2018年08月29日

妻の愛、娘の時  原題:相愛相親

2018年9月1日(土)より、YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国順次ロードショー

『妻の愛、娘の時』ポスター・チラシ表面.jpg
(C)2017 Beijing Hairun Pictures Co.,Ltd.

監督:張艾嘉(シルヴィア・チャン)
脚本:張艾嘉(シルヴィア・チャン)、游暁頴(ヨウ・シャオイン)
撮影:李屏宾(リー・ピンビン)
出演
張艾嘉(シルビア・チャン):ユエ・フイイン
田壮壮(ティエン・チュアンチュアン):イン・シアオピン
郎月婷(ラン・ユェティン):ウェイウェイ
吴彦姝(ウー・イエンシュー):ツォン
宋宁峰(ソン・ニンフォン):アダー
劉若英(レネ・リウ):教習所の生徒ワン
耿乐(コン・ラー):生徒の父親

父の遺骨をめぐる騒動を3世代の女性の視点を通して描く

監督は『山中傳奇』(79)、『過ぎゆく時の中で』(88)、『フルムーン・イン・ニューヨーク』(89)、『恋人たちの食卓』(94)など数多くの香港・台湾映画に出演してきた女優張艾嘉(シルヴィア・チャン)。その後、映画製作にも進出し、映画監督・プロデューサーとしても活躍し、監督作としては『君のいた永遠』(99)、『20.30.40の恋』(04)、『念念』(15)などを製作、プロデューサーとしては『美少年の恋』 (98)がある。
最新作『妻の愛、娘の時』(相愛相親)は、母の死をきっかけに、田舎にある父の墓の移動めぐる3世代の女性たちの思いを、シリアスに、時にユーモアを交えて描いた。
撮影は、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督作品や、『春の雪』『空気人形』『長江 愛の詩』などを手掛けた李屏宾(リー・ピンビン)。シルヴィア・チャン演じるヒロインの夫役は、中国映画界第5世代監督の田壮壮(ティエン・チュアンチュアン)。シルヴィア・チャンが田壮壮監督の『呉清源 極みの棋譜』(07)に出演した時に知り合い、今回の夫役にピッタリと出演要請に至ったという。
『妻の愛、娘の時』サブ@.jpg
(C)2017 Beijing Hairun Pictures Co.,Ltd.

ストーリー
母を看取ったフイイン(シルヴィア・チャン)が田舎にある父親の墓から父の遺骨を自宅のそばに移し、母親と一緒に埋葬しようと思い、夫や娘と共に父の故郷を久しぶりに訪れるが、父の最初の妻ツォンや村人に抵抗され大きな波紋を巻き起こしてゆく。数多くの香港、台湾映画に出演してきた女優シルヴィア・チャンが監督・主演を兼ね、現代の中国を舞台に、最初の妻ツォン、主人公フイイン、フイインの娘ウェイウェイ、3世代の女性の想いを描く。
田舎で夫の帰郷を待ち続けた最初の妻ツォンは田舎の家で一人暮らしをしている。
「母の遺言」と主張し、父の遺骨を母の元に埋葬したいフイインは、自分の母こそが本妻だと証明するために母の結婚証明書を取り寄せようとするが、役所の移転で書類がみつからずうまくいかない。TV局に勤める娘は自分の人生の選択に迷いつつ、強引な母親の行動に反発。
教師のフイインは定年間近。学校にもこの騒動が伝わり噂になったりして、思い通りにいかないフイインはイライラを募らせていく。そんな妻を静かに見守る夫シアオピンは、フイインのために定年祝いのメッセージカードを娘と買いに行ったりして陰から妻を支えようとするのだが、妻は勤め先の自動車教習所の生徒ワンさんとの仲を疑う。
ウェイウェイはミュージシャンのボーイフレンド、アダーから北京に一緒に行こうと言われ迷っていた。そんな時、彼女が働いているテレビ局が、この「お墓をめぐるトラブル」に注目し取材をしようとする。ウェイウェイは、ツォンのところへ通い、映像に撮り、TV局の番組に仕立てようとする。あしげく通い取材を進めるうち、ふたりは次第に打ち解けていく。
夫婦、親子、都市対田舎の対立、家族の歴史をユーモア込めて描く。最後は人情、人の心の変化を愛情込めて描き、心にしみる物語になった。また、古くから置かれてきた女性の立場が浮かび上がってくる。

フイイン、ウェイウェイ、ツォン。3人の女性たちの大切に想う人への気持ちがぶつかりあう中、最後に下した結論に観る人たちはホッとし心癒される。人は捨てたものでないと思わせてくれた。
早いテンポで話は進むが、音楽が大きな役割を果たしている。こういう土くさい物語なのに、中に出てくる音楽はロック。ウェイウェイの彼アダーがライブで歌っているのは、BEYOND(香港)の「海闊天空」(遥かなる夢に)。墓をめぐって村人たちと対峙するシーンでは崔健の「花房姑娘」がバックに流れる。
主人公が必死であればあるほどコミカルさが際立ち、融通の聞かないお役所仕事やTV局に対する皮肉も効いていて、シルヴィア・チャンうまい!と思った。
田壮壮監督は味わい深い包容力ある演技を披露しているし、アダーも田舎のお婆ちゃんに優しく接していて、女たちを支える男たちがいい味出している。
東京フィルメックス2017で上映され、シルヴィア・チャンも来日した(暁)。


東京フィルメックス2017でのシルヴィア・チャン
2017フィルメックス.jpg

●DSCN3520補正.jpg
オリジナルポスターと共に

2017/中国台湾合作/中国語/カラー/2.35:1/DCP/121分
日本語字幕:鈴木真理子 配給:マジックアワー
公式サイト: http://www.magichour.co.jp/souai
posted by akemi at 03:59| Comment(0) | 中国・台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月26日

判決、ふたつの希望   原題:L'insulte  英題:The Insult

hanketsu.jpg

監督:ジアド・ドゥエイリ (『西ベイルート』)
出演:アデル・カラム、リタ・ハーエク、カメル・エル・バシャ、クリスティーン・シュウェイリー、カミール・サラーメ

レバノンの首都ベイルート。とある住宅街で、違法建築の補修作業の現場監督であるパレスチナ人のヤーセルは、バルコニーから水が落ちてくるのに気づき、トイを補修する。ところが、その部屋に住むレバノン人のトニーは、勝手に取り付けたと憤慨しトイを壊してしまう。そのことに対し「クズ野郎」と言い放つヤーセルに、トニーはさらに憤慨。
この些細な出来事が、謝罪する、しないで、大きな揉め事に発展し、あげく、トニーはヤーセルを告訴。法廷に持ち込まれる。トニーは大手弁護士事務所の切れ者ワハビーに原告代理人を依頼。一方、本件はパレスチナ人に対するヘイト・クライムだとして人権派の女性弁護士ナディーンがヤーセルの弁護を申し出る。実は、ワハビーとナディーンは親子。
法廷は、単なる暴言を巡る仲裁から、政治問題へと発展し、国をあげての論争に発展してしまう・・・

レバノンの複雑な人口構成や、内戦の歴史が背景にある本作。
イスラーム教スンニ派のジアド・ドゥエイリ監督は、キリスト教系のファランヘ党に所属する女性ジョエル・トゥーマと共に脚本を執筆。人種や宗教の違い、さらには女性の目線も入れて、それぞれに配慮して描いたものとなっています。また、監督の父は裁判官、母は弁護士という背景もあり、特に弁護士である母からは法廷シーンについてアドバイスを得たそうです。

話が進む中で、パレスチナ人のヤーセルは、ヨルダンのアンマンで難民として暮らしていたが、1971年にレバノンに移住してきたことが語られます。ヨルダン政府と軍がパレスチナ人7千人を虐殺。そのことがあってヨルダン政府はパレスチナ人をレバノンに移住させたのです。一方のトニーは、生まれ故郷であるベイルートから20分程南東のダムールで、1976年にパレスチナ難民やイスラーム教徒によるキリスト教徒虐殺事件があって、故郷を離れたことが判明します。ヤーセルもトニーも、歴史に翻弄された人生をおくっているのです。

けれども、監督が描きたかったのは、レバノンの特殊な背景ではなく、正義とは何か? 人はどうしたら許しあえるのか? といったことではないかと感じました。

争いのもとになった暴言は、「パレスチナ人なんか、シャロン(2001年〜2006年のイスラエル首相)に抹殺されていれば!」というものでした。法廷で問われても、言ったトニーも、言われたヤーセルも決して明かしません。これを言っては、さらに論争が泥沼になるとわかっているから。
原題『L'insulte』は、侮辱という意味。
人は、それぞれいろいろなものを背負って生きています。お互い、どんな背景があるのかは知らなくても、それを察しながら、思いやることが円満に過ごす術でしょうか。
映画の最後に、「海の花嫁」と呼ばれた美しいダムールの町の過去の姿が映し出されます。世界には、争いごとのために愛する故郷を失った人が数多くいることにも思いが至りました。(咲)


2017年/レバノン・フランス/アラビア語/113分/シネマスコープ/カラー/5.1ch
配給:ロングライド
公式サイト:http://longride.jp/insult/
★2018年8月31日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開




posted by sakiko at 21:20| Comment(0) | 中東 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

テル・ミー・ライズ   原題:Tell Me Lies

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監督:ピーター・ブルック
出演:マーク・ジョーンズ、ポーリーン・マンロー、ロバート・ラングドン・ロイド、グレンダ・ジャクソン、イアン・ホッグ

1968年、ロンドン。ベトナム戦争で傷ついた子どもの写真に何か行動を起こさなければと歌う若者。コミックやロックで表現する者。デモする人たち・・・ 舞台演出家であるピーター・ブルックは、ベトナムについて、歴史や兵士の証言、テレビニュース、アメリカ上院の審議の議事録等々、出来る限りの資料を集め、さらに様々な国籍のジャーナリスト、戦争レポーター、アメリカ大使館の公務員、歴史家、僧侶などを呼び寄せる。それぞれが混迷を深めるベトナム戦争への思いを語る・・・

本作は、カンヌ映画祭で上映されることになっていたのに、その後、どういう理由からかは不明ながら上映が取り下げられました。5月革命で、結局、カンヌ映画祭自体が中止になってしまった時のこと。
当時は、社会が右派か左派かに分極化し、ベトナム戦争に反対するということは、左派の全ての考えに全面的に賛同することを意味していた時代。本作は右派左派どっちの視点も取ってないと酷評もされたそうです。
ヴェネツィア映画祭で審査員特別賞とルイス・ブニュエル審査員賞の2部門受賞した後、アメリカやイギリスの一部の劇場で公開されましたが、様々な妨害を受け、短期間しか上映できなかった上、本編も紛失してしまいました。2011年に本編が発見され、修復し2012年に復活上映。50年の時を経て、日本で公開されることになりました。
どっちの視点も取ってないことが、逆にいろいろなことを考えさせてくれます。
ベトナム戦争は終わりましたが、世界の各地で戦争は絶えません。世の中から戦争がなくなってほしいと思う人も多い一方、他者を排除しようという風潮も強くなっているような気がします。
本作の中では、どうすればいいかわからないけれど、純粋にベトナム戦争を終わらせたい思いで、いろいろな行動を起こした人々の姿をみることができます。今や、声をあげる人も少なくなっているのではないでしょうか。(咲)


表向きはベトナム反戦映画ですが、こういう分極化はあらゆる時代と場所で起きたのではないかと思います。
二つの選択肢しかないように追い込まれた状況下で繰り返されてきた葛藤を、演劇的な手法を駆使して描いた作品でした。
分極化の渦中にいながら複雑な視点を持って問題に対峙する姿勢、解決できない問題や矛盾とともにあろうとする態度、時折訪れる静かな場面がよかったです。

それから私自身が舞台作品をよく観るので、オリジナルの演劇と映画の変化を想像しながら観ました。
おそらく舞台の方は俳優の身体や佇まいが、映画にはないユーモアを醸し出していたと思います。
一方で、映画の終盤に「最大の快楽、最小の痛み」と言うコートの男は、二次元独特のフラットさで身体性がうまく消えていました。映画の中の人物として台詞を言っているのではなく、スクリーンのこちら側の本音を喋っているような効果が出ていました。

舞台のメイキングのドキュメンタリー「Benefit of the Doubt」も、いずれ機会があれば観てみたいです。(Simone)


イギリス/1968年/英語/DCP/ビスタサイズ/98分
配給:キノフィルムズ
公式サイト:http://tellmelies.jp/
★2018年8月25日(土)シアターイメージフォーラムにてロードショー





posted by sakiko at 21:09| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月25日

夏、19歳の肖像   原題:夏天十九歳的肖像 英題: Edge of Innocence

natsu 19sai.jpg

監督:チャン・ロンジー
原作:島田荘司「夏、19歳の肖像」(文春文庫刊)
出演:ファン・ズータオ、ヤン・ツァイユー、カルビン・トゥ、リー・モン、チュウ・チーイン

大学の夏休み、19歳のカン・チャオ(ファン・ズータオ)は親に内緒で買ったバイクで事故を起こして脚を骨折してしまう。入院した病院の理事長の娘ジュー・リー(リー・モン)は大学の同級生。彼女に密かに思いを寄せるジャオ・イー(カルビン・トゥ)と共に入院中の世話をしてくれる。
病室から見える邸宅の2階に佇む女性(ヤン・ツァイユー)に一目惚れしたカンは、ジャオに望遠鏡を持ってきてもらう。両親と共に裕福な暮らしをしている様子を覗くのが毎日の楽しみになったカン。ある夜、彼女と両親が何やら揉めたあげく、彼女が刃物で父親を刺すのを目撃してしまう。床は真っ赤に染まっていく。その後、雨の中、彼女と母親が大きな袋を引きずって、隣の空き地に行き、埋めるのを見てしまう。
強引に退院したカンの自宅に、「何を見たか人に言うな」と切り貼りされた文字の手紙が届く。だが、邸宅の美女が気になるカンは、彼女の名がシア・インインで、勤務先もつきとめ、アルバイトとしてもぐりこむ。一方、入院中にメッセンジャーアプリで知り合ったシャオバイという友達から、カンの行動を監視しているかのようなメッセージが届くようになる・・・

父親を殺したらしいシア・インインのあの夜の真相は?  脅迫メッセージを送ってくるシャオバイの正体は? と、謎が明かされる最後の最後まで、サスペンスを楽しみました。
島田荘司氏の原作を読んでみたくなりました。
主演のカン・チャオを演じたファン・ズータオは、中国出身ですが、韓国の人気アイドルグループ「EXO」のメンバーとして活躍後、2015年4月に独立。歌手としてだけでなく、『レイルロード・タイガー』(16)でジャッキー・チェンと共演するなど俳優としても活躍しています。
また、香港のベテラン俳優スタンリー・フォンが、病院の同室に入院している老人役を演じていたり、チャン・チェンの父チャン・グオチュウが出演していたりと、中華圏映画ファンにはお楽しみも。(咲)


2017年/中国/105分/スコープサイズ/ドルビー/デジタル
提供・配給:マクザム 配給協力・宣伝:フリーマン・オフィス
公式サイト:http://www.maxam.jp/19/
★2018年8月25日(土)よりシネマート新宿ほか全国順次ロードショー






posted by sakiko at 11:19| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月19日

ちいさな英雄 カニとタマゴと透明人間

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「ポノック短編劇場」
スタジオジブリを2014年末に退社したプロデューサー西村義明氏が立ち上げた「スタジオポノック」による短編劇場第一弾。「ちいさな英雄」をテーマにした3本の短編アニメーション。声の出演が豪華です。夏の終わりに親子でどうぞ!

◆『カニーニとカニーノ』 18分
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監督:米林宏昌(『メアリと魔女の花』)
声の出演:木村文乃(カニーニ)、鈴木梨央(カニーノ)

巨大な魚たちから離れて、川底でひっそりと暮らすサワガニの家族。ある日、大嵐が襲う。兄カニーニと弟カニーノの大冒険ファンタジー


◆『サムライエッグ』 16分
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監督:百瀬義行
声の出演:尾野真千子(ママ)、篠原湊大(シュン)、坂口健太郎(パパ/医者)

東京府中市に暮らす野球好きの少年シュン。卵アレルギーのシュンのために、ママは小学校の給食のメニューにあわせて卵抜きの料理をいつも用意してくれる。ママのダンスを観にいった日、好意で出してくれた卵入りアイスクリームを口にしてしまう・・・

関西弁のママ。シュンが「~じゃん」と、すっかり東京っ子なのを笑います。
私にはお馴染みの大國魂神社のお祭りが出てきて、ちょっと嬉しい。
いろいろな食物アレルギーがあって、子どもは自分じゃ判断できないから、親の気遣いは大変。中学生の時、毎日、学校で牛乳1本飲まなくてはいけなくて、生の牛乳が気持ち悪い私には拷問のようだったのを思い出しました。一律に強制はいけない! (咲)


◆『透明人間』 13分
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監督:山下明彦
声の出演::オダギリジョー(透明人間)、田中泯(盲目の男)

古ぼけたアパートに暮らす青年。いつものようにコートを羽織って、深く帽子を被り、サングラス姿で出かける。実は彼は透明人間。自動ドアも、ATMも認識してくれない。
見えない男の孤独な闘い。


配給:東宝
(C)2018 STUDIO PONOC
公式サイト:http://www.ponoc.jp/eiyu/
★2018年8月24日(金)全国ロードショー





posted by sakiko at 17:19| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする