2018年06月15日
ワンダー 君は太陽(原題:Wonder)
監督・脚本:スティーブン・チョボスキー
原作:R・J・パラシオ
スティーブン・チョボスキー、スティーブ・コンラッド、ジャック・ソーン
音楽:マーセロ・ザーボス
出演:ジュリア・ロバーツ(イザベル)、ジェイコブ・トレンブレイ(オギー)、オーウェン・ウィルソン(ネート)、マンディ・パティンキン(トゥシュマン先生)、ダビード・ディグス(ブラウン先生)、イザベラ・ヴィドヴィッチ(ヴィア)、ダニエル・ローズ・ラッセル(ミランダ)、ナジ・ジーター(ジャスティン)、ノア・ジュプ(ジャック)、ミリー・デイヴィス(サマー)、ブライス・ガイザー(ジュリアン)、エル・マッキノン(シャーロット)
10歳のオーガスト・プルマンは、スタートレックが大好きで宇宙旅行に憧れている男の子。パパとママとお姉ちゃんのヴィアとの4人家族。オギーと呼ばれている。オギーは顔に障害を持って生まれてきて、今までに27回も手術を受けた。特別な顔なので、外に行くとみんながびっくりし、怖がったりじろじろ見たりする。パパとママはこれまで自宅でオギーに勉強を教えてきた。けれどママは、5年生になる日から他の子と同じように、学校に行かせようと決めた。夏休みのうちにママとオギーは校長先生を訪ねる。愉快な校長先生はオギーを歓迎し、同級生になるジュリアン、ジャック、シャーロットの3人に学校の中を案内させる。新学期が始まって、1人で校門をくぐるオギーを家族が心配そうに見つめている。クラスにとけこめないオギーはランチの時間も一人ぼっち。でもあるきっかけで、サマーという女の子とジャックと仲良くなれた。
オギーの病気は“トリーチャーコリンズ症候群”という遺伝子突然変異により、顔面やあごの骨が形成不全となるものです。ずいぶん前に同じ症状の男の子に会ったときは、なんの知識もなかったのでやっぱり驚いてしまいました。知ることは大事とつくづく思いました。
オギーは家族に恵まれ、持ち前の賢さや明るさもあって周りの人たちに受け入れられていきます。けなげなオギーや心を砕く両親に泣かされますが、姉のヴィアの心情にも光を当てています。オギーにかかりきりになってしまった両親に、ヴィアは「手のかからない子」と言われてきました。良い子でい続けたヴィアも高校生ですが、たまには甘えたいでしょう。そのへんもジーンとします。ハンカチ、ティッシュを忘れずに。
ジュリア・ロバーツとオーウェン・ウィルソンを食ってしまいそうなジェイコブ・トレンブレイくんすごい。『ルーム』(2016)で閉じ込められていた母から生まれた男の子役でした。大きくなってさらに上手くなっています。子どもたちの演技を引き出した監督、えらい。
ブラウン先生がいいことを言います。「正しいことをするか、親切なことをするか、 どちらかを選ぶときには、親切を選べ」って。親切のほうがわかりやすいですよね。これも忘れないようにしよっと。原作の「ワンダー」は2015年にほるぷ出版より刊行。続編は書かないと言っていた著者が、2017年にいじめっ子のジュリアン、優等生のシャーロットたちの側から「もうひとつのワンダー」を書きました。1作目で語られなかったジュリアンの思いがわかります。これを読んだときはティッシュの山ができました。2018年には絵本「みんな、ワンダー」も出ています。(白)
2017年/アメリカ/カラー/シネスコ/113分
配給:キノフィルムズ
(C)2017 Lions Gate Films Inc. and Participant Media, LLC and Walden Media, LLC. All Rights Reserved.
http://wonder-movie.jp/
★2018年6月15日(金)ロードショー
2018年06月10日
夜の浜辺でひとり 英題:On the Beach at Night Alone
監督・脚本:ホン・サンス
出演:キム・ミニ、ソ・ヨンファ、クォン・ヘヒョ
女優ヨンヒ(キム・ミニ)は既婚男性との恋に疲れ、ハンブルクにやってきた。この地に住む女友達ジヨン(ソ・ヨンファ)と街を散策中、自分がほんとうに求めるものは何か確かめたかったと語る。ジヨンの友人ポールの家では、ポール夫妻を観察しながら、韓国語で男と女の関係について言いたい放題。ポールたちと出かけた海で、韓国の恋人を思い出し、浜辺に彼の似顔絵を描く。
帰国したヨンヒは、東海岸の江陵(カンヌン)を訪れる。先輩のジュニ(ソン・ソンミ)との約束までの間、映画館を訪れたヨンヒは、昔馴染みのチョンウ(クォン・ヘヒョ)とミョンス(チョン・ジェヨン)に会う。一緒に飲みに行き、ほろ酔い気分で話すヨンヒは、女優に復帰してもいいなと考え始める。夜、ホテルのそばの浜辺に横たわるヨンヒ。声をかけられ、顔をあげると顔見知りの映画スタッフたちだった。ヨンヒの恋人だった映画監督サンウォン(ムン・ソングン)の次回作のロケハンに来ているという・・・
ヨンヒの不倫相手はサンウォン監督。とあっては、キム・ミニとホン・サンス監督の思いが反映された物語なのでしょうか。
出会う人たちとの会話で綴られるホン・サンスのスタイル。皆が思い思いに勝手なことを言ってるのも楽しい。(咲)
第67回ベルリン国際映画祭 主演女優賞(銀熊賞)
2017年/韓国/101分/ビスタ/5.1ch/カラー
配給:クレストインターナショナル
公式サイト:http://crest-inter.co.jp/yorunohamabe
★2018年6月16日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷他にて全国順次ロードショー
それから 英題:The Day After
監督・脚本:ホン・サンス
出演:クォン・ヘヒョ、キム・ミニ(『お嬢さん』)、キム・セビョク、チョ・ユニ
アルム(キム・ミニ)は、大学教授の紹介で著名な評論家でもあるボンワン(クォン・ヘヒョ)が社長をつとめる小さな出版社“図書出版 カン”に勤めることになった。
ボンワンは、毎朝4時半に起きて出勤し夜遅くまで帰らない。妻は浮気を疑っている。
アルムが初出勤した日、浮気の証拠を見つけたボンワンの妻(チョ・ユニ)が事務所に乗り込んでくる。アルムは夫の愛人と勘違いされ、殴られてしまう。今日が初出勤だと言っても信じない妻に、ボンワンは、浮気相手は会社を辞めて外国に行ったと打ち明ける。
夜、ボンワンはお詫びにアルムを食事に誘う。アルムは仕事を辞めると言うが引き止められる。そこに、ボンワンの浮気相手のチャンスク(キム・セビョク)が前触れもなくやってくる。愛を確かめ合い、また一緒に仕事をしようと抱き合う二人。結局、出版社を辞めて欲しいと頼まれる。ボンワンから好きな本を持っていっていいと言われ、アルムは数冊の本を選んで出版社を後にする。
その後、ボンワンの評論が有名な賞を受賞する。アルムはお祝いを伝えるために、“図書出版 カン”を訪れる・・・
朝早く、台所に立つ男のシルエット。配役を見てなかったのですが、あ、クォン・ヘヒョだ!と、すぐにわかりました。男の哀愁漂う姿に、この男、どんな悩みを抱えているのかと思わせられました。
ホン・サンス監督が本作を撮ろうと思ったのは、この撮影に使った小さな出版社の社長が、家から逃げるために早朝4時に出勤し、深夜過ぎまで帰らないという生活を送っているということに衝撃を受けたから。想像を膨らませて、こんな話を作ってしまったのですね。
これまでの作品でも脇役に起用してきたクォン・ヘヒョを主役に物語を作りたかったとも。
『それから』というタイトルは、ホン・サンス監督が敬愛する夏目漱石の作品から取ったそうです。出版者の本棚に並んでいる本のタイトルがハングルで読めないのですが、夏目漱石作品がずらりと並んでいるのでしょう。
乗り込んでくるボンワンの妻を演じたのは、クォン・ヘヒョの実の妻である女優チョ・ユニ。そんな配役に、遊び心も見えます。
モノクロで描かれる雰囲気ある独特の世界。(咲)
第70回カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品
2017年/韓国/91分/モノクロ/ビスタ/5.1ch
配給:クレストインターナショナル
公式サイト:http://crest-inter.co.jp/sorekara/
★2018年6月9日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷他にて全国順次ロードショー
ホン・サンス監督×キム・ミニ『それから』『夜の浜辺でひとり』『正しい日 間違えた日』『クレアのカメラ』一挙連続公開 ★予告編
1996年、『豚が井戸に落ちた日』で長編デビューしたホン・サンス監督。
『ハハハ』『アバンチュールはパリで』『教授とわたし、そして映画』など、ほんの数人の登場人物の会話で男女の関係を語る独特のスタイル。ソウルの北村など、伝統的な風情が漂う場所での撮影も印象的です。
『正しい日 間違えた日』(2015年)でキム・ミニを起用して以来、彼女を主役に映画を撮り続けるホン・サンス監督。『それから』(2017年)が、第70回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された折の公式記者会見で、「キム・ミニは僕の愛する人、僕の心に入って来て、たくさんのインスピレーションをくれる人」と、二人の幸せな関係を公言しました。
この度、ホン・サンス監督がキム・ミニとタッグを組んで撮った4作品が、ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷他にて一挙連続全国順次公開されます。
配給:クレストインターナショナル
★4作品の予告編
『それから』6/9ロードショー
http://crest-inter.co.jp/sorekara/
『夜の浜辺でひとり』6/16ロードショー
http://crest-inter.co.jp/yorunohamabe/
『正しい日 間違えた日』6/30ロードショー
http://crest-inter.co.jp/tadashiihi/
『クレアのカメラ』7/14ロードショー
http://crest-inter.co.jp/sorekara/crea/
それぞれの作品紹介ば、個別にお届けします。
『ハハハ』『アバンチュールはパリで』『教授とわたし、そして映画』など、ほんの数人の登場人物の会話で男女の関係を語る独特のスタイル。ソウルの北村など、伝統的な風情が漂う場所での撮影も印象的です。
『正しい日 間違えた日』(2015年)でキム・ミニを起用して以来、彼女を主役に映画を撮り続けるホン・サンス監督。『それから』(2017年)が、第70回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された折の公式記者会見で、「キム・ミニは僕の愛する人、僕の心に入って来て、たくさんのインスピレーションをくれる人」と、二人の幸せな関係を公言しました。
この度、ホン・サンス監督がキム・ミニとタッグを組んで撮った4作品が、ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷他にて一挙連続全国順次公開されます。
配給:クレストインターナショナル
★4作品の予告編
『それから』6/9ロードショー
http://crest-inter.co.jp/sorekara/
『夜の浜辺でひとり』6/16ロードショー
http://crest-inter.co.jp/yorunohamabe/
『正しい日 間違えた日』6/30ロードショー
http://crest-inter.co.jp/tadashiihi/
『クレアのカメラ』7/14ロードショー
http://crest-inter.co.jp/sorekara/crea/
それぞれの作品紹介ば、個別にお届けします。
榎田貿易堂
監督・脚本:飯塚健
撮影:山崎裕典
音楽:海田庄吾
出演:渋川清彦(榎田洋二郎)、森岡龍(落合清春)、伊藤沙莉(真木千秋)、滝藤賢一(萩原丈)、諏訪太朗(小島渚)、片岡礼子(永井柊子)、根岸季衣(萩原の母)、余貴美子(志摩ヨーコ)
榎田洋二郎は高校卒業後上京したが、何者にもなれず。39歳で故郷の群馬県渋川市に戻ってきた。町外れにゴミ以外何でも扱うリサイクルショップ“榎田貿易堂”を開いて4年。バイトの人妻・千秋、クールな同僚の清春、常連客のヨーコ、自称チーフ助監督の丈たちとだらだらと穏やかに日々を送っていた。ある夏の日、風もないのに店の看板の一文字が落っこちてきた。「予兆だよ。なんか凄いことがおきる予兆」とつぶやく洋二郎。その後、言葉通り彼らの日常に変化が現われる。それぞれが抱えてきた秘密や悩みが露呈し、少しずつ動き出していくのだった。
ダメダメなのに、どこか憎めない男をやらせたらこの人!の渋川清彦さん(私の中では)が、愛する故郷渋川市を舞台に、同郷の飯塚監督とタッグを組んで、送り出した作品です。のっけからひゃ〜〜なシーンでした。子どもから小銭稼ぎ(あれは18禁でしょう)をしてしまう渋川さん、いや洋二郎ったら『下衆の愛』のテツオよりひどい(誉めています)。
昨年インタビューさせていただいた森岡龍さん、注目中の伊藤沙莉さん、大好きな余さんに滝藤さんも出ています。これは観るっきゃありません。ひとくせある役がよく似合う実力派が揃って、力のぬけ具合と入れ具合が好みの作品でした。テンポの良いセリフ回しと、次々明らかになる真実。たらたらしていそうに見えて、やってくる意外な展開も笑わせてくれます。キャストの仲の良さと作品への愛がよくわかる“初日舞台挨拶記事”はこちら。ぜひ拡散させて、第2弾ができるように応援してくださいませ。(白)
2018年/日本/カラー/シネスコ/110分
配給:アルゴ・ピクチャーズ
(C)2017 映画「榎田貿易堂」製作委員会
https://enokida-bouekido.com/
★2018年6月9日(土)より新宿 武蔵野館、6月16日(土)よりシネマテークたかさき、テアトル梅田ほかロードショー