2018年05月20日

犬ヶ島(原題:Isle of Dogs)

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監督・脚本:ウェス・アンダーソン
撮影:トリスタン・オリバー
音楽:アレクサンドル・デスプラ
出演:コーユー・ランキン(小林アタリ)、リーブ・シュレイバー(スポッツ)、ブライアン・クランストン(チーフ)、エドワード・ノートン(レックス)、ボブ・バラバン(キング)、ビル・マーレイ(ボス)、ジェフ・ゴールドブラム(デューク)、スカーレット・ヨハンソン(ナツメグ)、ティルダ・スウィントン(オラクル)、野村訓市(小林市長)

20年後の日本。メガ崎市で犬のインフルエンザ“ドッグ病”が大流行し、人間への感染を怖れた小林市長は犬たちをゴミ処理場の島「犬ヶ島」に追放する。事故で両親を亡くし、市長の養子となった12歳の小林アタリは愛犬スポッツを捜し出すため、犬ヶ島へと向かう。寂しいアタリにいつも寄り添って守ってくれたのがスポッツだった。一人乗り込んだ小型飛行機はなんとか犬ヶ島に辿りついた。久しぶりに現われた人間に興味津々の犬たちが遠巻きに眺めている。屋内飼いだったレックス、CM出演したキング、野球チームのマスコット犬だったボス、飼い主が恋しいデューク。元ペットの4匹とノラ犬だったチーフの5匹がアタリに協力してスポッツ捜索を開始する。
一方メガ崎市では、小林政権を批判しドッグ病の治療薬を研究していた渡辺教授が軟禁された。メガ崎高校新聞部のヒロシと留学生のウォーカーは、背後に潜む陰謀をかぎつけ調査を始める。

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(C)2018 Twentieth Century Fox Film Corporation

日本を舞台にしたり、リスペクトした作品はこれでいくつめでしょう。海外の監督さんたちの日本映画や文化への愛は嬉しいようなくすぐったいような気がします<なんで私がそれを言う!?
涙目のワンコに泣けるので、ティッシュやハンカチを忘れずに。これまで遊んでくれたあの子やこの子を思い出しそうな人には必須です。こんな繊細な物語が全てストップモーションアニメ(人形を少しずつ動かして1コマずつ撮影)だとは!犬の毛皮や人間の髪の毛も1本ずつ植え付けているんですよ〜!
20年後の設定ですが、今やあまり見かけない服装の人もいますね。アタリくん足袋と下駄、三船敏郎が好きだという監督のお好みなのかも。小林市長の言い草に、今の日本の状況と良く似ているのでは?と思うのは私だけではないはず。人心を掌握するにはまず「恐怖」からだそうですから、これもセオリーどおり。陰謀に気がついた人間たちとアタリと犬たちがどうやって抵抗するのか?ご注目ください。
豪華な声優陣に目を見張ります。書き切れないほど並んでいます。アンダーソン監督作品に出演したキャストたちが嬉々として集合したのではないでしょうか。日本からのキャストはこちらでお確かめ下さい。
数年前から気になっていたジオラマ・コマ撮りアニメクリエイターのMozuさんもちょびっと参加したそうです。どこに名前があったのか、もう一度観に行こうっと。第68回ベルリン国際映画祭のオープニング作品として上映され、コンペティション部門で監督賞(銀熊賞)を受賞しました。(白)


2018年/アメリカ/カラー/シネスコ/101分
配給:20世紀フォックス映画
(C)2018 Twentieth Century Fox Film Corporation
http://www.foxmovies-jp.com/inugashima/
★2018年5月26日(土)ロードショー
posted by shiraishi at 17:36| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ゲティ家の身代金(原題:All the Money in the World)

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監督:リドリー・スコット
原作:ジョン・ピアソン
脚本:デビッド・スカルパ
撮影:ダリウス・ウォルスキー
音楽:ダニエル・ペンバートン
出演:ミシェル・ウィリアムズ(アビゲイル(ゲイル)・ハリス)、クリストファー・プラマー(ジャン・ポール・ゲティ)、マーク・ウォールバーグ(フレッチャー・チェイス)、ロマン・デュリス(チンクアンタ)、ティモシー・ハットン(オズワルド・ヒンジ)、チャーリー・プラマー(ジャン・ポール・ゲティ3世)、アンドリュー・バカン(ジャン・ポール・ゲティ2世)

1973年7月、ローマで夜の女たちを冷やかしていた少年が拉致された。石油王と呼ばれる大富豪のジャン・ポール・ゲティの17歳の孫ポールだった。ポールの父親とはすでに離婚していた母親ゲイルに、身代金を要求する電話がかかる。犯人たちはゲティ家なら高額な身代金も払えると踏んだのだったが、父と2代で財産を築き上げたゲティは守銭奴で、ほかの孫も狙われるからと支払いに応じない。そのかたわら美術品収集に熱中していた。ゲイルは失望するが、元CIAのチェイスを交渉人に犯人たちと対峙する。犯人たちは、身代金が一向に支払われないのに苛立ち、ポールの髪の毛や身体の一部を切り取って送りつける。

1973年に実際にあった大富豪ジャン・ポール・ゲティの孫が誘拐された事件を映画化したサスペンスドラマ。事件の陰で、犯人とゲティとの両方と戦っていた母親にスポットをあてています。総資産50億ドル(1,4兆円)の大富豪に要求された身代金は1700万ドル(50億円)。そんなにあるなら払ってやればと思うのだけれど、要求に屈すると何度でも狙われると、拒否する祖父。稀代のケチで、ホテルのルームサービスを利用せず自分で洗濯した、客の使う電話代が多いからと、自宅に公衆電話を設置していた、身代金を値切り、節税対策になるよう考えたというのも実話。そんなだから富豪になれたのかも。いやはや。
リドリー・スコット監督のメガホンで撮り終えたものの、公開が1ヵ月後にせまっていたとき、ケティ役のケビン・スペイシーがスキャンダルのため突如降板。すぐに再撮影を決断した監督はクリストファー・プラマーを代役にたて、ケビン・スペイシーが演じた部分を撮り直し、わずか2週間で完成させたそうです。その手腕お見事!ケビン・スペイシーが演じたら、もっと腹黒くな・・・以下略。(白)


2017年/アメリカ/カラー/シネスコ/133分
配給:KADOKAWA
(C)2017 ALL THE MONEY US, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
★2018年5月25日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 16:24| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

友罪

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監督・脚本:瀬々敬久
原作:薬丸岳「友罪」集英社刊
撮影:鍋島淳裕
音楽:半野喜弘
出演:生田斗真(益田純一)、瑛太(鈴木秀人/青柳健太郎)、佐藤浩市(山内修司)、夏帆(藤沢美代子)、山本美月(杉本清美)、富田靖子(白石弥生)、奥野瑛太(清水)、飯田芳(内海)、忍成修吾(達也)、佐藤浩市(山内修司)ほか

益田純一は、出版社で働いていたが、あることからジャーナリストの夢を手放した。所持金も心細くなり、寮のある町工場に勤めることにする。同じ日に入社した鈴木秀人はどこか影があり、益田よりももっと人との距離をとっている。寮でも誰とも関わらず、そんな鈴木を先輩の清水と内海は疎ましく思っていた。2人は鈴木の不在を狙って部屋を物色し、裸婦像の描かれたスケッチブックを見つける。
ある晩、鈴木は男に追いかけられていた若い女性にすがられて、男に一方的になぐられる。鈴木を巻き込んだ女性は、藤沢美代子。追いかけていたのは元彼で、美代子をアダルトビデオに出して金づるにしていたのだ。美代子は自分のことを知っても動揺しない鈴木に好感を持つようになる。
益田は仕事中に機械で指を切断してしまうが、鈴木のおかげで指はつなげることができた。入院中の益田を元彼女だった清美が訪ねてきた。最近起きた児童殺人事件の取材に行き詰まっているという。事件の概要から、17年前の連続児童殺傷事件の犯人の再犯ではないかと噂が流れていた。益田は世間を震撼させた犯人の少年Aこと青柳健太郎の写真に鈴木の面影をみる。

加害者と被害者、そして家族のその後を描いた作品。罪を犯した人は、糾弾され裁かれますが、それだけでは終わりません。亡くなった人は戻らず、時間が経っても癒えない傷は心の奥深くに残ったままです。では刑期を終えて世間に出てきた人は、生きていてはいけないのか、笑ってはいけないのか?罪を償うとはどういうことなのか?それは一生終わらないのか?
タクシー運転手の山内は、交通事故を起こした息子のため家族が離散。謝罪に行っても罵倒されます。何をしようが戻らない子を思うと、目の前にいる山内を責めるしかない家族もまた悲痛。益田と鈴木ばかりではなく、鈴木に出会った美代子も暗い闇を抱えています。医療刑務所で青柳健太郎を担当した白石弥生もまた、少なくない影響を受けていました。どっちを見ても悲しくて、それでも生きていかなければならない・・・人生って理不尽です。
羊の木』でも感じたのですが、自分がどう思うのか深く問いかけられる“踏み絵”のような作品でした。瑛太さんは『光』(2017/大森立嗣監督)よりももっと感情を抑えた演技で、それを受ける生田斗真さんもまた良かったです。(白)


2018年/日本/カラー/シネスコ/129分
配給:ギャガ
(C)薬丸岳/集英社 (C)2018 映画「友罪」製作委員会
http://gaga.ne.jp/yuzai/
★2018年5月25日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 15:17| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年05月13日

いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち  原題:Smetto quando voglio - Masterclass

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監督・原案・脚本けシドニー・シビリア
出演:エドアルド・レオ(『おとなの事情』)、ルイジ・ロ・カーショ(『夜よ、こんにちは』、『人間の値打ち』)、ステファノ・フレージ、グレタ・スカラーノ、ヴァレリア・ソラリーノ

神経生物学者のピエトロ・ズィンニ(エドアルド・レオ)は、研究者仲間と合法ドラッグを製造してひと儲けしようとするも逮捕され収監されていた。一方、新型ドラッグが蔓延して、摘発に苦慮していたパオラ・コレッティ警部(グレタ・スカラノ)は、研究者たちに犯罪履歴を帳消しにする代わりに、捜査に協力してほしいと持ちかける。
ピエトロは合法ドラッグの研究者仲間を再結集。さらに、国外に頭脳流出していた研究者3人を呼び寄せ、総勢10人で30種類のスマートドラッグ撲滅に向けて奔走する・・・

本作は、『いつだってやめられる 7 人の危ない教授たち』(2014年)の続編。
2009年にギリシャで始まった欧州危機がイタリアにもおよび、大学研究者たちも収入をカットされたり、職を失ったりする者が続出。前作は、研究者たちが結集して、その才能を活かして合法ドラッグを開発するも逮捕されてしまったという物語。
続編である本作は、収監されている場面から始まります。
監督は、最初から『いつだってやめられる』3部作を考えていたとのことで、この10人は完結編では何をしでかしてくれるのでしょう・

それにしても、これがイタリアらしい風刺コメディ? 笑いのツボが、日本人とはどうも違うような気がします。
マグレブ人は騒がしい、アラブ人は数字に強い、アルバニア人と騒ぎを起こせば、また収監される・・・などなど、イタリアの刑務所も国際色豊かなのが垣間見られます。
研究者仲間を集結させるのにあたって、あいつはトルコとシリア国境での紛争鎮圧に参加しているに違いないなんて言葉も。社会問題も、ちらりと盛り込んでます。(咲)


イタリア映画祭2017出品作品

2017年/イタリア/イタリア語/119分/シネスコ/カラー
配給:シンカ
公式サイト:http://www.synca.jp/itsudatte/
★2018年5月26日(土)よりBunkamuraル・シネマほか全国ロードショー








posted by sakiko at 21:57| Comment(0) | イタリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『29歳問題』  原題『29+1』(香港)

2018年5月19日(土)、ロードショー! YEBISU GARDEN CINEMA他.

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(c) 2017 China 3D Digital Entertainment Limited

監督・脚本 彭秀慧(キーレン・パン)
撮影ジェイソン・クワン
音楽アラン・ウォン、ジャネット・ユン
挿入歌:レスリー・チャン、レオン・ライ、ビヨンドほか
出演 
クリスティ役   周秀娜(クリッシー・チャウ)
ウォン・ティンロ 鄭欣宜(ジョイス・チェン) 
チョン・ホンミン  蔡瀚億(ベビージョン・チョイ)
ヨン・チーホウ   楊尚斌(ベン・ヨン)
エレイン   金燕玲 (エレイン・チン) 
家主   林海峰 (ジャン・ラム)
タクシー運転手  葛民輝 (エリック・コット)
レコード店店主 鄭丹瑞 (ローレンス・チェン)

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(c) 2017 China 3D Digital Entertainment Limited
 
1ヶ月後に30歳の誕生日を迎える女性の心の葛藤がテーマ。
1975年生まれのクリスティ(クリッシー・チャウ)は、おしゃれな一人暮らしを楽しんでいるように見えるけど、30歳の大台に乗ったら女は終わりと焦っていた。しかし、仕事は順調。突然の抜擢で責任ある仕事を任され、ストレスが増大する。長年付き合っていた彼とは、忙しさの中、歯車が噛み合わなくなってしまい別れてしまった。先行き不安な時に認知症の父親が急逝。更に会社を結局やめることに。そして、雨漏りのひどいアパートで文句を言ったら、突然アパートを追い出されるはめに。
さんざんな目にあったけど、大家の甥の友人であるティンロ(ジョイス・チェン)がパリ旅行で不在の間、彼女の家に1ヶ月住まわせてもらうことに。ティンロがパリに1ヶ月旅行する間「部屋代が旅行費の足しになれば」と貸してもらったのだ。彼女の部屋は、壁にエッフェル塔を形どりたくさんの写真を貼り、80年代のレコードがたくさんあった。レコード店に勤めるティンロが収集したものだった。この部屋で「自伝」と称された彼女の日記をみつけ読み始める。そして、ティンロが偶然、自分と同じ誕生日だとわかり、自分と彼女を重ね合わせていく。クリスティは短気で怒りんぼう。なんでもせかせかしないと気がすまない。ティンロはふんわかしたのんびり屋でマイペースな人柄。正反対な性格なのに、日記を読んで、彼女の思いに共鳴する。

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(c) 2017 China 3D Digital Entertainment Limited

監督のキーレン・パンは舞台女優で、脚本や演技指導までこなす。初脚本はパン・ホーチョン監督の『イサベラ』。
本作はもともとキーレン・パン監督が演じていた芝居。主人公をキーレン・パン監督自身が一人二役で演じていた一人芝居を自身の手により映画化したもの。映画版では2人の役者が演じた。時代は10年くらい前を設定。
クリスティを演じるのは、香港の若手人気No.1のクリッシー・チャウ。ティンロを演じるのは香港芸能界のサラブレッド、ジョイス・チェン(沈殿霞/リディア・サムと鄭少秋/アダム・チェンの娘)。舞台演劇的な作りと、映画だからこそできる映像のミックスを楽しめる。
去年(2017)3月に開催された「大阪アジアン映画祭」で観客賞を受賞。
2018年4月15日に行われた第37回香港電影金像獎で、最優秀新人監督賞を受賞。

1980年代から90年代の香港芸能界の出来事や、主人公のティンロがTVで放映されたレスリーの「日落巴黎(夕暮れのパリ?)」で夢見たパリへ行ったり、そして最後、エッフェル塔の下でクリスティとティンロが二人で歩いていくシーン(夢?)には、レスリー・チャンの「由零開始(0から始めよう)」がフルバージョンで流れる。また、亡くなった香港歌手へのオマージュがあったり(張国栄、陳百強、黄家駒の話題)と、香港芸能にハマっている人にとっては親しい話題が含まれていたのでシンパシーを感じると思います。地下鉄のシーンではBYONDの黄家駒が歌う「早班火車」が流れ、日本のTVのバラエティ番組内での事故で亡くなった彼をそっと偲びました。
友人の誕生日に送られた『花様年華』のポスターネタも伏線だったし、二人が知らぬ間に出会っていたというのがだんだんにわかってくるシーンの作りもうまいと思いました。
 レスリーの話題が多かったので、監督はレスリーのファンかと思ったのですが、大家さん(林海峰/ジャン・ラム)とタクシー運転手(葛民輝/エリック・コット)を演じていたラップコンビ軟硬天師のファンだそうです。エッフェル塔のシーンで「由零開始」がフルバージョンで流れるので、レスリーファンは感涙もの。また、監督は香港の映画界も、ミュージックシーンも一番輝いていた時代に育ったんだなと思います。 そういうところが香港芸能ファンには嬉しいところではありますが、30歳を目前にした女性の揺れる心というのは万国共通。それがうまく表現されていました。最近、日本でもTV(NHK「デイジー・ラック」)や映画(『見栄を張る』)で、30歳を目前にした女性たちの真情を描いた作品がありました(暁)。

5月11日に発行されたシネマジャーナル101号にキーレン・パン監督インタビュー記事が掲載されています。
またシネマジャーナルHPでもキーレン・パン監督インタビュー記事を見ることができます。
http://www.cinemajournal.net/special/2017/aichi/index03.html

●『29+1』キーレン・パン監督.jpg
キーレン・パン監督(大阪アジアン映画祭2017にて)
公式HP:29saimondai.com
2017年/香港/広東語/111分/字幕翻訳:鈴木真理子
配給 ザジフィルムズ、ポリゴンマジック
posted by akemi at 20:43| Comment(0) | 香港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする