2018年10月06日
教誨師
監督・脚本:佐向大
エグゼクティブプロデューサー:大杉漣 狩野洋平 押田興将
プロデューサー:松田広子
撮影:山田達也
照明:玉川直人
録音:山本タカアキ
美術:安藤真人
出演:大杉漣、玉置玲央、烏丸せつこ、五頭岳夫、小川 登、古舘寛治、光石 研
プロテスタントの牧師、佐伯保(大杉漣)。彼は教誨師として月に2回拘置所を訪れ、一癖も二癖もある死刑囚と面会する。無言を貫き、佐伯の問いにも一切応えようとしない鈴木(古舘寛治)。気のよいヤクザの組長、吉田(光石研)。年老いたホームレス、進藤(五頭岳夫)。よくしゃべる関西出身の中年女性、野口(烏丸せつこ)。面会にも来ない我が子を思い続ける気弱な小川(小川登)。そして大量殺人者の若者、高宮(玉置玲央)。佐伯は、彼らが自らの罪をしっかりと見つめ、悔い改めることで残り少ない“ 生” を充実したものにできるよう、そして心安らかに“ 死” を迎えられるよう、親身になって彼らの話を聞き、聖書の言葉を伝える。しかしなかなか思い通りにはいかず、意図せずして相手を怒らせてしまったり、いつまで経っても心を開いてもらえなかったり、苦難の日々が繰り返される。それでも少しずつ死刑囚の心にも変化が見られるものの、高宮だけは常に社会に対する不満をぶちまけ、佐伯に対しても一貫して攻撃的な態度をとり続ける。死刑囚たちと真剣に向き合うことで、長い間封印してきた過去に思いを馳せ、自分の人生とも向き合うようになる佐伯。そんな中、ついにある受刑者に死刑執行の命が下される。
<教誨師(きょうかいし)>
刑務所や少年院等の矯正施設において、被収容者の宗教上の希望に応じ、所属する宗教・宗派の教義に基づいた宗教教誨活動(宗教行事、礼拝、面接、講話等)を行う民間の篤志の宗教家である。
平成29年末現在の矯正施設における教誨師の人数は約2,000名であり、そのうち仏教系が約66パーセント、キリスト教系が約14パーセント、神道系が約11パーセント、諸教が約8パーセントとなっている。(公式サイトより引用)
年齢や境遇、性格の異なる6人の死刑囚との対話が閉ざされた空間で次々と繰り広げられる。話を聞くのは教誨師に着任したばかりの牧師、佐伯保。彼らの話に真摯に耳を傾け、心を開かせていく。その佐伯保を演じるのが大杉漣。本作は最後の主演作であり、また唯一のプロデュース作である。光石研、烏丸せつこ、古舘寛治といったベテラン俳優や劇団“柿喰う客”の玉置玲央らが演じる一癖も二癖もある死刑囚を受けの演技でより際立たせた。
実は佐伯も封印してきた過去を持つ。教誨をすることで、自身の過去と向き合うことに。やがて教誨師としての自分の存在意義さえ問い始める。そんなとき、死刑囚の1人の執行が決まり、佐伯は最期に立ち会う。精神的な負担の大きい仕事である。
世界各国で次々と廃止されている死刑。今まだ存続する死刑制度に対して何かを声高に訴える作品ではないが、あなたはどう思うかと問われている気がしてくる。見終わったあと、すぐには席が立てない。(堀)
2018年/日本/カラー/スタンダード(一部、ヴィスタ)/114分/ステレオ
配給:マーメイドフィルム、コピアポア・フィルム
(C)「教誨師」members?
http://kyoukaishi-movie.com/
★2018年10月6日(土)より、有楽町スバル座、池袋シネマ・ロサ他にて全国順次公開
ブレイン・ゲーム(原題:Solace)
監督・脚本:アフォンソ・ポイアルチ
脚本:ショーン・ベイリー、テッド・グリフィン
音楽:ブライアン・トランソー
出演::アンソニー・ホプキンス、ジェフリー・ディーン・モーガン、アビー・コーニッシュ、コリン・ファレル
FBI特別捜査官のジョー・メリウェザー(ジェフリー・ディーン・モーガン)と若き相棒捜査官(アビー・コーニッシュ)は、連続殺人事件の捜査に行き詰まり、元同僚のアナリスト兼医師ジョン・クランシー博士(アンソニー・ホプキンス)に助けを求める。博士は隠遁生活を送っていたが事件に特別の感情を抱き、容疑者のチャールズ・アンブローズ(コリン・ファレル)を追跡していく。博士は並外れた予知能力の持ち主だったが、この殺人犯は博士以上の能力をもっているのだった。
連続殺人事件が発生する。未来や過去が見える能力を持つ医学博士は被害者がみな重篤な病気を患っていることに気づく。犯人の動機は病気で苦しむ前に行う慈悲殺人ではないか。博士の娘は白血病で苦しみながら亡くなった。医者でありながら、見守るしかなかった博士は犯人に取り込まれそうになる。しかし、それは本当に慈善なのか。死は誰にでも訪れる。残された生をどう生きるのかを決めるのは本人でしかない。(堀)
2015 年/アメリカ/スコープ/101 分/5.1ch
配給:ポニーキャニオン
(C)2014 SUPERSENSORY, LLC
http://braingame.jp/
★2018年10月6日(土)新宿武蔵野館ほか全国順次公開
フィフティ・シェイズ・フリード(原題)Fifty Shades Freed
監督:ジェームズ・フォーリー
脚本:ナイオール・レナード
原作:E L ジェイムズ(早川書房刊)
出演:ダコタ・ジョンソン、ジェイミー・ドーナン、エリック・ジョンソン、リタ・オラ、マーシャ・ゲイ・ハーデン
アナ(ダコタ・ジョンソン)とクリスチャン・グレイ(ジェイミー・ドーナン)は数々の困難を乗り越えて結婚。幸せな日々を過ごしていた。しかし、過去のある出来事がきっかけで、命を脅かされるような事件に巻き込まれることになる。その事件にはアナが勤めている出版社で元上司だったジャック・ハイド(エリック・ジョンソン)が関わっていた。当時、アナを誘惑しようとしていたジャックに腹を立てたクリスチャンがその出版社を買収してジャックを解雇。ジャックはクリスチャンを逆恨みしていた。しかも、ジャックとクリスチャンにはそれ以前から繋がりがあったのだ。ジャックはさまざまな手を使って2人の幸せに襲い掛かってくる。
1作目で、大学生だったアナは若くして巨万の富を手にしていた超絶イケメンCEOのクリスチャン・グレイと学生新聞の取材を通じて運命的な出会いを果たす。アナとの秘密の刺激的な関係をより強く求めるクリスチャンに対して、彼の歪んだ愛の形を受け入れられないアナは、一旦は彼の元を去っていく。その後も求め合う気持ちが絶えることがなかった2人は2作目で再び結ばれ、快楽以上の”愛情”を感じるようになっていった。
本作は3部作の最終章。2人の眩いばかりの結婚式からスタートする。全てがゴージャス!愛しているからこそ管理したい男。自由がほしい女。その匙加減は夫婦ごと違う。サスペンスフルな危機を乗り越えた先に2人が見つけた答えは、男が本当に望んでいたものかもしれない。(堀)
2017年/アメリカ/スコープサイズ/105分
配給:東宝東和
(C)2017 UNIVERSAL STUDIOS
https://fiftyshadesmovie.jp/
★2018年10月5日(金)全国ロードショー
モンスターストライク the movie ソラノカナタ
監督:錦織博
声の出演:窪田正孝、広瀬アリス、山寺宏一、細谷佳正、悠木碧
13年前、東京は空中都市”旧東京”と地上に残った”新東京”とに分断された。
地上の新東京で生まれ育ったカナタ(窪田正孝)には、右手に時々光るアザがあり、その不思議なアザの持つ意味を知りたいと思いながら日々を暮らしていた。そこに旧東京から青い髪のソラという少女がやってくる。ソラ(広瀬アリス)は「旧東京は地上に落ちる。世界を救えるのはあなたしかいない」と言い、カナタを旧東京へ連れて行く。カナタはそこで、ヴァンパイアの兄弟を始め多くのモンスターと出会う。そして、命と引き換えにタブーとされていた闇の力に手を染め、旧東京を落下させようとするセンジュ(山寺宏一)の暴走を止めるため、モンスターたちと共に戦い始める。
モンスターストライクは世界累計利用者数が4500万人を超えるスマートフォンアプリ。そのモンスターストライクを元にしたオリジナルストーリーの長編映画第二弾。前作『モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所』は少年たちのロードムービーだったが、本作はゲームさながらのアクションシーンたっぷり。ゲームのキャラクターも登場するが、ゲーム、アニメが未経験でも楽しめる。カナタとソラを窪田正孝と広瀬アリスが担当。プレスコ初挑戦ながら、声が役に溶け込んでいた。
大切な誰かを守りたい。その思いが人を強くする。その一方、大事なものを守るために他のものを犠牲にしてしまうことも。何が正義なのかを問う。作品内でモンスターを襲う穢れとは人の心に巣食う闇か。(堀)
2018年/97分
配給:ワーナー・ブラザース映画
(C) XFLAG https://anime-movie.monster-strike.com/
★2018年10月5日(金)全国ロードショー
曙光
監督・脚本・撮影:坂口香津美
プロデューサー:落合篤子
出演:黒沢あすか(文絵)、森山太、新倉真由美、染野有来、田中爽一郎、東京湾ジロー、順堂静葉、狩野美彩子、田村幸士、山下直ほか書き切れないほどたくさん
文絵は13年前中学生の娘を自殺で失ってしまった。娘が死ぬほど辛い思いをしていたのに、気づいてやれなかった自分を責め続けた。失意を抱えたまま文絵はもう誰一人死なせたくない、と「ハートビート」という自殺志願者を救助する組織を立ち上げる。山間の実家を開放し、実父の介護をしながら保護した人たちとの共同生活をしている。長男と弟家族が手助けしてくれ、保護した人々と農作業をしながら自立を応援。文絵は自殺を願う人からの電話を受け、夜昼なく走り回っているが理解されないことも多々あり、迷いも多い。
ある晩、不審を覚えながら見捨てることはできず、連れ帰った男が事件を起こしてしまった。
坂口監督は『夏の祈り』(2012)『抱擁』(2015)などドキュメンタリー作品が印象深いですが、こちらは実際に自殺志願者の救助をしている牧師の藤藪庸一さん、妻の亜由美さん夫妻をモデルにしたフィクションです。宗教色は入れず、様々な理由で死にたいと願う人を登場させています。文絵はレスキューの訓練を受けたわけではないので、かける言葉や対応は専門家のマニュアルどおりではありません。リスクも承知で、ただただ手を差し伸べ、寄り添おうとしています。
文絵の志は尊いものですが、観ていて運営のしかたが危なっかしく、遠からず金銭的に破綻してしまうと思いました。野菜の自給自足や衣服の寄付などでは到底まかないきれないでしょう。保護した人が身寄りもなく、自立の気持ちが湧かなければいつまでも面倒を見ることになります。暖かい手がそばにあって居心地よければ、なおのこと出る決心がつきません。文絵は「いつまでもいていい」、送るときには「困ったら戻っておいで」と言います。
昔話には、困っている人、戸を叩く人をよく招き入れる話がありますが、今、素性もしれない他人を家の中に招くことはしません。信頼するには勇気も覚悟も要ります。
そこまではできなくとも、自分も何かできるのではないか?と考えさせられます。始めてくれた人を応援するのもいい。監督の言われるように自殺志願者は「隣の人かもしれないし、家族かもしれない。自分もいつそうなるかもわからない」のです。
交通事故死者が1万人を越えたころ、大キャンペーンがありました。シートベルトも普及して毎年減少(昨年は3694人)。一方、年間2万3千人もの人が自殺しているのに、お役所の対応は遅々としています(国会議員の給料を2割アップすることならすぐに決まるのに)。
試写と坂口監督のトークを聞いた日のスタッフ日記はこちら。坂口監督がこれを読まれてメールを下さいました。
「私の映画は、見た人に心地よく、幸福な気持ちになって欲しいがために作るのではなく、痛く感じてもらうためにつくっています。もっといえば、欠落感を感じてもらうために。
自殺はなぜしてはいけないのか。
なぜ自殺を救助することが必要なのか。
そのようなことを疑問として抱え込んで劇場を後にしてほしいのです。
そして、白石さんの書かれたように、だれかと話してほしいのです。
それでこの映画の使命は終えています」
バトン受け取りました。(白)
2018年/日本/カラー/シネスコ/120分
配給:スーパーサウルス
http://shokoumovie.com/
★2018年10月6日(土)UPLINK渋谷ほかにて全国順次ロードショー