2018年10月28日
ライ麦畑で出会ったら 原題:Coming Through the Rye
監督:ジェームズ・サドウィズ
出演:アレックス・ウルフ、ステファニア・オーウェン、クリス・クーパー
1969年、アメリカ・ペンシルベニア州。学校一冴えない高校生のジェイミー(アレックス・ウルフ)は、周囲ともなじめない孤独な生活を送っていた。そんなある日、若者のバイブル「ライ麦畑でつかまえて」に感銘を受け、演劇として脚色することを思いつく。しかし、舞台化には作者であるJ.D.サリンジャーの許可が必要だと知る。そこで、連絡を取ろうと試みるものの、隠遁生活をする作家の居所はつかめないまま。その最中、学校である事件が発生し、ジェイミーは寮を飛び出してしまう。そして、演劇サークルで出会った少女のディーディー(ステファニア・オーウェン)とともに、サリンジャー探しの旅に出ることを決意するのだった。新たな一歩を踏み出したジェイミーが見つけた“人生のヒント”とは……?
サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」の要素が散りばめられており、ファンにはうれしい。しかし、未読でも問題なく、本作だけでも楽しめる青春グラフィティ。
周囲に馴染めず、人に責任を求めていた主人公がサリンジャーを探す旅に出ることで自らに向き合い、抱えていた苦悩を乗り越える。ジェームズ・サドウィズ監督の実体験を基に描かれた。秋の夕日に輝く綿毛が舞うシーンは過ぎてしまった青春の象徴。思わず涙が流れた。ロケ地巡りをしたくなる。
サリンジャーは見つかるのか。演劇として上演できたのか。それはぜひ、作品を見て確認してほしい。(堀)
2015年/アメリカ/英語/97分/シネマスコープ/5.1カラー/PG12
配給:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES
(C) 2015 COMING THROUGH THE RYE, LLC ALL RIGHTS RESERVED
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★10月27日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
ヴェノム 原題:Venom
監督:ルーベン・フライシャー
出演:トム・ハーディ、ミシェル・ウィリアムズ、リズ・アーメッド、スコット・ヘイズ、リード・スコット
(日本語吹き替え)中村獅童、中川翔子、諏訪部順一
正義感溢れる記者、エディ・ブロック(トム・ハーディ)は、ライフ財団が人体実験で死者を出していると聞きつけ、財団トップのカールトン・ドレイク(リズ・アーメッド)に突撃取材する。エディは無謀な取材をしたことで会社をクビになる。恋人アン・ウェイング(ミシェル・ウィリアムズ)からも別れを告げられる。踏んだり蹴ったりのエディは、ライフ財団の科学者ドーラ・スカース(ジェニー・スレート)から真実を報道してほしいと研究所に侵入調査を懇願される。エディはそこで人体実験の被験者と接触したため、“シンビオート(地球外生命体)”に寄生されてしまう・・・
「さすが、トム・ハーディ、面白かった」と耳にして、どんな映画かも知らないまま試写室へ。実は、トム・ハンクスなら面白いはず・・・と、勘違いしていました。マッドマックスもスパイダーマンも全く観ていないので、馴染みがなかった次第。そんな私ですが、この映画、しっかり楽しめました。異星の生命体に寄生されるなんて、どんな気持ちでしょう。内から響いてくる声の主が、突然姿を表わすことも。
悪役を演じたリズ・アーメッドも、なかなか素敵で、名前からしてムスリム?と調べたら、パキスタン系イギリス人でした。『グアンタナモ、僕達が見た真実』や『ミッシング・ポイント』にも出演していたのですね。失礼しました。これから注目です♪(咲)
2018年/アメリカ/112分/2D・3D/字幕・吹替
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式サイト:http://www.venom-movie.jp/
★2018年11月2日(金)全国ロードショー
心魔師
監督:今野恭成
脚本:後閑広 今野恭成 牛牛
撮影監督:小川真司
音楽:沈佳女
出演:生津徹、真崎かれん、阿部翔平、陳懿冰(チェン・イビン)、 伊東由美子、小橋めぐみ、 河屋秀俊、今里真、熊谷宜之、花井力、柳憂怜、竹中直人
血液凝固剤で失血死させるという猟奇殺人事件が富士山麓の町で発生。被害者の遺留品から浮かび上がって来たのはこの町の療養所だった。そこには若い精神科医・谷と年老いた看護師、そして 6 人の入院患者がいた。不眠症の刑事・今村は密かにこの療養所に潜入し、患者の少女・夕子に出会う。今村は捜査線上に浮かび上がった怪しげな容疑者を見張るも、新たな変死体が発見される……。
東京藝大で学んだ今野監督が同期の中国人プロデューサー、張丹妮(チョウ・ダンニ)と組み、日中合作では初めてのサイコホラームービー。奇異で不可解な殺人事件から始まるが、グロテスクな殺戮シーンなどはない。普通じゃないという違和感がぞわぞわする心地悪さを伴い、不安になってくる。やがて判明するヒロインの精神的疾患。どこまでが現実で、どこからが妄想なのか。観ている人によって感じ方は違うだろう。
ヒロインを演じた真崎かれんは『東京喰種』(17/萩原健太郎監督)、『センセイ君主』(18/月川翔監督)、『SUNNY 強い気持ち・強い愛』(18/大根仁監督)、『響-HIBIKI-』(18/月川翔監督)など話題作の出演が続き、今回が初主演作となる。食事シーンに注目してほしい。(堀)
2018年/日本・中国合作/カラー/DCP/ステレオ/アメリカンヴィスタ/95 分
製作協力・配給:アルタミラピクチャーズ
(C) 2018 索斯光影(北京)影視文化伝媒有限会社 http://shinmashi.com/
★2018年10月27日(土)より新宿シネマカリテにてロードショー
2018年10月27日
殺る女
監督・脚本:宮野ケイジ
主題歌:シャリース 「OUT THE WINDOW」
出演:知英(愛子)、武田梨奈(加賀由乃)、駿河太郎(加賀俊介)、篠原篤、藤田りんか(子役)、ニコラス・ペタス、中尾隆聖、黒田アーサー
愛子は幼いころに、目の前で両親を殺され孤児となった。覚えているのは、犯人の腕に彫られていたサソリのタトゥーだけ。それを手がかりに男を探し出し、復讐するために殺し屋となっていた。それも失敗一つしない凄腕のスナイパー。
加賀俊介と由乃の兄妹は孤児院で育ち、俊介はいっときヤクザだったものの、足を洗ってかたぎになっている。妹の由乃は看護師になり、同じ病院の医師に心を寄せているが、思いは届きそうもない。
交錯するはずのなかった愛子、由乃、俊介3人の人生が思わぬところでつながります。知英(ジヨン)さんは、カメレオン女優と称されるほどいろんな顔を見せてくれますが、今度は殺し屋。重い銃器を手に、いかにも使い慣れたように見せるため、いつもそばにおいていたとか。武田梨奈さんは今回唯一ピストルを手にするシーンがあります。これはたまたまそうなっただけのシーンなので、こなれたアクションは封印。しっとりした浴衣姿で、女の情念を見せています。完成披露試写会のレポはこちら。大きな眼にいっぱい涙をためた子役のりんかちゃんがけなげ。(白)
2018年/アメリカ/カラー/ビスタ/84分
配給:プレシディオ
(c)2018「殺る女」製作委員会
http://yaruonna.com/
★2018年10月27日(土)シネ・リーブル池袋ほか全国ロードショー
あいあい傘
監督・脚本:宅間孝行
撮影:鈴木雅也
音楽:鈴木めぐみ
出演:倉科カナ、市原隼人、立川談春、原田知世、入山杏奈、高橋メアリージュン、やべきょうすけ、トミーズ雅
恋園神社のある小さな田舎町。年に一度の祭りが近づいた日、さつき(倉科カナ)は25年前に姿を消した父の六郎(立川談春)を探しにその町へやって来た。宿に向かう途中、偶然にも六郎を知るテキ屋の清太郎(市原隼人)と出会い、祭りの取材をしたいという嘘をついて町を案内してもらうことにする。散策しながら次第に明らかになる現在の六郎の生活。さつきは意を決して、父の新しい家族―――奥さんの玉枝(原田知世)と彼女の一人娘に会いに行こうとする。会いたくても会えなかった父と娘の本当の想いは届くのか……。
25年前に自分と母を捨てた父を探しに来た娘。血の繋がりのない自分を実の娘のように育ててきてくれた父に対して冷たく接する内縁の娘。その娘の母で、自殺しようとしていた男を助けた身重だった女。3人の女性の真ん中にいる男。絡み合っていた思いが人情厚い面々のドタバタなお節介ともいえる行動で解き解れていく。
探し出した父には新しい家族がいて、母と自分の苦労を知らずに幸せに暮らしていた。娘の激怒はもっともだ。飲んで悪態をつくのも仕方ない。しかし、自殺するつもりだった父を何も言わずに受け入れ、寄り添ってきた女がいたからこそ、父は生きることができた。人は視点によって、善人にも悪人にも見えるものだと改めて思う。
ラストで、父が残してきた妻子を忘れていないからゆえの日課が明らかに。胸が熱くなる。(堀)
2018年/日本/カラー/116分
配給:S・D・P
(C) 2018映画「あいあい傘」製作委員会
https://aiai-gasa.com/
★2018年10月26日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー