2018年05月27日
レディ・バード 原題:Lady Bird
監督・脚本:グレタ・ガーウィグ
出演:シアーシャ・ローナン、ローリー・メトカーフ、トレイシー・レッツ、ルーカス・ヘッジズ、ティモシー・シャラメ、ビーニー・フェルドスタイン、スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン、ロイス・スミス
2002年、カリフォルニア州サクラメント。クリスティンはカトリック系の高校で最後の年を迎えていた。クリスティンは「私は今日からレディ・バード」と、親友ジュリーをはじめ周りの人たちにそう呼ばせる。
ある日、母マリオンと地元の大学を見学に行った帰り道、「私はニューヨークの大学に行きたいの」と言って、地元にいてほしい母と大喧嘩。車から飛び降りて右腕を骨折。ピンクのギブスに「くたばれママ」と書く。そんな彼女を失業中の父ラリーは、東部の大学に入るための助成金を申請して、こっそり応援している。
シスターに勧められて参加したミュージカルのオーディションに受かり、練習中に親しくなったダニーと高校のダンスパーティの後に初キス。ダニーの祖母の家が憧れの豪邸と知って、有頂天になるクリスティン。順調に彼との恋をはぐくむが、ミュージカル本番の終わった夜、ダニーが男の子とキスしているのを見てしまう。
年が明けて、カフェでアルバイトを始めたクリスティン。以前、ダニーと行ったライブでクールな演奏をしていた美青年カイルがカフェにやってくる。デートの約束をして心浮き立つクリスティン。学校では、カイルと同じ人気グループにいる派手なジェナとつるむようになって、親友ジュリーとは疎遠になる・・・
『フランシス・ハ』で、不器用だけど愛すべきフランシスを演じた女優グレタ・ガーウィグが、故郷サクラメントへの愛を込めて、自身の高校時代の体験も盛り込んで監督・脚本を手掛けた物語。
バグダードで米兵が大勢犠牲になったというニュースが流れて、9.11同時多発テロのあと、アメリカ社会が大きく変わった時期だとわかります。でも、まだスマホはない時代。
クリスティンの初キスの相手ダニーが、男の子とキスしている場面がありますが、当時はまだLGBTQの認知度も低くて、権利も認められてなかったのでした。
『君の名前で僕を呼んで』で初々しい美少年を演じていたティモシー・シャラメが、本作ではちょっと鼻持ちならないプレイボーイの美青年。これも本作の見どころ。
高校卒業を目前にして、これからの進路をどうするか惑う時期。少女から大人の女性へと脱皮していく年頃で、クリスティンも初恋、初キス、そして初体験と段階を踏んでいきます。一方で、そんな年頃の娘を持つ母親の思いもずっしり描かれています。
そして、アメリカの高校生にとって大切なプロム(学年の最後に開かれるフォーマルなダンスパーティー)にどんなドレスを着て、誰と行くかは本人にも母親にも大問題。クリスティンの最後の選択がとても素敵です。
映画の最後に、「愛してる、ママ、ありがとう」のメッセージ。いろんなことを描きたかったけど、一番は、ちょっと反発したこともあるママへの思いなのだなと! (咲)
c 2017 InterActiveCorp Films, LLC.
シネマジャーナル Annually Vol.1 通算101号(2018年4月発行)に、アメリカ・カリフォルニア州在住の斉藤愛さんの「桑港ベイエリア便り」の中で、『レディ・バード』の素敵な評を掲載しています。
☆第75回ゴールデン・グローブ賞作品賞、主演女優賞
2017年/アメリカ/ビスタサイズ/ドルビーデジタル/94分
配給:東宝東和
公式サイト:http://ladybird-movie.jp/
★2018年6月1日(金)より、TOHOシネマズシャンテ他にて全国ロードショー
デッドプール2(原題:Deadpool 2)
監督:デヴィッド・リーチ
脚本:レット・リース、ポール・ワーニック、ライアン・レイノルズ
撮影:ジョナサン・セラ
音楽:タイラー・ベイツ
出演:ライアン・レイノルズ(ウェイド・ウィルソン/デッドプール)、ジョシュ・ブローリン(ケーブル)、モリーナ・バッカリン(ヴァネッサ)、ジュリアン・デニソン(ラッセル/ファイヤーフィスト)、ザジー・ビーツ(ドミノ)、T・J・ミラー(ウィーゼル)、レスリー・アガムズ(ブラインド・アル)、ブリアナ・ヒルデブランド(ネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッド)、カラン・ソーニ(ドーピンダー)、ジャック・ケシー(ブラック・トム)、忽那汐里(ユキオ)
愛するヴァネッサを取り戻し、ラブラブの毎日を満喫するデップー。身体の半分が機械のケーブルが未来からやってきて、その平穏は破られる。ケーブルはある目的のために、ラッセルという少年を消そうとしていた。ヴァネッサの望みにこたえて、デップーは少年をケーブルの魔の手から救おうと決心する。ラッセルは超能力を持つ孤児ばかりが収容されている施設にいた。一人では無理と判断したデップーは、ケーブルに対抗できる能力を持った仲間を募集する。新聞広告で集まってきたのは、箸にも棒にもかからなそうなヤツばかり。デップーは正義のヒーローになれるのか?
2016年に公開された第1弾はR15指定にも関わらず、世界中でヒットしました。日本語字幕でデップー(これが日本での通り名のようです)は、自分を「俺ちゃん」と呼んでいます。日本の宣伝さん?字幕の方?グッジョブです。もうこれ以外に考えられません。続編の本作では、デップーは“ぼっち”から抜け出て、スペシャルチームを作ろうとするのですが、さて。
監督は『ジョン・ウィック』『アトミック・ブロンド』のデヴィッド・リーチに交代。アクションがものすごく派手で、見ごたえのあるものになっています。きっと予算が大幅増だったのね。あいかわらず血みどろになるグロい描写や下ネタがあるので、R15+は変わりません。
謎の超能力少年ラッセルはニュージーランド出身のジュリアン・デニソン、撮影時15歳です。ケーブル役のジョシュ・ブローリンは公開中の『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』のサノスについで、強力な悪役。『グーニーズ』(1985)ではハンサムなお兄ちゃんでしたが、もう30年以上経っているのでした。忽那汐里さんが初参加、可愛らしさを振りまいています。ネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッドの恋人ということで、レズビアンなのです。デップーはコロサスのお尻をさわりまくっていますし、マーベルはオープンなんですね。(白)
2018年/アメリカ/カラー/シネスコ/120分/R15+
配給:20世紀フォックス
(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved
http://www.foxmovies-jp.com/deadpool/
★2018年6月1日(土)ロードショー
50回目のファーストキス
監督・脚本:福田雄一
オリジナル脚本:ジョージ・ウィング
撮影:工藤哲也、鈴木靖之
音楽:瀬川英史
主題歌:平井堅
出演:山田孝之(弓削大輔)、長澤まさみ(藤島瑠衣)、ムロツヨシ(ウーラ山崎)、勝矢(味方和彦)、太賀(藤島慎太郎)、山崎紘菜(高頭すみれ)、大和田伸也(名取医師)、佐藤二朗(藤島健太)
ハワイ オアフ島。旅行客のツアーガイドをしている弓削大輔(ゆげだいすけ)は、女性客にモテモテ。自分から誘わずとも寄ってくるのだと豪語していた大輔は、カフェで見かけた女性に一目ぼれする。彼女は藤島瑠衣。話が弾んで、いい気分で翌日も同じカフェを訪ねると、瑠衣は大輔のことを全く覚えていなかった。瑠衣は交通事故の後遺症で、新しい記憶が一日しか持たなかったのだ。父と弟が瑠衣のために、苦心して同じ日を繰り返していた。大輔は事情を知って、毎日毎日白紙に戻ってしまう瑠衣に告白し続ける。
2004年アダム・サンドラー&ドリュー・バリモア主演の同名のハリウッド映画を、福田雄一監督のメガホンでリメイク。闇金ウシジマくんのイメージがまだ強い(私には)山田孝之さんが女たらしの大輔。長澤まさみさんが、眠っておきると記憶が消えている藤島瑠衣。ショートパンツ姿で綺麗な足を見せています。コメディもいけますねぇ。
アダム・サンドラーは一人でコメディ部分を請け負っていた印象ですが、本作ではお父さん役の佐藤二朗さん、弟役の太賀さん、友人役のムロツヨシさんが2人の援護射撃をしています。舞台挨拶で「長澤まさみさんとの共演(キスシーンがいっぱいある)はこれまでのごほうび」と山田さん。正直〜。(白)
2018年/日本/カラー/シネスコ/114分
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
(C)2018「50回目のファーストキス」製作委員会
http://50kiss.jp/
★2018年6月1日(金)ロードショー
2018年05月20日
ファントム・スレッド(原題:Phantom Thread)
監督・脚本・撮影:ポール・トーマス・アンダーソン
衣装:マーク・ブリッジス
音楽:ジョニー・グリーンウッド
出演:ダニエル・デイ=ルイス(レイノルズ・ウッドコック)、ヴィッキー・クリープス(アルマ)、レスリー・マンビル(シリル)、ブライアン・グリーソン(ロバート・ハーディ医師)、カミーラ・ラザフォード(ジョアンナ)
1950年代のロンドン。天才的な仕立て屋のレイノルズはウェイトレスのアルマに目がとまる。自分の仕立てたドレスをまとわせるのぴったりの“完璧な身体”だった。目立たない娘だったアルマはレイノルズのミューズとなり、次々と生み出される美しいドレスをまとって社交界の注目をあびる。ファッション界の中心にいるレイノルズへの注文は途切れることなく続いた。アルマは夢を叶えてくれたレイノルズに身も心も捧げるが、レイノルズにはドレスを作ること以外への興味はなかった。レイノルズを愛してしまったアルマは、不満を募らせる。
『マイ・レフトフット』(1989)、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(2007)、『リンカーン』(2012)と、史上初3度目のアカデミー主演男優賞受賞のダニエル・デイ=ルイスは1957年生まれ。まだ60を過ぎたばかりですが、この作品を最後に俳優業から引退すると表明しています。ますます円熟味が増すでしょうに、なんだかもったいない気がします。ポール・トーマス・アンダーソン監督とは『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』に続き、これが2度目のタッグ。仕事にしか興味のない男と、彼を愛した若い女性との恋愛を古風な設定のもと描いています。アルマ役のヴィッキー・クリープスは『マルクス・エンゲルス』で、マルクスの妻を演じています。美人というより、いちずな感じのする女優さんで、『コロニア』(2015)でも印象的でした。
すばらしい衣装の数々は見ごたえあり、第90回アカデミー賞R衣装デザイン賞を受賞しました。(白)
2017年/アメリカ/カラー/ヴィスタ/130分
配給:ビターズ・エンド、パルコ
(C)2017 Phantom Thread, LLC All Rights Reserved
http://www.phantomthread.jp/
★2018年5月26日(土)より全国ロードショー
ガチ星
監督:江口カン
脚本:金沢知樹
撮影:許斐孝洋(このみたかひろ)
出演:安部賢一(濱島浩司)、福山翔大(久松孝明)、モロ師岡(校長)、西原誠吾(教官)、博多華丸(ラーメン店店長)、林田麻里、船崎良(選手)、吉澤尚吾(ベテラン選手)
濱島浩司39歳。8年前までプロ野球選手だったが、戦力外通告を受けてその場でやめてしまった。以来酒とパチンコに溺れた自堕落な毎日を送り、妻子は呆れて家を出ていった。実家に戻って親友の店を手伝ってはいるが、とても本業とはいえず母親に金をせびっている始末。ずっと応援してくれたその親友をも裏切り、崖っぷちにいた濱島は、たまたま耳にした競輪に再起をかけようとする。年齢制限はなく、体力には自信のある濱島は競輪学校に入学できた。そこまでは良かったが、周りは若者ばかり。傲慢な彼に年下からのいやがらせが始まる。意地とプライドで厳しい授業に耐えるが、緩みきった心身は音を上げ始める。またしても投げ出そうとしたとき、トップの成績をあげながら一人練習に打ち込む久松の姿に釘付けになる。久松は心身ともに弱ってしまった母親を病院に託し、競輪しかないと悲愴な覚悟で望んでいた。同郷の若者に奮起させられて、ペダルを踏み込む濱島。
この作品に出会って、野球選手の戦力外通告や競輪のことを知りました。小倉が競輪発祥の地で、日本競輪学校は伊豆市にあり女子選手も育成していること。その学校で撮影されています。年齢制限がないので濱島も挑戦できたわけですが、訓練は吐くほど過酷。鬼教官が「もがけ!」と叫んでいましたが、この俳優さん素敵でした。厳しいばかりでなく、後でちゃんといい見せ場があります。校長役のモロ師岡さんもいい味。ラーメン店の店長さん博多華丸さんは次の『めんたいぴりり』で主演。
江口カン監督に初の劇場映画となったこの作品にかけた思いや、キャスティングなどについて伺いました。こちらです。お話しするうちに「ダメな男を甘やかしているのは女です(特に母親)」と意見が一致。私自身もいろいろ心当たりあり。父と息子のエピソードもぐっと来ますので、お楽しみに。(白)
2018年/日本/カラー/シネスコ/110分
配給:マグネタイズ
(C)2017空気/PYLON
http://gachiboshi.jp/
★2018年5月26日(土)より新宿K’sシネマ、小倉昭和館ほかにて全国順次公開