがきっかけで物語を作ったという。2人が過ごす最期の時間を丁寧にすくい取る。弱冠27歳の監督とは思えない手腕に脱帽である。(堀)
2016年ヴェネチア国際映画祭 エンリコ・フリキニョーニ賞
2016年/インド/99分/シネスコ
配給:ビターズ・エンド、協力:エア インディア
公式サイト:http://www.bitters.co.jp/ganges/
★2018年10月27日(土)より、岩波ホールほか全国順次公開!
search サーチ(原題:Searching)
監督:アニーシュ・チャガンティ
脚本:アニーシュ・チャガンティ
セブ・オハニアン
出演:ジョン・チョー(デビッド・キム)
デブラ・メッシング(ヴィック捜査官)
ジョセフ・リー(ピーター)
ミシェル・ラー(マーゴット)
デビッドは妻に先立たれて、16歳の娘マーゴットとふたり暮らし。思春期の娘の扱いに戸惑う毎日だが、正しく躾けているつもりだった。しかし、マーゴットが出かけたまま帰宅せず、心当たりに連絡しても行き先がわからない。警察に行方不明として届け出るが、家出か、事件か確定できないまま時間がたっていく。やり手らしい女性捜査官ヴィックに力づけられて、手がかりになるものを探す。マーゴットのパソコンを開いたデビッドは、そこに全く知らなかった娘の姿を見い出して愕然とする。
始まりからラストまで、全編がパソコンの中だけで展開していく。いやはやこんな映画初めてです。でもこれだけパソコンやSNSが普及したら「あり」です。いち早く目をつけて作ってしまった監督&クルーのみなさんに脱帽。アニーシュ・チャガンティ監督は1991年生まれ、27歳の新鋭で、しかも初長編です。うーん、すごい!アイディアだけではなく、サスペンスドラマとしてもよく作られていて、ラストまでぐいぐい引っ張ります。
お父さんのデビッド役は、『スタートレック』シリーズ(2009〜)のエンタープライズ号の主任パイロット、スールー役で世界的にブレイクしたジョン・チョー。HPも映画にあわせて作られていて面白いですよ。2018年サンダンス映画祭観客賞受賞。(白)
連絡が取れなくなった娘を探すため、父はSNSを駆使する。それによってわかる外での娘の様子。一番近くにいるつもりが何もわかっていなかった親子の距離感が浮かび上がってくる。しかし、SNSで見せる顔は本物か。パソコンの向こうにいる存在に父親が違和感を持つ。最後のどんでん返しに驚き、ほっとするラストに後味の良さを感じた。
パソコンの画面に畳みかけるようにいくつものウインドウが出てきて話が展開する。新しい試みは緊迫感たっぷり。アメリカの作品に監督がインド人で、主演が韓国人。そういう時代になったんだと改めて感じた。(堀)
2018年/アメリカ/カラー/シネスコ/102分
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
http://www.search-movie.jp/
★2018年10月26日(金)ロードショー
Workers 被災地に起つ
監督:森康行
企画:田中羊子,横山哲平
ナレーター:山根基世
ワーカーズコープ(協同労働の協同組合)は、1971年に西宮市で発足した「失業者・中高年者」の仕事づくりをめざす「事業団」が始まりだそうです。それから名称や事業内容も変化してきました。ワーカーズコープでは働く人や市民が出資者となり、意見を出し合い話し合って運営していきます。みんなが労働者であり、経営者でもあります。
そのしくみと各地での実際の活動を紹介したのが、2013年の『Workers』森康行監督。本作は第2弾として、東北被災地でのワーカーズコープの取り組みを22ヵ月間にわたって記録したドキュメンタリー。
もう何10年も前に生協の委員があたった(?)ことがあります。ろくに活動しないうちに引越しが決まって、それからは近所のコープを買い物で利用するのみ。コープといってもこういう「働きかたのコープ」があったとは今回初めて知りました。東日本大震災の後の被災地で「一人ひとりの願いと困った」から始まった仕事おこしは小さな湧き水が、小さな流れになるように少しずつ広がっていきます。決して大きくなりすぎず、声が届く範囲で。集まった人たちの輪の中で、話し合いが深まっていくようすに胸が温かくなりました。
生き辛い人、困難な環境にある人の願いや困りごとを相談できる場があり、それが一つずつ叶えられ、解決できるようにみんなが考える。
教室に貼ってあった言葉を思い出します。「ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために」これは「三銃士」の中に出てくることば 「One for All, All for one」が元のようです。ほんとは「共生」の意味でなく「みんなは勝利のために」らしいんですけど、みんなはひとりのためにのほうが優しくていいです。政治家のみなさま忘れないで。一人=1票は選挙のために、じゃありません。(白)
ワーカーズコープHP http://www.roukyou.gr.jp/jwcu/
2018年/日本/カラー/HD/16:9/89分
配給:一般社団法人 日本社会連帯機構
日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会
(C)日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会センター事業団
http://workers2-movie.roukyou.gr.jp/
★2018年10月20日(土)ロードショー
オズランド 笑顔の魔法おしえます。
監督:波多野貴文
脚本:吉田恵里香
原作:小森陽一「オズの世界」(集英社文庫刊)
出演:波瑠、西島秀俊、岡山天音、深水元基、戸田昌宏、朝倉えりか、久保酎吉、コング桑田、中村倫也、濱田マリ/橋本愛/柄本明
22歳の波平久瑠美(波瑠)は、彼のトシ君(中村倫也)と同じ超一流ホテルチェーンに就職。大学を卒業して、晴れて同じ職場で働けると楽しみにしていたのに、配属されたのは地方にある系列遊園地グリーンランド。ふてくされながら任地に赴き初出勤すると、いきなり園内の緊急事態。同期入社の吉村(岡山天音)と共に、爆発物の入った紙袋を遠くに持ち出すよう命じられる。これは実は新入社員への通過儀礼。ヒーローショーの舞台に誘導された二人は拍手喝采をあびる。「あり得ない」と、トシ君に電話して愚痴をこぼすと、優秀社員MVPになれば本社に戻れると励まされる。
MVP目指して張り切る久瑠美なのに、上司の小塚慶彦(西島秀俊)からは新入りの吉村と共に園内のゴミ拾いを命じられ、不本意だ。だが、ようやくゴミ拾いが園内のことを把握するためという小塚の意図だったと悟り、小塚が皆から“魔法使い”と呼ばれ慕われていることも納得する。仕事にやりがいを感じて楽しくなってきた久瑠美は、小塚に憧れとも淡い恋心ともいえない気持ちを持ち始める。夏休みの最大イベント、一万発の花火大会を前に、久瑠美は小塚の秘密を知ってしまい、なんとしてでも花火大会を成功させなければと誓う。
ちょっとダサいおじさん風の西島秀俊さんですが、ご自身の演出だとか。家族の思い出づくりにかかせない遊園地。それを下支えする人たちの思いがじわ〜っと伝わってくる物語です。
高級ホテルに就職したはずなのに、遊園地に配属され、そのギャップに戸惑う新入社員の久瑠美。これまた、多くの人が経験していることでしょう。与えられた場で、自分の生き甲斐を見つけていく姿が素敵です。
原作は、小森陽一の人気小説「オズの世界」。熊本県に実在する遊園地「グリーンランド」がモデルで、小説での遊園地名は「東洋スーパーワンダーランド」。映画は、実際に「グリーンランド」で撮影が行われ、遊園地の名前も制服もそのまま使われています。
子どもの頃、四季折々に両親に連れていってもらった宝塚ファミリーランドのことを思い出したひと時でした。(咲)
思いもよらない人事に不満いっぱいの新人社員が仕事を通じて成長する姿を描く。主人公の波平久瑠美を演じるのは波瑠。原作者の小森陽一が最初から波瑠をイメージして書き、その思いが名前にも表れている。その波平の上司、小塚に西島秀俊。『MOZU』シリーズなどのクールな役から一変して、三枚目をコミカルに演じる。こんな西島秀俊、見たことがない! また同僚・玉地役の橋本愛もいつものイメージと比べてテンション高め。熊本県出身の橋本愛の地元愛の現れだろうか。元気のお裾分けがもらえた気分になる。
ゴミ集めなどの新人仕事を適当に済ませて、企画の立案に勤しむ波平。もう一人の新人、吉村は愚直に取り組む。2カ月後にその差が如実に表れる。どんな仕事にも意味があり、そこから学ぶことがある。これに気づけるかどうかが、人としての分かれ道なのかもしれない。波平にとって不本意だった人事も、人生を考えたときには大きなチャンスだったのだ。
「こんなことして意味あるの?」と愚痴りたくなるときこそ、大きく羽ばたくチャンスなのだと作品は教えてくれた。(堀)
2018年/日本/105分
配給:HIGH BROW CINEMA、ファントム・フィルム
(C)小森陽一/集英社(C)2018 映画「オズランド」製作委員会
公式サイト:http://ozland.jp/
★2018年10月26日(金)より TOHO シネマズ日比谷ほか全国ロードショー
ザ・アウトロー(原題:Den of Thieves)
監督:クリスチャン・グーデガスト
製作:ライアン・カヴァナー、マーク・キャントン
脚本:クリスチャン・グーデガスト、ポール・シェアリング
出演:ジェラルド・バトラー、パブロ・シュレイバー、オシェア・ジャクソン・Jr、カーティス”50 セント”ジャクソン
ロサンゼルス郡保安局の重犯罪特捜班を率いるニック(ジェラルド・バトラー)は、恐ろしいほど冷静なレイ・メリーメン(パブロ・シュレイバー)が率いる集団が銀行強盗を企てていることを突き止める。彼らは特殊部隊に従軍したことがあり、刑務所で刑期を終えたばかりの強者揃い。連邦準備銀行のロサンゼルス支店を襲い、米国通貨として不適当な3000万ドルがシュレッダーにかけられる前に強奪する計画を立てていた。ニックたちはメリーメンたちを少しずつ追い詰めるが、ドラマは予想しない結末へと進展していった。
作品冒頭の説明では、ロサンゼルスでは48分に1回、銀行強盗が発生しているという。想像できないレベルの危険性に驚いていると、さっそく派手な銃撃戦が始まった。緊張感あふれるスタートに期待が高まる。
そこに登場するのが、ロサンゼルス郡保安局特別班を率いるニック。「これでも刑事?」というワイルドなアウトローぶりをジェラルド・バトラーがヤニ臭さ満載に体現する。武闘派の印象だ。一方、強盗集団リーダー・メリーメンは「非武装の民間人は撃つな」と厳命し、人を傷つけずにミッションの完遂を目指す。こちらはむしろ知性が感じられる。
ニックたちは強盗集団の銀行襲撃計画を阻止するために奔走するが、メリーメンは先手先手でかわす。本能と知能の対決である。この過程で双方のバックボーンがしっかり描かれ、ただのクライムアクション作品とは一線を画す。
ラストの派手な銃撃シーンは一騎打ちにもつれ込むが、矜持をかけた戦いに胸が熱くなった。
ところが本作はそこでは終わらない。伏線をきっちり回収。まさかの勝者に驚くとともに、気持ちよく騙されたと爽快さが残るだろう。(堀)
2018年/アメリカ/カラー/140分
配給:プレシディオ
(C) Motion Picture Artwork (C) 2017 STX FINANCING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
https://the-outlaw.jp/
★2018年10 月 20 日(土)新宿バルト9ほか 全国ロードショー
マイ・プレシャス・リスト(原題:CARRIE PILBY)
監督:スーザン・ジョンソン
原作:カレン・リスナー(Caren Lissner)著(2003年)
出演:ベル・パウリー、ガブリエル・バーン、ネイサン・レイン、ヴァネッサ・ベイアー、ジェイソン・リッター、ウィリアム・モーズリー、コリン・オドナヒュー
ニューヨークのマンハッタンで暮らすキャリー(ベル・パウリ―)はIQ185、ハーバード大学を飛び級で卒業した天才だが、友達も仕事も持たず、読書ばかりしている【コミュ力(りょく)】ゼロの屈折女子。話し相手はセラピストのペトロフ(ネイサン・レイン)だけ。ある日彼はキャリーにリストを渡し、そこに書かれた6つの課題を1か月間でクリアするように告げる。「何のために?」「それで問題はすべて解決するの?」半信半疑ながらも、まずは金魚を2匹飼い始め、昔好きだったチェリーソーダを飲み、新聞の出会い広告でデート相手を探し…と1つずつ項目を実行していくキャリー。そして、人と関わり打ち解けたり傷ついたりする中で、徐々に自分の変化に気づいていく。キャリーは果たしてリストを全てクリアして、幸せを手にすることができるのか――?
セラピストがキャリーに出した課題は次の6つ。
・ペットを飼う
・子供の頃に好きだったことをする
・デートに出かける
・友達を作る
・一番お気に入りの本を読む
・誰かと大晦日を過ごす
こんなことで本当に幸せになれるのか。疑問を感じるキャリーだが、人と関わるうちに仲間と呼べる存在を得て、多様な価値観を受け入れられるようになっていく。キャリーを演じたベル・パウリーはストーリーが進むにつれて笑顔が増え、感情表現も豊かに。これも人と関わるようになったからか。一人でいたら笑えない。「ちょっとやってみようかな」という気がしてくる。
ところで、キャリーが人とコミュニケーションが取れないのは、すべて本人のせいだろうか。IQが高く、飛び級でハーバード大学を卒業した天才は私たちとは違うと、こちらも壁を作っているのかもしれない。多様な価値観の受け入れが必要なのは私たちにもいえること。誰に対してもフラットな気持ちを持つことがコミュニケーションの基本と、作品は見ている者にも気づきを与えてくれる。(堀)
2016/アメリカ/英語/カラー/ビスタ/98分
配給:松竹
(C) 2016 CARRIE PILBY PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED. http://my-precious-list.jp/
★2018年10月20日(土)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー
テルマ (原題:THELMA)
監督・脚本:ヨアキム・トリアー
出演:エイリ・ハーボー、カヤ・ウィルキンス、ヘンリク・ラファエルソン、エレン・ドリト・ピーターセン
ノルウェーの人里離れた田舎町で、信仰心が深く抑圧的な両親のもとに育った少女テルマ。なぜか彼女には、幼少期の記憶がない。オスロの大学に通うため一人暮らしを始めたテルマは、同級生のアンニャと初めての恋におちる。募る欲望と罪の意識に引き裂かれながらも、奔放な彼女に強く惹かれていくテルマ。だが、それは封印されたはずの“恐ろしい力”を解放するスイッチだった―。 テルマは不可解な発作に襲われるようになり、その度に周りで不気味な出来事が起こる。そんな中、アンニャが忽然と姿を消してしまう。果たして、テルマの発作とアンニャ失踪の関係は? 両親が隠し続けてきたテルマの悲しき過去が明かされる時、自分すら知らない“本当の自分”が目覚め始める―。
父が幼い娘に銃を向ける。作品冒頭から不穏な空気が漂う。大学生になった少女にてんかんの発作が起こると、人知を超えた能力が目覚め、北欧の風景をスタイリッシュに切れ割くように怪奇現象が現れる。少女は神か、悪魔か。じわじわと蝕むように広がる不安感。静謐な不気味さが画面を支配する。抑圧的な親から解放された本人的ハッピーエンドの先に阿鼻叫喚の修羅場が見えた。(堀)
2017 年/ノルウェー・フランス・デンマーク・スウェーデン/カラー/シネスコ/5.1ch デジタル/116 分
配給:ギャガ・プラス
(C) PaalAudestad/Motlys
https://gaga.ne.jp/thelma/
★2018年10 月 20 日(土) YEBISU GARDEN CINEMA、ヒューマ ントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
ごっこ
監督:熊澤尚人
原作:「ごっこ」小路啓之(集英社ジャンプコミックス デラックス刊)
脚本:熊澤尚人・高橋泉
撮影:今村圭佑
照明:織田誠
音楽:安川午朗
出演:千原ジュニア、優香、平尾菜々花、ちすん、清水富美加、秋野太作、中野英雄、石橋蓮司
大阪の寂れた帽子店には、40歳目前にも関わらずニートの城宮と、5歳児・ヨヨ子の親子が仲睦まじく暮らしていた。
実はこの二人、他人に知られてはいけない秘密を抱えた親子だった。
十数年ぶりに城宮が実家に戻ったことを知る幼馴染で警察官のマチは、突如現れたヨヨ子に疑いの目を向ける。
ごっこ生活のような不安定な二人のその日暮らしはある日突然、衝撃の事実によって崩壊してしまう……。
社会から孤立していたニートな男性が守らなくてはいけない存在を得たことで変わっていく。ただ、行き過ぎた責任感が悲劇をもたらすことに。幼児虐待、年金の不正受給、ひとり親の子育てなどの社会問題がうまく盛り込まれている。子役の平尾菜々花ちゃんの目力に圧倒された。主演の千原ジュニアは始終不機嫌だが、最後に見せた笑顔に救われる。清水富美加が出演していたとは!(堀)
2017/日本/カラー/5.1ch/ビスタサイズ/114分
配給:パル企画
(C) 小路啓之/集英社 (C)2017楽映舎/タイムズ イン/WAJA http://gokko-movie.jp/
★2018年10月20日(土)より、ユーロスペースほか全国順次ロードショー
恋のしずく
監督:瀬木直貴
脚本:鴨義信
主題歌:和楽器バンド「細雪」
出演:川栄李奈、小野塚勇人、宮地真緒、中村優一、蕨野友也、西田篤史、東ちづる、津田寛治、小市慢太郎、大杉漣
東京の大学でワインソムリエを目指す“日本酒嫌い”のリケジョ・橘詩織(川栄李奈)の実習先は、意に反して東広島・西条の日本酒の酒蔵に決まる。この実習単位が取得できないとワインの本場フランスでの海外留学への道も閉ざされてしまう。渋々実習先の乃神酒造へ訪れた詩織だったが、今年は実習生の受け入れ予定はないと言われる。実は、蔵元(大杉漣)が受け入れを断ったにも関わらず、息子である莞爾(小野塚勇人)が父親への反抗心から勝手に進めていたのだった。どうしても単位が欲しい詩織は食い下がり、酒蔵で修行に近い「実習」が始まった。人々との出会いや日本酒造りを通じて、今までにない喜びを見出す詩織。そんな時、蔵元の体調が急変し、思わぬ転機が訪れる。詩織は好きになった日本酒、西条の街や人々、そして思いがけず抱いた莞爾へのほのかな思いをどう決断していくのかー。
主演は川栄李奈。2018年だけでも『嘘を愛する女』『プリンシパル 恋する私はヒロインですか?』『センセイ君主』とすでに3本の作品に出演し、この後も『人魚が眠る家』の公開が控えているなど最近の活躍が目覚ましいが、意外にも本作が初主演作だという。瀬木直貴監督は憑依型の女優と評し、全幅の信頼を寄せている。日本酒嫌いでワイン好きのリケジョが酒蔵へ実習に行き、日本酒の魅力に気づいていく姿を伸びやかに演じた。
日本酒は温度、合わせる料理により、その美味しさは何倍にもなる。フレンチにはワインというのも思い込み。銘柄を選べば、日本酒でも合う。作品の中で主人公が美味しさに驚いた「熱燗にトンカツ」の組み合わせは試したくなった。瀬木直貴監督はこれまでもラーメン、唐揚げといった生活に根差した食材をテーマに取り上げてきたが、今回も日本酒について綿密なリサーチが行われていたのを感じる。
ストーリーは蔵元の父と息子の確執にも焦点にあてている。反発する息子を陰で認める父に、本作が遺作となった大杉漣。(堀)
2018年/日本/カラー/100分
配給:ブロードメディア・スタジオ
(C) 2018「恋のしずく」製作委員会 http://koinoshizuku.com/
★2018年10月20日(土)全国ロードショー
脚本:鴨義信
主題歌:和楽器バンド「細雪」
出演:川栄李奈、小野塚勇人、宮地真緒、中村優一、蕨野友也、西田篤史、東ちづる、津田寛治、小市慢太郎、大杉漣
東京の大学でワインソムリエを目指す“日本酒嫌い”のリケジョ・橘詩織(川栄李奈)の実習先は、意に反して東広島・西条の日本酒の酒蔵に決まる。この実習単位が取得できないとワインの本場フランスでの海外留学への道も閉ざされてしまう。渋々実習先の乃神酒造へ訪れた詩織だったが、今年は実習生の受け入れ予定はないと言われる。実は、蔵元(大杉漣)が受け入れを断ったにも関わらず、息子である莞爾(小野塚勇人)が父親への反抗心から勝手に進めていたのだった。どうしても単位が欲しい詩織は食い下がり、酒蔵で修行に近い「実習」が始まった。人々との出会いや日本酒造りを通じて、今までにない喜びを見出す詩織。そんな時、蔵元の体調が急変し、思わぬ転機が訪れる。詩織は好きになった日本酒、西条の街や人々、そして思いがけず抱いた莞爾へのほのかな思いをどう決断していくのかー。
主演は川栄李奈。2018年だけでも『嘘を愛する女』『プリンシパル 恋する私はヒロインですか?』『センセイ君主』とすでに3本の作品に出演し、この後も『人魚が眠る家』の公開が控えているなど最近の活躍が目覚ましいが、意外にも本作が初主演作だという。瀬木直貴監督は憑依型の女優と評し、全幅の信頼を寄せている。日本酒嫌いでワイン好きのリケジョが酒蔵へ実習に行き、日本酒の魅力に気づいていく姿を伸びやかに演じた。
日本酒は温度、合わせる料理により、その美味しさは何倍にもなる。フレンチにはワインというのも思い込み。銘柄を選べば、日本酒でも合う。作品の中で主人公が美味しさに驚いた「熱燗にトンカツ」の組み合わせは試したくなった。瀬木直貴監督はこれまでもラーメン、唐揚げといった生活に根差した食材をテーマに取り上げてきたが、今回も日本酒について綿密なリサーチが行われていたのを感じる。
ストーリーは蔵元の父と息子の確執にも焦点にあてている。反発する息子を陰で認める父に、本作が遺作となった大杉漣。(堀)
2018年/日本/カラー/100分
配給:ブロードメディア・スタジオ
(C) 2018「恋のしずく」製作委員会 http://koinoshizuku.com/
★2018年10月20日(土)全国ロードショー
ウスケボーイズ
監督:柿崎ゆうじ
原作:河合香織『ウスケボーイズ 日本ワインの革命児たち』小学館
脚本:中村 雅
撮影:北 信康(J.S.C.)
照明:渡部 嘉
録音:小林圭一
美術:泉 人士
編集:神谷 朗
音楽:西村真吾
出演:渡辺 大、出合正幸、内野謙太、竹島由夏、金子 昇、寿大 聡、須田邦裕、上野なつひ、升 毅、萩尾みどり、清水章吾、岩本多代、柴 俊夫、田島令子、小田島 渚、大鶴義丹、 柳 憂怜、伊吹 剛、和泉元彌、伊藤つかさ、安達祐実、橋爪
岡村(渡辺大)、城山(出合正幸)、高山(内野謙太)、上村(竹島由夏)、伊藤(寿大聡)は「ワイン友の会」の仲間で、集っては世界中のワインを嗜んで蘊蓄を語り合っていた。
ある夜、日本のぶどうを使ったワインがフランスワインより美味しいはずがないと決めつけていた彼らは、仏vs日本ワインでブラインドのテイスティング会を開催する。予想は外れ、世界に通用する「桔梗ヶ原メルロー」の存在を知った彼らは、この世界レベルのワインを生んだ麻井宇介(橋爪功)に憧れ、ワイン用のぶどう栽培は困難と言われたこの日本の地で麻井の思想を受け継ぎながら常識を覆すワイン造りに没頭していく。しかし、ぶどう畑は大雨・雹・病害などに見舞われ・・・。果たして、日本のワインに革命を起こすことはできるのか? 実話をもとに描かれたウスケボーイズの物語。
世界に通用する日本ワインに出会った若者達が、そのワインを作った麻井宇介の思想を受け継ぎ、ワイン造りに打ち込んでいく。妥協を許さない者、家族の支えを受けるがゆえに責任が重くのしかかる者、道半ばで袂を分かつ者。ウスケボーイズと呼ばれる彼らには、それぞれの苦労が待っていた。しかし、ワインができ上がったときの喜びやおいしさは格別。また、ウスケボーイズを支える家族の存在も大きい。親が子を思う気持ちに思わず泣ける。
本作は「マドリード国際映画祭2018」にて最優秀作品賞、最優秀主演男優賞を受賞。
「アムステルダム国際フィルムメーカー映画祭2018」にて、最優秀監督賞、最優秀主演男優賞を受賞し、見事4冠を獲得。同作品で国際映画祭の主演男優賞2冠は、“初”として、注目を集める。
「ミラン国際フィルムメーカー映画祭2018」にて外国語映画部門最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀主演男優賞、最優秀助演男優賞、最優秀編集賞の5部門がノミネートされている。(堀)
2018年/102分/シネスコ/5.1ch
配給:カートエンターテイメント
(C) 河合香織・小学館(C)2018 Kart Entertainment Co., Ltd. http://usukeboys.jp/
★2018年10月20日(土)より新宿武蔵野館ほか全国ロードショー