2018年06月24日

ワンダーランド北朝鮮   原題:Meine Bruder und Schwestern im Norden

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監督:チョ・ソンヒョン

韓国出身のチョ・ソンヒョン監督が、韓国籍を放棄してドイツのパスポートで北朝鮮に入国し、エンジニア、兵士、農家、画家、工場労働者など、北朝鮮で暮らす人たちの日常を追ったドキュメンタリー。

上空から眺める北朝鮮の大地。
ここにはどんな人たちが住んでいるのだろう?
北朝鮮の人は角の生えた赤い鬼と聞かされて育った1966年生まれのチョ・スンヒョン監督。
地元の協力者に従っての取材で、何が見られるのか?
韓国出身の私は、どう見られるか?
不安に思いながら北朝鮮に降り立った監督。
まず、白頭山に向かう。
朝鮮民族の生まれた地。金日成の生誕地でもある。

ぞじて、北朝鮮に住む「普通の」人たちに会う。
プール勤務のエンジニアの男性。地熱発電を利用したウォータースライダーもある大規模プール。一日2万人が訪れる。
26歳の軍人。16歳から軍に入り、今は軍幹部として家で暮らせる。婚約したら除隊するという。
公務員画家。工場で働く女性を描いているが、モデルより美しい顔。なにごとも美しく描くのが北朝鮮流?
縫製工場で働く若い女性。独創的な服を作りたいという。それがデザイナーという職種だと知らない。
平壌から80キロ南にある800世帯が暮らす共同農場。堆肥を有効に循環利用したエコな暮らし。
将軍様の写真が飾られた幼稚園では、子どもたちが元気に学ぶ・・・

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撮影:宮崎暁美

韓国籍を放棄して『ワンダーランド北朝鮮』を撮った女性監督チョ・スンヒョンさんトークイベント
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/460168743.html

常に北朝鮮当局が監視する中での取材。これはプロパガンダだと指摘されることも多々あると来日したチョ・ソンヒョン監督は語っていた。確かに、この映画に出てくる人たちは皆、穏やかな語り口で、それなりに幸せそうだ。「将軍様のお蔭で」という言葉も出てくるので、つい色眼鏡で「洗脳されている」と思ってしまう。脱北者が語る北朝鮮とのギャップに、そう勘ぐってしまうけれど、外から余計な情報が入らない中で、何も疑問に思わず平穏に暮らしている人たちがいるのも事実だと思った。
チョ・ソンヒョン監督が、韓国籍のまま取材したとしたら、その後、韓国に帰国するのに身の危険が伴う恐れがあるので、あえてドイツ籍を取得して取材に臨んだとのこと。もとは同じ民族。お互いが自由に行き来できる時代はいつ来るのだろう。(咲)

ドイツ在住の韓国人監督による北朝鮮の人々の姿をとらえたドキュメンタリー。
経済制裁下にある北朝鮮の人々の暮らしぶりを捕らえている。
「あなたの知らないもう一つの北朝鮮の姿が明らかになる」と宣伝文にあるけど、やはり韓国語を話す同胞に語りかけている人たちの姿は、これまでの北朝鮮の庶民の姿を捉えてきた作品とは一味違うような気がした。
安心感、信頼感があるように感じる。
それでも、日本では、もしかして韓国より北朝鮮の人々を撮った映像が公開されてきているのかもしれないと思った。これまで数々の北朝鮮の庶民の姿を描いた作品を観てきた気がする。
金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が核廃絶をアピールしたけど、ほんとに実行するのか世界中の人々が注目する北朝鮮の動向。『ワンダーランド北朝鮮』と、これらの作品を観て、北朝鮮と韓国の関係、朝鮮半島が抱えている問題を考えてみてはいかがでしょう(暁)


*これまで日本で公開されてきた北朝鮮の人たちを描いた作品
『金日成のパレード』(1989)
『ディア・ピョンヤン Dear Pyongyang』(2006)
『愛しきソナ』(2011)
『北朝鮮強制収容所に生まれて』(2012)
『シネマパラダイス★ピョンヤン』(2012)
『北朝鮮・素顔の人々』(2014)
『太陽の下で -真実の北朝鮮-』(2015)

*南北分断、朝鮮戦争などを描いた作品
『JSA』『シュリ』『ブラザーフッド』『シルミド』『高地戦』『その年の冬は暖かかった』『キルソドム』『太白山脈』


2016年/109分/ドイツ・北朝鮮
配給:ユナイテッドピープル 
公式サイト:http://unitedpeople.jp/north/
★2018年6月30日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー




posted by sakiko at 21:00| Comment(0) | ドイツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

正しい日 間違えた日   英題:Right Now, Wrong Then

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監督・脚本:ホン・サンス
出演:チョン・ジェヨン、キム・ミニ、コ・アソン、チェ・ファジョン、ソ・ヨンファ、キ・ジュボン、ユン・ヨジョン、ユ・ジュンサン

ちょっとした言葉やタイミングの違いが、二人の関係を大きく変える・・・

映画監督のハム・チュンス(チョン・ジェヨン) は特別講義のため水原(スウォン)を訪れる。スタッフの連絡ミスで一日早く到着してしまった彼は、ファソン(華城)を散策。とある伝統的建物で出会った魅力的な女性ヒジョン(キム・ミニ)をカフェに誘う。絵を描いていると知り、さっそく彼女のアトリエを訪れる。その後、2人は寿司屋で飲み、さらにヒジョンの先輩男性たちが集まるカフェに行く・・・

この同じシチュエーションで描かれる二つの物語。
【前半】あの時は正しく 今は間違い
【後半】今は正しく あの時は間違いだった

2015年の東京国際映画祭で、『今は正しくあの時は間違い』のタイトルで上映された折、予備知識なく鑑賞。ホン・サンス監督作品でお馴染みの俳優たちの確かな演技や、韓国の伝統的風情漂う舞台を楽しんでいるうちに、同じような話が繰り返されて、くらくら。でも、微妙にどこかが違って、そのちょっとしたことで二人の関係が大きく変わるのです。
前半と後半の物語、間違い探しをするような気持ちで、何が二人の関係を変えたのかご確認を!

2017年、カンヌ国際映画祭の公式記者会見で、「キム・ミニは僕の愛する人」と、二人の幸せな関係を公言したホン・サンス監督。『正しい日 間違えた日』は、監督が初めてキム・ミニを起用した記念すべき作品。(咲)


2015年/韓国/121分/ビスタ/5.1ch/カラー/英題:Right Now, Wrong Then
配給:クレストインターナショナル
(c)2015 Jeonwonsa Film Co. All Rights Reserved.
公式サイト:crest-inter.co.jp/tadashiihi
★2018年6月30日(土) ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開




posted by sakiko at 18:56| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月23日

カメラを止めるな!

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監督・脚本:上田慎一郎
撮影:曽根剛
特殊造形・特殊メイク :下畑和秀
音楽:永井カイル
主題歌:「keep Rolling」/メインテーマ曲 鈴木伸宏&伊藤翔磨
出演:濱津隆之(日暮隆之)、真魚(日暮真央)、しゅはまはるみ(日暮晴美)、秋山ゆずき(松本逢花)、長屋和彰(神谷和明)、細井学(細田学)、市原洋(山ノ内洋)、山崎俊太郎(山越俊助)、大沢真一郎(古沢真一郎)、竹原芳子(笹原芳子)、吉田美紀(吉野美紀)、合田純奈(栗原綾奈)、岩地紗希奈(松浦早希)、山口友和(谷口智和)、藤村拓也(藤丸拓哉)、生見司織(温水栞)、高橋恭子(相田舞)、イワゴウサトシ(黒岡大吾)

山の中の廃墟となった工場。ゾンビが人を襲っていく自主映画の撮影が進んでいた。リアルな演技を要求する監督は俳優になかなかOKを出さない。テイクが重なって現場の疲れもたまってきた。休憩をとったとき、異変が起こる。どういうわけか、本物のゾンビが現われた!次々とスタッフと俳優が襲われ、ゾンビ化してゆく。阿鼻叫喚の中、監督は「本物だ!」と大興奮でカメラを回す。

監督&俳優養成スクール・ENBUゼミナールの“シネマプロジェクト”第7弾作品。2017年11月 初お披露目となった6日間限定の先行上映は大人気で、劇場公開を望む声が殺到。この公開につながりました。これは観た後に、誰かと喋りたくなる作品です。観てない人にはネタバレになってしまうので喋れません。ああ、でも喋りたい、しょうがないので「もいっかい観よ〜」となるはずですよ。ともあれ、最初から37分続くワンカットのゾンビサバイバル映画をよーくご覧くださいね。だんだんわかってくるのですが、これは親子や家族の映画でもあるんです。
「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2018」でゆうばりファンタランド大賞(観客賞)を受賞。各地の映画祭で観客の喝采を受けた理由がわかります。それにしても、こんなにインパクトのあるものを作ってしまった上田慎一郎監督、次がたいへんですね。どんなのが出てくるのか楽しみにしています。
★劇場で販売中のパンフレットにシナリオ(決定稿)が全文、製作日誌も掲載されています。完全ネタバレ仕様なので、鑑賞前に読んではいけません。鑑賞後にニヤニヤと反芻するのをお奨めします。(白)


初日舞台挨拶を書き起こしました。こちらです。

2017年/日本/カラー/シネスコ/96分
配給:ENBUゼミナール
(C)ENBUゼミナール
http://kametome.net/
★2018年6月23日(土)より新宿K'sシネマ、池袋シネマ・ロサにて公開
posted by shiraishi at 14:17| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

世界でいちばん長い写真

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監督・脚本:草野翔吾
原作:誉田哲也
主題歌:Lily's Blow
出演:高杉真宙(内藤宏伸)、武田梨奈(竹中温子)、松本穂香(三好奈々恵)、水野勝(小出智也)、吉沢悠(宮本賢一)、小松政夫(竹中芳郎)

内藤宏伸は高校の写真部に所属しているが、自分が撮りたい!と思うものに出会えない。締め切りにも間に合わず、いつも部長の三好奈々恵に怒られている。奈々恵は人物写真が得意で、部の品評会でも好成績をあげていた。宏伸のいとこの温子は、リサイクル店の店長をしていてときどき宏伸も手伝わされる。お客から預かったままという、これまで見たこともない大きくて古いカメラを見つける。どうやって使うのかさえわからず、温子に勧められて写真店の宮本賢一に尋ねてみた。なんと360度を撮影できるパノラマカメラだということがわかった。初めて撮影して現像できた写真にこれまでにないほど感動する。もっといい写真が撮りたい!さっそく360度写せる場所を探して、町中を自転車で走り回る。

パノラマ写真、今はデジタルカメラでもっと簡単に撮れるらしいですね(やったことはない)。掌にのるくらいの小さなインスタ用のもあるとか。宏伸が苦労して撮影する古いカメラはかなり大きいもので、長〜いフィルムを装てんして、カメラをぐるりと回すものです。現像もたいへんそう。
これで写真の面白さに目覚めた宏伸が、友人や部員ばかりでなく学校全体も巻き込んでいきます。高杉真宙くん演じる内気男子の成長物語ですが、見どころがもうひとつ。武田梨奈さん演じるいとこの温子がとっても男前!宏伸の同級生が恋してしまうくらい、すご〜く魅力的です。お得意のアクションも瓦割りもありませんが、とても色っぽいのでファンは見逃さないで。(白)


2018年/日本/カラー/シネスコ/102分
配給:スターキャスト/キャンター
(C)2018 映画「世界でいちばん長い写真」製作委員会
http://sekachou.com/
★2018年6月23日(土)よりシネ・リーブル池袋、イオンシネマほか全国順次ロードショー
posted by shiraishi at 13:32| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月17日

ガザの美容室   原題, Degrade

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監督・脚本:タルザン&アラブ・ナサール
出演:ヒアム・アッバス、マイサ・アブドゥ・エルハディ、マナル・アワド、ダイナ・シバー、ミルナ・サカラ、ヴィクトリア・バリツカ、他

パレスチナ自治区ガザ。とある美容室。
電話できわどい話をしている肩をはだけた女性。
ロシア語で会話する母と娘。結婚式を目前にしている。
離婚した女性。
女性ばかりの美容室なのに、髪の毛をしっかり隠した敬虔なムスリマ(イスラーム教徒の女性)に、一日祈ってればとからかう女性。
お腹の大きな女性が産気づく。前に流産しているという。
義母やまわりの女性たちが、彼女を病院に連れていかなければとあわてるが、外では銃弾の音。とても連れ出せる状態じゃない。おまけに停電。
やがて、外がさらに騒々しくなり、負傷した男が無理矢理入ってくる。
大慌てで髪の毛や肌を覆う女性たち・・・

美容室に居合わせた13人の女性たちの様々な人生模様。
ずっと聴こえている騒音は、イスラエルの飛ばしたドローンらしい。そして、銃声。
これがパレスチナの日常なのだと思った。
どんなに攻撃されても、たくましく生きていかなければならないのだと。

「あんたらがハマスを選んだから、こんなことに!」
「私は選んでない!」
「ハマスもファタハも、どっちもクソよ」
「ハマスがもたらすのは貧困と破壊。イスラエルはオマケ」
こんな会話が飛び出してきて、てっきり「イスラエルに侵攻されているパレスチナ」を描いた映画だと思っていたのに、実は国内の勢力争いが日常に大きく影響しているパレスチナの縮図がこの美容室なのだと気づいた。
パレスチナの政治状況を知らないと、よくわからない会話なので、以下、プレス資料 川上泰徳氏(中東ジャーナリスト)のレビューより抜粋する。
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ガザとヨルダン川西岸は、1994年にパレスチナ解放機構(PLO)の主流組織「ファタハ」の主導でパレスチナ自治が始まった。2006年のパレスチナ自治評議会選挙で、イスラム組織「ハマス」が「ファタハ」を破って勝利した。2007年夏、ガザではハマスがファタハを排除して支配するようになる。ファタハは腐敗して地元の有力家族と結びつき、マフィアがはびこった。一方のハマスは地域に慈善活動、社会活動、宗教活動で民衆に根をはるイスラム組織であるが、強力な軍事部門を有し、ファタハを排除してからは言論を統制する強権体制をつくっている。
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ガザで生まれ育った双子の監督タルザン&アラブ・ナサールが描きたかったのは、政治的な問題ではなく、パレスチナの人たちの抑圧された中での日常。
撮影準備をしていた2014年7月、イスラエルによるガザ侵攻が始まり、ガザで予定していた撮影を中止。2014年9月から10月にかけてヨルダンのアンマン郊外で撮影を行った。政治的にしたくないため、あえてイスラエルの侵攻については語っていない。

美容室の外にライオンが見えて、ファンタジー?と思ったら、2007年に自治政府ハマスが実際に行った「ライオンに自由を」という作戦に基づいたもの。マフィアが地元の動物園から盗んだライオンの救出作戦。銃弾も嫌だけど、野放しのライオンも怖い。

原題『Degrade』は、フランス語で退廃という意味。その名前をつけたヘアスタイルもあるそうだ。
退廃した政治のせいで、苦しい生活を強いられている女たち。「自分たちで政府を作ればどう?」と、ヒジャブの女性には「宗教問題相」、電話している女性には「通信大臣」と閣僚を割り当てていく。男たちよりも、生活向上に役立つ政府ができるに違いない。(咲)


2015年/パレスチナ・フランス・カタール/84分/アラビア語/1:2.35/5.1ch/DCP
配給:アップリンク
公式サイト:http://www.uplink.co.jp/gaza/
★2018年6月23日(土)より、アップリンク渋谷、新宿シネマカリテほか全国順次公開




posted by sakiko at 21:43| Comment(0) | パレスチナ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする