2018年08月05日

タリーと私の秘密の時間(原題:Tully)

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監督:ジェイソン・ライトマン
脚本:ディアブロ・コディ
撮影:エリック・スティールバーグ
音楽:ロブ・シモンセン
出演:シャーリーズ・セロン(マーロ)、マッケンジー・デイヴィス(タリー)、マーク・デュプラス(クレイグ)、ロン・リヴィングストン(ドリュー)、アッシャー・マイルズ・フォーリカ(ジョナ)、リア・フランクランド(サラ)

仕事と子育てを両立してきたマーロに3人目の子供が生まれた。夫はあてにできず、完璧にしたい家事も子育ても負担になって、すっかり疲れてしまった。マーロの兄はそんな妹を心配して、ベビーシッターをプレゼントしてくれた。半信半疑で迎え入れたシッターはまだ若いイマドキ女性のタリー。夜だけやってきて子どもの面倒を見、散らかっていた部屋も片付けて夜明け前に帰る。タリーは自分のことを少しも語らなかったが、その仕事ぶりと屈託のない人柄に、マーロは心を開いていく。やっと子どもたちと向き合う余裕もできてきた。

これを観て「マーロは私だ」と思う人がきっとたくさんいるでしょう。あ、子育て中のママは劇場に来ることは難しいですね。映画を観た後は、マーロのように疲れ果てている家族や友人や同僚に思いをはせてください。マーロは将来の貴女かもしれません。
子育てに1人奮闘するママの孤独、というのが主軸。もうひとつ、障害のある子どもの周りのエピソードもあります。対応が学校によって違いました。その子にぴったりの学校と先生に会えるのは僥倖です。
冒頭にマーロが息子の身体をブラシでやさしくマッサージする場面が疑問でした。子どもにはママの手で“手当て”するのが一番いいです。それと同じに妻の身体も夫がゲーム機から手を離してマッサージしてほしいものです(夫も妻にそう思っているかな)。それだけでもうんと癒される、救われるはずです。振り返るとたくさん積もり積もった問題を一つずつ解決して、ちょっと煙にまきながらも希望を見せてくれる作品でした。
美人の誉れ高いシャーリーズ・セロン、『モンスター』(2003)で役に合わせて激太りして驚かされましたが、今回は臨月の母親役なので、もっと増やしています。あのたぷたぷのお腹の贅肉は自前です。そしてちゃんと元の体型に戻すのですから、驚異的!(白)


2018年/アメリカ/カラー/シネスコ/110分
配給:キノフィルムズ=木下グループ
(c)2017 TULLY PRODUCTIONS.LLC.ALL RIGHTS RESERVED.
http://tully.jp/
http://www.7-taizai-movie.net/
★2018年8月17日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 18:30| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

オーシャンズ8(原題:Ocean's Eight)

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監督:ゲイリー・ロス
脚本:ゲイリー・ロス、オリヴィア・ミルチ
撮影:アイジル・ブリルド
音楽:ダニエル・ペンバートン
出演:サンドラ・ブロック(デビー・オーシャン)、ケイト・ブランシェット(ルー)、アン・ハサウェイ(ダフネ・クルーガー)、ミンディ・カリング(アミータ)、オークワフィナ(コンスタンス)、サラ・ポールソン(タミー)、リアーナ(ナインボール)、ヘレナ・ボナム・カーター(ローズ・ワイル)、
ジェームズ・コーデン(ジョン・フレイジャー)、リチャード・アーミテージ(クロード・ベッカー)

ダニー・オーシャンの妹、デビーは5年間の刑務所暮らしからようやく仮出所にこぎつけた。服役中に練りに練った犯罪計画を実現するために、まず旧知のルーを訪ね、その道のエキスパートたちを集める。ターゲットは世界の衆目を集めるファッションの祭典“メットガラ”。NYメトロポリタン美術館にセレブ6000人が集まり、世界中にテレビ中継される。そこでハリウッド女優が身につけている1億5千万ドルの宝石を手に入れようというのだ。不可能と思われる計画に女性ばかりの新生オーシャンズが挑んでいく。

『オーシャンズ11』(2001)『オーシャンズ12』(2004)『オーシャンズ13』(2007)に続くシリーズ最新作。3作の監督だったスティーヴン・ソダーバーグは、本作の製作にあたり『ハンガーゲーム』のゲイリー・ロスがメガホンを取りました。
舞台となる“メットガラ”については2016年のドキュメンタリー『メットガラ ドレスをまとった美術館』を観ていただけるとよくわかります。そちらにメインゲストとして呼ばれていたリアーナが、この映画では犯罪ドリームチームの一員、凄腕のハッカーとして活躍しているのも面白い趣向です。
『オーシャンズ11』も超豪華な出演陣に目を見張りましたが、本作でもリーダーのサンドラ・ブロックをはじめ主役級の女優さんばかり。それぞれの特技を駆使して、綿密な計画をひとつひとつ大胆に決行していくのにワクワクしました。ゴージャスな舞台設定ですが、彼女たちのオーラも負けていません。人目につかないように地味にしていたメンバーが、ここぞというときに豪華な衣装を身にまとって登場するシーン、彼女たちの輝きに注目してください。いやぁ眼福、眼福。(白)


2018年/アメリカ/カラー/シネスコ/110分
配給:ワーナー・ブラザース
(c)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS NORTH AMERICA INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
http://wwws.warnerbros.co.jp/oceans8/
★2018年8月10日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 13:53| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

英国総督 最後の家   原題:Viceroy's House

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監督・脚本:グリンダ・チャ―ダ(『ベッカムに恋して』)
出演:ヒュー・ボネヴィル、ジリアン・アンダーソン、マニシュ・ダヤル、フマー・クレイシー、マイケル・ガンボン

英領インドがインドとパキスタンに分離独立するまでの激動の6ヶ月を、総督官邸を舞台に描いた物語。

1947年2月、インドからの撤退を決めた大英帝国の最後の総督マウントバッテン卿が主権譲渡の任務を帯びてデリーに着任する。
パンジャーブ出身のヒンドゥー教徒のジートは、友人のツテでマウントバッテン卿の秘書官となる。ラホールの刑務所で勤務していたが、国の将来を思う政治犯を監禁していることに嫌気がさしての転職だった。総督官邸で、ジートはラホールの刑務所に父親が収監されていたアーリアというイスラーム教徒の女性とすれ違う。父親との面会を許されない彼女の手紙や差し入れを預るうち、恋心を抱くようになった女性だ。アーリアは、マウントバッテン卿の娘パメラの世話係として官邸に着任したのだった。
マウントバッテン卿は最良の主権譲渡をしたいと願い、独立後について、統一インドを望む国民議会派のネルーやガンディー、分離してパキスタン建国を望むムスリム連盟のジンナーと話し合いを続けるが、ついに印パ分離独立を決意する。主権譲渡の時期も予定より10ヶ月も早め、1947年8月と決める。それまでに人々は、自分の国をどちらにするか決めなければならない。人々の大移動が始まり、各地で暴動が起こる。
アーリアはジートを愛していたが、実はアースィフという親の決めた婚約者がいて、父親と共に彼の実家のあるパキスタンとなるラホールへ行くことを決める。アーリアを見送ったジートは、彼女が乗った夜行列車で大虐殺が起きたと報じる新聞を目にする。ジートはアーリアの安否を確認しに国境に向かう・・・

印パ分離独立にいたるまでの各派の動きや、民族大移動の大混乱の様子が当時のモノクロ映像で挟み込まれます。国民会議派のネルーやガンディー、ムスリム連盟のジンナーを演じている役者さんが、まるでアーカイヴ映像からそのまま出てきたようにそっくりで驚かされます。
統一インドの初代首相をジンナーにと進言したガンディーの思いにもかかわらず、分離独立という形になり、今なお両国の関係はぎくしゃくしています。故郷を離れなければならなかった多くの人々、そして移動中の混乱の中で命を落とした人々・・・ 
シク教徒の家庭に生まれたグリンダ・チャ―ダ監督自身の祖父母や親戚も、今はパキスタンとなった地から移住を余儀なくされた当事者でした。政治家の決めた分離独立が、どれだけ多くの人たちの人生を翻弄させたのか・・・ 本作は、分離独立にいたるプロセスを背景に、宗教の違う二人の恋の行方を劇的に見せて、庶民の受けた痛みをみごとに描き出しています。

実は、マウントバッテン卿が国境線の詳細について、両国指導者に明かしたのは、独立宣言直後の8月18日でした。大混乱を恐れてのことだったそうです。そんなマウントバッテン卿ですが、分離独立を決めた時、すでに2年前にチャーチル首相が分離独立を予測して国境線を考えていたことを知ります。天然資源の積出港としてカラチをパキスタンの領土とすることで、独立後の英国に有利になるよう画策していたのです。
パキスタンの独立式典に赴いたマウントバッテン卿に、ジンナーが「チャーチルが来るべきだった。パキスタンの助産婦だから」と語る場面が映画に出てきます。ジンナーは「私も騙された。もっと領土がほしかった」とも語ります。パンジャーブやベンガルなど、宗教の比率が五分五分の州は、インドとパキスタンに分割されてしまったことにも恨みがあるでしょう。住民の大半がムスリムで、マハラジャがヒンドゥーだったカシミールにいたっては、いまだに帰属が確定していません。

さて、この総督官邸ですが、数百人の使用人が必要なほど大きな邸宅。着任したマウントバッテンの夫人が、「バッキンガム宮殿より立派ね」とつぶやきます。
大英帝国の威光を感じさせる総督官邸が完成したのは、1929年。20年も経たないうちに、インドの国家元首の官邸になると、誰が予想したでしょう。
本作の邸宅の撮影の大部分は、ジョードプルのマハラジャの館ウメイド・バワン・パレスで行われましたが、本物の元総督官邸の外観の撮影許可が出て、その威光を見ることができます。 
余談ですが、一部がホテルとなっているウメイド・バワン・パレスに泊まったことがあって、懐かしく拝見! 大理石の床の広々とした部屋!(咲)


★印パ分離独立の際の大混乱については、イスラーム映画祭3 『熱風』上映後の麻田豊氏トークを是非参照してください。

イスラーム映画祭3 『熱風』  印パ分離独立に翻弄されたムスリム一家を描いた名作 
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/459740338.html

2017年/イギリス/カラー(一部モノクロ)/2.39 : 1/106分/5.1ch/英語、パンジャービー語・ヒンディー語
配給:キノフィルムズ/木下グループ   後援:日印協会
公式サイト:http://eikokusotoku.jp/
★2018年8月11日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー





posted by sakiko at 03:33| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする