2018年05月20日

ファントム・スレッド(原題:Phantom Thread)

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監督・脚本・撮影:ポール・トーマス・アンダーソン
衣装:マーク・ブリッジス
音楽:ジョニー・グリーンウッド
出演:ダニエル・デイ=ルイス(レイノルズ・ウッドコック)、ヴィッキー・クリープス(アルマ)、レスリー・マンビル(シリル)、ブライアン・グリーソン(ロバート・ハーディ医師)、カミーラ・ラザフォード(ジョアンナ)

1950年代のロンドン。天才的な仕立て屋のレイノルズはウェイトレスのアルマに目がとまる。自分の仕立てたドレスをまとわせるのぴったりの“完璧な身体”だった。目立たない娘だったアルマはレイノルズのミューズとなり、次々と生み出される美しいドレスをまとって社交界の注目をあびる。ファッション界の中心にいるレイノルズへの注文は途切れることなく続いた。アルマは夢を叶えてくれたレイノルズに身も心も捧げるが、レイノルズにはドレスを作ること以外への興味はなかった。レイノルズを愛してしまったアルマは、不満を募らせる。

『マイ・レフトフット』(1989)、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(2007)、『リンカーン』(2012)と、史上初3度目のアカデミー主演男優賞受賞のダニエル・デイ=ルイスは1957年生まれ。まだ60を過ぎたばかりですが、この作品を最後に俳優業から引退すると表明しています。ますます円熟味が増すでしょうに、なんだかもったいない気がします。ポール・トーマス・アンダーソン監督とは『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』に続き、これが2度目のタッグ。仕事にしか興味のない男と、彼を愛した若い女性との恋愛を古風な設定のもと描いています。アルマ役のヴィッキー・クリープスは『マルクス・エンゲルス』で、マルクスの妻を演じています。美人というより、いちずな感じのする女優さんで、『コロニア』(2015)でも印象的でした。
すばらしい衣装の数々は見ごたえあり、第90回アカデミー賞R衣装デザイン賞を受賞しました。(白)


2017年/アメリカ/カラー/ヴィスタ/130分
配給:ビターズ・エンド、パルコ
(C)2017 Phantom Thread, LLC All Rights Reserved
http://www.phantomthread.jp/
★2018年5月26日(土)より全国ロードショー
posted by shiraishi at 20:00| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ガチ星

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監督:江口カン
脚本:金沢知樹
撮影:許斐孝洋(このみたかひろ)
出演:安部賢一(濱島浩司)、福山翔大(久松孝明)、モロ師岡(校長)、西原誠吾(教官)、博多華丸(ラーメン店店長)、林田麻里、船崎良(選手)、吉澤尚吾(ベテラン選手)

濱島浩司39歳。8年前までプロ野球選手だったが、戦力外通告を受けてその場でやめてしまった。以来酒とパチンコに溺れた自堕落な毎日を送り、妻子は呆れて家を出ていった。実家に戻って親友の店を手伝ってはいるが、とても本業とはいえず母親に金をせびっている始末。ずっと応援してくれたその親友をも裏切り、崖っぷちにいた濱島は、たまたま耳にした競輪に再起をかけようとする。年齢制限はなく、体力には自信のある濱島は競輪学校に入学できた。そこまでは良かったが、周りは若者ばかり。傲慢な彼に年下からのいやがらせが始まる。意地とプライドで厳しい授業に耐えるが、緩みきった心身は音を上げ始める。またしても投げ出そうとしたとき、トップの成績をあげながら一人練習に打ち込む久松の姿に釘付けになる。久松は心身ともに弱ってしまった母親を病院に託し、競輪しかないと悲愴な覚悟で望んでいた。同郷の若者に奮起させられて、ペダルを踏み込む濱島。

この作品に出会って、野球選手の戦力外通告や競輪のことを知りました。小倉が競輪発祥の地で、日本競輪学校は伊豆市にあり女子選手も育成していること。その学校で撮影されています。年齢制限がないので濱島も挑戦できたわけですが、訓練は吐くほど過酷。鬼教官が「もがけ!」と叫んでいましたが、この俳優さん素敵でした。厳しいばかりでなく、後でちゃんといい見せ場があります。校長役のモロ師岡さんもいい味。ラーメン店の店長さん博多華丸さんは次の『めんたいぴりり』で主演。
江口カン監督に初の劇場映画となったこの作品にかけた思いや、キャスティングなどについて伺いました。こちらです。お話しするうちに「ダメな男を甘やかしているのは女です(特に母親)」と意見が一致。私自身もいろいろ心当たりあり。父と息子のエピソードもぐっと来ますので、お楽しみに。(白)


2018年/日本/カラー/シネスコ/110分
配給:マグネタイズ
(C)2017空気/PYLON
http://gachiboshi.jp/
★2018年5月26日(土)より新宿K’sシネマ、小倉昭和館ほかにて全国順次公開
posted by shiraishi at 19:30| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

犬ヶ島(原題:Isle of Dogs)

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監督・脚本:ウェス・アンダーソン
撮影:トリスタン・オリバー
音楽:アレクサンドル・デスプラ
出演:コーユー・ランキン(小林アタリ)、リーブ・シュレイバー(スポッツ)、ブライアン・クランストン(チーフ)、エドワード・ノートン(レックス)、ボブ・バラバン(キング)、ビル・マーレイ(ボス)、ジェフ・ゴールドブラム(デューク)、スカーレット・ヨハンソン(ナツメグ)、ティルダ・スウィントン(オラクル)、野村訓市(小林市長)

20年後の日本。メガ崎市で犬のインフルエンザ“ドッグ病”が大流行し、人間への感染を怖れた小林市長は犬たちをゴミ処理場の島「犬ヶ島」に追放する。事故で両親を亡くし、市長の養子となった12歳の小林アタリは愛犬スポッツを捜し出すため、犬ヶ島へと向かう。寂しいアタリにいつも寄り添って守ってくれたのがスポッツだった。一人乗り込んだ小型飛行機はなんとか犬ヶ島に辿りついた。久しぶりに現われた人間に興味津々の犬たちが遠巻きに眺めている。屋内飼いだったレックス、CM出演したキング、野球チームのマスコット犬だったボス、飼い主が恋しいデューク。元ペットの4匹とノラ犬だったチーフの5匹がアタリに協力してスポッツ捜索を開始する。
一方メガ崎市では、小林政権を批判しドッグ病の治療薬を研究していた渡辺教授が軟禁された。メガ崎高校新聞部のヒロシと留学生のウォーカーは、背後に潜む陰謀をかぎつけ調査を始める。

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(C)2018 Twentieth Century Fox Film Corporation

日本を舞台にしたり、リスペクトした作品はこれでいくつめでしょう。海外の監督さんたちの日本映画や文化への愛は嬉しいようなくすぐったいような気がします<なんで私がそれを言う!?
涙目のワンコに泣けるので、ティッシュやハンカチを忘れずに。これまで遊んでくれたあの子やこの子を思い出しそうな人には必須です。こんな繊細な物語が全てストップモーションアニメ(人形を少しずつ動かして1コマずつ撮影)だとは!犬の毛皮や人間の髪の毛も1本ずつ植え付けているんですよ〜!
20年後の設定ですが、今やあまり見かけない服装の人もいますね。アタリくん足袋と下駄、三船敏郎が好きだという監督のお好みなのかも。小林市長の言い草に、今の日本の状況と良く似ているのでは?と思うのは私だけではないはず。人心を掌握するにはまず「恐怖」からだそうですから、これもセオリーどおり。陰謀に気がついた人間たちとアタリと犬たちがどうやって抵抗するのか?ご注目ください。
豪華な声優陣に目を見張ります。書き切れないほど並んでいます。アンダーソン監督作品に出演したキャストたちが嬉々として集合したのではないでしょうか。日本からのキャストはこちらでお確かめ下さい。
数年前から気になっていたジオラマ・コマ撮りアニメクリエイターのMozuさんもちょびっと参加したそうです。どこに名前があったのか、もう一度観に行こうっと。第68回ベルリン国際映画祭のオープニング作品として上映され、コンペティション部門で監督賞(銀熊賞)を受賞しました。(白)


2018年/アメリカ/カラー/シネスコ/101分
配給:20世紀フォックス映画
(C)2018 Twentieth Century Fox Film Corporation
http://www.foxmovies-jp.com/inugashima/
★2018年5月26日(土)ロードショー
posted by shiraishi at 17:36| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ゲティ家の身代金(原題:All the Money in the World)

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監督:リドリー・スコット
原作:ジョン・ピアソン
脚本:デビッド・スカルパ
撮影:ダリウス・ウォルスキー
音楽:ダニエル・ペンバートン
出演:ミシェル・ウィリアムズ(アビゲイル(ゲイル)・ハリス)、クリストファー・プラマー(ジャン・ポール・ゲティ)、マーク・ウォールバーグ(フレッチャー・チェイス)、ロマン・デュリス(チンクアンタ)、ティモシー・ハットン(オズワルド・ヒンジ)、チャーリー・プラマー(ジャン・ポール・ゲティ3世)、アンドリュー・バカン(ジャン・ポール・ゲティ2世)

1973年7月、ローマで夜の女たちを冷やかしていた少年が拉致された。石油王と呼ばれる大富豪のジャン・ポール・ゲティの17歳の孫ポールだった。ポールの父親とはすでに離婚していた母親ゲイルに、身代金を要求する電話がかかる。犯人たちはゲティ家なら高額な身代金も払えると踏んだのだったが、父と2代で財産を築き上げたゲティは守銭奴で、ほかの孫も狙われるからと支払いに応じない。そのかたわら美術品収集に熱中していた。ゲイルは失望するが、元CIAのチェイスを交渉人に犯人たちと対峙する。犯人たちは、身代金が一向に支払われないのに苛立ち、ポールの髪の毛や身体の一部を切り取って送りつける。

1973年に実際にあった大富豪ジャン・ポール・ゲティの孫が誘拐された事件を映画化したサスペンスドラマ。事件の陰で、犯人とゲティとの両方と戦っていた母親にスポットをあてています。総資産50億ドル(1,4兆円)の大富豪に要求された身代金は1700万ドル(50億円)。そんなにあるなら払ってやればと思うのだけれど、要求に屈すると何度でも狙われると、拒否する祖父。稀代のケチで、ホテルのルームサービスを利用せず自分で洗濯した、客の使う電話代が多いからと、自宅に公衆電話を設置していた、身代金を値切り、節税対策になるよう考えたというのも実話。そんなだから富豪になれたのかも。いやはや。
リドリー・スコット監督のメガホンで撮り終えたものの、公開が1ヵ月後にせまっていたとき、ケティ役のケビン・スペイシーがスキャンダルのため突如降板。すぐに再撮影を決断した監督はクリストファー・プラマーを代役にたて、ケビン・スペイシーが演じた部分を撮り直し、わずか2週間で完成させたそうです。その手腕お見事!ケビン・スペイシーが演じたら、もっと腹黒くな・・・以下略。(白)


2017年/アメリカ/カラー/シネスコ/133分
配給:KADOKAWA
(C)2017 ALL THE MONEY US, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
★2018年5月25日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 16:24| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

友罪

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監督・脚本:瀬々敬久
原作:薬丸岳「友罪」集英社刊
撮影:鍋島淳裕
音楽:半野喜弘
出演:生田斗真(益田純一)、瑛太(鈴木秀人/青柳健太郎)、佐藤浩市(山内修司)、夏帆(藤沢美代子)、山本美月(杉本清美)、富田靖子(白石弥生)、奥野瑛太(清水)、飯田芳(内海)、忍成修吾(達也)、佐藤浩市(山内修司)ほか

益田純一は、出版社で働いていたが、あることからジャーナリストの夢を手放した。所持金も心細くなり、寮のある町工場に勤めることにする。同じ日に入社した鈴木秀人はどこか影があり、益田よりももっと人との距離をとっている。寮でも誰とも関わらず、そんな鈴木を先輩の清水と内海は疎ましく思っていた。2人は鈴木の不在を狙って部屋を物色し、裸婦像の描かれたスケッチブックを見つける。
ある晩、鈴木は男に追いかけられていた若い女性にすがられて、男に一方的になぐられる。鈴木を巻き込んだ女性は、藤沢美代子。追いかけていたのは元彼で、美代子をアダルトビデオに出して金づるにしていたのだ。美代子は自分のことを知っても動揺しない鈴木に好感を持つようになる。
益田は仕事中に機械で指を切断してしまうが、鈴木のおかげで指はつなげることができた。入院中の益田を元彼女だった清美が訪ねてきた。最近起きた児童殺人事件の取材に行き詰まっているという。事件の概要から、17年前の連続児童殺傷事件の犯人の再犯ではないかと噂が流れていた。益田は世間を震撼させた犯人の少年Aこと青柳健太郎の写真に鈴木の面影をみる。

加害者と被害者、そして家族のその後を描いた作品。罪を犯した人は、糾弾され裁かれますが、それだけでは終わりません。亡くなった人は戻らず、時間が経っても癒えない傷は心の奥深くに残ったままです。では刑期を終えて世間に出てきた人は、生きていてはいけないのか、笑ってはいけないのか?罪を償うとはどういうことなのか?それは一生終わらないのか?
タクシー運転手の山内は、交通事故を起こした息子のため家族が離散。謝罪に行っても罵倒されます。何をしようが戻らない子を思うと、目の前にいる山内を責めるしかない家族もまた悲痛。益田と鈴木ばかりではなく、鈴木に出会った美代子も暗い闇を抱えています。医療刑務所で青柳健太郎を担当した白石弥生もまた、少なくない影響を受けていました。どっちを見ても悲しくて、それでも生きていかなければならない・・・人生って理不尽です。
羊の木』でも感じたのですが、自分がどう思うのか深く問いかけられる“踏み絵”のような作品でした。瑛太さんは『光』(2017/大森立嗣監督)よりももっと感情を抑えた演技で、それを受ける生田斗真さんもまた良かったです。(白)


2018年/日本/カラー/シネスコ/129分
配給:ギャガ
(C)薬丸岳/集英社 (C)2018 映画「友罪」製作委員会
http://gaga.ne.jp/yuzai/
★2018年5月25日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 15:17| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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