2018年07月01日
わがチーム、墜落事故からの復活(原題:Nossa Chape- Our Team)
監督・脚本:マイケル・ジンバリスト、ジェフ・ジンバリスト
ブラジル1部リーグ・セリエAの“シャペコエンセ”は小さな街のクラブチーム。ついに国際タイトルをかけた決勝に進出を決め、街を上げて祝賀ムードに酔いしれる。2016年11月28日、2日後に控えた決勝戦ファーストレグのため、コロンビアに向けチャーター機で出発した。シャペコエンセの主力選手や首脳陣、ジャーナリストら77人を乗せた飛行機は、コロンビアのメデジン郊外で墜落。71人が命を落とす大惨事となった。生存者6人のうち選手はGKのジャクソン・フォルマン、DFのエリオ・ネトとアラン・ルシェウの3人だった。合同葬儀の翌日からクラブチームは再スタートを切るべく、新しい監督、選手の増強をはかる。
大きく報道された飛行機事故の裏には、こんなにも悲痛なドラマがありました。冒頭は決勝への進出が決まり、喜ぶ選手やサポーターたちの表情をとらえています。飛行機に乗り込んで陽気にさわぐ面々の殆どが犠牲になったかと思うと、始まりから目がうるんでしまいました。日本のチームにいたケンペス、サンタナ、カイオ・ジュニール監督も亡くなりました。事故の報に悲嘆にくれる留守家族やサポーターたちにもらい泣き。奇跡的に命をとどめた3選手、その家族も手放しで喜べません。複雑な心中を想像するばかり。3人は事故後、過酷なリハビリに耐えて、チームの希望の星として喪失感を抱えながら、重責を担うことになりました。チームは再建されますが、その内側は亀裂が入ったままです。一つの家族のようだった“シャペコエンセ”が本当に復活する日は来るのでしょうか。
巷ではワールドカップで賑わっていますが、2017年こんな風に戦っていたチームのことを知ってください。サッカーファンばかりでなく、夢を追い続ける人、心折れそうな人にも届きますように。マイケル・ジンバリスト、ジェフ・ジンバリストは『ペレ 伝説の誕生』(2016年)を手がけ、日本でも2016年7月に公開されています。(白)
2018年/ブラジル/カラー/ポルトガル語/101分
配給:コムストック・グループ
http://our-team.jp/
★2018年7月6日(金)より新宿ピカデリーほかにて緊急公開!
セラヴィ!(原題:Le sens de la fete)
監督・脚本:エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ
撮影:ダーヴィッド・シザレ
音楽:アヴィシャイ・コーエン
美術監督:マチュー・ヴァドピエ
出演:ジャン=ピエール・バクリ(マックス)、ジャン=ポール・ルーブ(ギイ)、ジル・ルルーシュ(ジェームス)、バンサン・マケーニュ(ジュリアン)、アイ・アイダラアデル)、スザンヌ・クレマン(ジョジアーヌ)、アルバン・イワノフ(サミー)、バジャマン・ラベルヌ(ピエール)、ジュディット・シュムラ(エレナ)、エレーヌ・バンサン(新郎の母)
マックスは30年間勤めたウェディングプランナーからの引退を考え始めている。17世紀の古城を舞台にしたウェディングの依頼があり、いつものように万全の準備を整えたはず・・・だった。当日集まったスタッフはどういうわけかポンコツばかり。意見の合わないスタッフはいがみ合い、ウェイターは新婦に色目を使う。冷蔵庫のプラグが抜けているのに誰も気づかず、メイン料理は哀れゴミ箱へ。ミスがミスを呼び、マックスは混乱を収めるのに必死。そして大惨事へと進んでいくのを誰か止めて〜。
『最強のふたり』のエリック・トレダノ&オリビエ・ナカシュ監督が。同時多発テロで沈みきった空気をなんとかしたい、と送り出したハートが温まるコメディ。結婚式という人生最大のイベントで主人公になる新郎新婦、彼らのために舞台裏で心を砕くスタッフたちの凝縮された一日を描いています。最初は集められたスタッフのあまりのポンコツぶりにイラっとくるのですが、窮地に立たされても苦肉の策をひねり出し、責任を全うしようとするマックスを応援したくなります。今責任のなすりあいが横行していますからね〜。
多くの登場人物は自分や誰かと似ていて、ダメなりに一生懸命やっている憎めない人たちです。新郎のママには「やるね!」と思いました。ほんとフランス人って老若男女関わらず、愛にはマメ!直接の知人はいませんが、フランス映画ではいつもそうなんですよぉ。(白)
2017年/フランス/カラー/シネスコ/117分
配給:パルコ
(C)2017 QUAD+TEN / GAUMONT / TF1 FILMS PRODUCTION / PANACHE PRODUCTIONS / LA COMPAGNIE CINEMATOGRAPHIQUE
http://cestlavie-movie.jp/
★2018年7月6日(金)より渋谷シネクイント、新宿シネマカリテほか全国ロードショー
バトル・オブ・ザ・セクシーズ(原題:Battle of the Sexes)
監督:ヴァレリー・ファリス、ジョナサン・デイトン
脚本:サイモン・ビューフォイ
撮影:リヌス・サンドグレン
音楽:ニコラス・ブリテル
出演:エマ・ストーン(ビリー・ジーン・キング)、スティーブ・カレル(ボビー・リッグス)、アンドレア・ライズボロー(マリリン・バーネット)、サラ・シルバーマン(グラディス・ヘルドマン)、ビル・プルマン(ジャック・クレイマー)、アラン・カミング(テッド)、エリザベス・シュー(プリシラ・リッグス)
1973年、女子テニスの世界チャンピオンのビリー・ジーン・キングは全米テニス協会が発表した次期大会の女子の優勝賞金が、男子の1/8であることに抗議する。男子と変わらず集客しながら評価されず、女性差別がまかり通っていることに業を煮やして“女子テニス協会”を立ち上げる。一方、元男子世界チャンピオンのボビー・リッグスはギャンブル癖から妻に愛想をつかされ、起死回生のチャンスを狙っていた。男性至上主義を唱え、真っ向から対立。ボビーはキングへ挑戦状を叩きつけるが、キングは見せ物になりたくないと断る。しかし、キングのライバルだったマギーがボビーと戦って完敗、得意満面のボビーをこのままにしておけない。女性は男性に劣るものではない、と挑戦を受けることにする。全米、いや世界中のテニスファンが注目する世紀の試合が始まろうとしていた。
テニス愛好家の方々には周知の事実でしたか?こんな性差を越えた戦いがあったということを、この映画で初めて知りました。1970年代は男女平等を求める機運が高まっていたとき。ウーマン・リブの運動家たちも注目したこの戦いは事実なので結果はわかっているのですが、映画の面白さをそぐものではありません。試合に一喜一憂していました。また、キング自身が自分の隠されていた面に気づいていく過程も織り込み、1人の女性の生き方も描いています。力強く、しかも繊細なストーリーを担うのは、納得の俳優陣。ヴァレリー・ファリス、ジョナサン・デイトン監督夫妻は、俳優選びが上手です。
監督夫妻の『リトル・ミス・サンシャイン』(2006)が世界中で好評でしたが、第19回東京国際映画祭で最優秀監督賞、主演女優賞(アビゲイル・ブレスリン)、観客賞。アカデミー賞では助演男優賞(アラン・アーキン)、脚本賞を受賞しています。スティーブ・カレルはこの作品で叔父役で出演していました。オーチャードホールで満席の観客から暖かい拍手を贈られて本当に嬉しそうだったのを思い出します。
通路で遭ったご夫妻に思わず“Congratulations!”と握手できたのは我ながら上出来でした。ほかの俳優さんたちもみんな現在も活躍中です。(白)
2017年/アメリカ/カラー/シネスコ/122分
配給:20世紀フォックス映画
(C)2017 Twentieth Century Fox
http://www.foxmovies-jp.com/battleofthesexes/
★2018年7月6日(金)TOHOシネマズシャンテほか、全国順次ロードショー