監督・脚本:グレタ・ガーウィグ
出演:シアーシャ・ローナン、ローリー・メトカーフ、トレイシー・レッツ、ルーカス・ヘッジズ、ティモシー・シャラメ、ビーニー・フェルドスタイン、スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン、ロイス・スミス
2002年、カリフォルニア州サクラメント。クリスティンはカトリック系の高校で最後の年を迎えていた。クリスティンは「私は今日からレディ・バード」と、親友ジュリーをはじめ周りの人たちにそう呼ばせる。
ある日、母マリオンと地元の大学を見学に行った帰り道、「私はニューヨークの大学に行きたいの」と言って、地元にいてほしい母と大喧嘩。車から飛び降りて右腕を骨折。ピンクのギブスに「くたばれママ」と書く。そんな彼女を失業中の父ラリーは、東部の大学に入るための助成金を申請して、こっそり応援している。
シスターに勧められて参加したミュージカルのオーディションに受かり、練習中に親しくなったダニーと高校のダンスパーティの後に初キス。ダニーの祖母の家が憧れの豪邸と知って、有頂天になるクリスティン。順調に彼との恋をはぐくむが、ミュージカル本番の終わった夜、ダニーが男の子とキスしているのを見てしまう。
年が明けて、カフェでアルバイトを始めたクリスティン。以前、ダニーと行ったライブでクールな演奏をしていた美青年カイルがカフェにやってくる。デートの約束をして心浮き立つクリスティン。学校では、カイルと同じ人気グループにいる派手なジェナとつるむようになって、親友ジュリーとは疎遠になる・・・
『フランシス・ハ』で、不器用だけど愛すべきフランシスを演じた女優グレタ・ガーウィグが、故郷サクラメントへの愛を込めて、自身の高校時代の体験も盛り込んで監督・脚本を手掛けた物語。
バグダードで米兵が大勢犠牲になったというニュースが流れて、9.11同時多発テロのあと、アメリカ社会が大きく変わった時期だとわかります。でも、まだスマホはない時代。
クリスティンの初キスの相手ダニーが、男の子とキスしている場面がありますが、当時はまだLGBTQの認知度も低くて、権利も認められてなかったのでした。
『君の名前で僕を呼んで』で初々しい美少年を演じていたティモシー・シャラメが、本作ではちょっと鼻持ちならないプレイボーイの美青年。これも本作の見どころ。
高校卒業を目前にして、これからの進路をどうするか惑う時期。少女から大人の女性へと脱皮していく年頃で、クリスティンも初恋、初キス、そして初体験と段階を踏んでいきます。一方で、そんな年頃の娘を持つ母親の思いもずっしり描かれています。
そして、アメリカの高校生にとって大切なプロム(学年の最後に開かれるフォーマルなダンスパーティー)にどんなドレスを着て、誰と行くかは本人にも母親にも大問題。クリスティンの最後の選択がとても素敵です。
映画の最後に、「愛してる、ママ、ありがとう」のメッセージ。いろんなことを描きたかったけど、一番は、ちょっと反発したこともあるママへの思いなのだなと! (咲)

c 2017 InterActiveCorp Films, LLC.
シネマジャーナル Annually Vol.1 通算101号(2018年4月発行)に、アメリカ・カリフォルニア州在住の斉藤愛さんの「桑港ベイエリア便り」の中で、『レディ・バード』の素敵な評を掲載しています。
☆第75回ゴールデン・グローブ賞作品賞、主演女優賞
2017年/アメリカ/ビスタサイズ/ドルビーデジタル/94分
配給:東宝東和
公式サイト:http://ladybird-movie.jp/
★2018年6月1日(金)より、TOHOシネマズシャンテ他にて全国ロードショー