2018年04月29日

ラジオ・コバニ  (原題:Radio Kobani)

radio kobani.jpg

監督・脚本:ラベー・ドスキー

トルコとの国境に近いシリア北部のクルド人の町コバニ。2014年9月、過激派組織「イスラム国」(IS)の占領下となる。クルド人民防衛隊(YPG)は激しく反撃する。果敢に町を守るために闘う女性たちもいる。連合軍の空爆支援も得て、2015年1月にISから解放され、人々は瓦礫と化したコバニに戻って来る。

本作は、まだ戦闘の続く2014年に、ラジオ局を立ち上げ、「おはよう コバニ」の放送を始めた女性ディロバン・キコを3年間にわたって追ったドキュメンタリー。
ディロバンは、アレッポの大学で教師を目指して勉学に励んでいたが、戦争のせいで学業を中断し、コバニに戻る。そのコバニもISの占領下となり、トルコに避難するが、コバニの情報が入らず、町を守るために戦っている父と兄のことが心配でならなかった。そんな思いがあって、コバニに戻ったとき、皆に情報を流そうと友人たちとラジオ局を立ち上げる・・・

映画は「まだ生まれていない子供への手紙」を軸に綴られています。ラベー・ドスキー監督が、新しい世代のメタファーとして、ディロバンに手紙を書くよう依頼したもの。映画は彼女の結婚式で終わります。ほんとに、やがて生まれてくる子供への手紙になったのです。
戦争のせいで学業を中断したディロバンですが、その後、短期間の教習コースを修了し、今はラジオを辞めて、小学校の教師になるという夢を叶えました。ラジオは彼女の友人たちが続けています。
ISから町を取り戻したとはいえ、トルコ国境に近いコバニは、いまだに落ち着きません。
SNSの情報が人々を繋いでいますが、ラジオから流れてくる生の声で語られる情報は、心のよりどころ。
コバニの人たち、シリアの人たち、そして世界の紛争下で暮らしているすべての人たちが、平穏に暮らせる日の来ることを願ってやみません。(咲)


2016年/オランダ/69分/クルド語/2.39:1/カラー/ステレオ/DCP
配給:アップリンク
公式サイト:http://www.uplink.co.jp/kobani/
★2018年5月12日(土)より、アップリンク渋谷、ポレポレ東中野ほか全国順次公開







posted by sakiko at 10:18| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ホース・ソルジャー  (原題:12 Strong)

horse sorjuor.jpg

監督:ニコライ・フルシー、
原作:ダグ・スタントン「ホース・ソルジャー」(2009年)(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
出演:クリス・ヘムズワース、マイケル・シャノン、マイケル・ペーニャ、トレバンテ・ローズ

2001年9月11日、アメリカ同時多発テロ勃発。衝撃の映像が世界を震撼させた翌日、テロの首謀者ビンラディンと彼が支援してきたタリバンへの反撃部隊が結成される。
ミッチ・ネルソン大尉(クリス・ヘムズワース)は、妻子と共に過ごせる陸軍内勤への転属が認められたばかりだったが、特殊部隊に志願し、12名から成る特殊作戦実行部隊の隊長に任命される。
10月16日、ウズベキスタンに到着した特殊部隊は、反タリバンの北部同盟のドスタム将軍(ナヴィッド・ネガーバン)に協力し、テロ集団の拠点マザーリシャリーフを6週間で制圧することを命じられる。11月半ばには雪で山道が封鎖されるからだ。険しい山岳地帯を敵地に向かう手段は馬しかない。牧場育ちのネルソン隊長以外は、乗馬の経験すらなかった・・・

アフガニスタンの反タリバン勢力である北部同盟に協力して成果をあげた特殊部隊を描いた、いかにもの英雄物語。まさに世界の警察を誇りたいアメリカ的な映画だなぁ〜と、観終わってため息。もちろん、米軍の特殊部隊に志願した人たちの対テロ戦争の先鋒に立つという勇気は本物なのですが、今も落ち着かないアフガニスタンを思うと複雑な思いが交錯します。
“ハリウッド随一のヒットメーカーであるジェリー・ ブラッカイマーが、デンマークのCM界の鬼才でコソボ紛争を追った報道写真家でもあるニコライ・フルシーを監督に抜擢し製作”とあって、紛争地への眼差しは感じられないこともないのですが、やっぱり商業映画だなぁ〜と居心地の悪さを感じてしまうのです。
なぜ同時多発テロは起こったのか、ビンラディンという怪物を作ったのは誰なのか。そして、世の中から争いをなくすにはどうすればいいのか・・・ そこまで踏み込んでくれなくては!(咲)


2018年/アメリカ/カラー/シネスコ/ 5.1chデジタル/130分
配給:ギャガ
公式サイト:gaga.ne.jp/horsesoldiers
★2018年5月4日(金・祝)TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロほードショー






posted by sakiko at 09:16| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年04月28日

ジェイン・ジェイコブズ ニューヨーク都市計画革命(原題:Citizen Jane: Battle for the City)

jane.jpg

監督:マット・ターナウアー
撮影:クリス・ダプキンス
音楽:ジェーン・アントニア・コーニッシュ
出演:マリサ・トメイ(声の出演)、ビンセント・ドノフリオ(声の出演)

1950年代、大きな権力を持つロバート・モーゼスらが、ニューヨークの大規模都市計画を推進しようとしていた。ワシントンスクエア公園の真ん中に高速道路を通すという自動車中心のもの。ジェイン・ジェイコブズはグリニッチ・ヴィレッジの住民や活動家たちと、この道路建設への反対運動を始める。この攻防を当時の記録映像や音声を集めて追い、初めて丸ごとの彼女に迫ったドキュメンタリー。

ジェイコブズの夫は建築家ですが、彼女自身は建築のプロではありません。主婦の感覚と常識、非凡な洞察力で運動を展開していきます。1961年に「アメリカ大都市の死と生」を執筆。これは建築学のバイブルと言われているそうです。ジェイコブズがあげた「都市が多様性を持つため」の4つの原則は以下。あなたの好きな街はあてはまっているでしょうか?

1 街路は幅が狭く曲がっていて、各ブロックが小さいこと。
2 再開発をしても、古い建物をできるだけ残すこと。
3 各地区には必ず二つ以上の働きを持たせること。
4 各地区の人口密度が十分高いこと。   
(白)


2016年/アメリカ/カラー/シネスコ/92分
配給:東風、ノーム
(C)Thought Equity
http://janejacobs-movie.com/
★2018年4月28日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開
posted by shiraishi at 20:39| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

マルクス・エンゲルス(原題:Le jeune Karl Marx)

marx.jpg

監督:ラウル・ペック
脚本:パスカル・ボニゼール、ラウル・ペック
撮影:コーリャ・ブラント
音楽:アレクセイ・アイギ
出演:アウグスト・ディール(カール・マルクス)、シュテファン・コナルスケ(フリードリヒ・エンゲルス)、ビッキー・クリープス(イェニー)、オリビエ・グルメ(ジョセフ・プルードン)

19世紀半ば。産業革命が社会にひずみを生み、貧困の嵐が吹き荒れたころ。ライン新聞の編集長だったカール・マルクスは、政府の封建主義を批判し続けたため、廃刊の憂き目に遭う。妻とともにドイツを追われたマルクスはパリに落ち着くことになった。一方資本家の息子として生まれ、家業を継ぐことを期待されていたフリードリヒ・エンゲルスは、仕事で訪れたケルンでマルクスに出会う。1944年パリで再会した二人は互いの著書を読み、相手を高く評価していた。ときにマルクス26歳、エンゲルスは24歳であった。

知の巨人カール・マルクスは1918年5月5日プロイセン王国トーリアで生まれ、今年は生誕200周年にあたります。本作は若き日のマルクスに焦点を当てた伝記映画。資本家と労働者の対立が拡大し、揺れ動く時代の中にあってマルクス、エンゲルスとその妻たちは深い友情を育んでいきます。2人の偉人の名前は知っているものの、著書はとても読みこなせる力も興味ももちませんでした。この映画で若き日の2人を見て、遠い遠い存在だったのが、少しだけ近づいたような気がしました。2人の共著「共産党宣言」は1948年に発表されています。出てくる人がたくさんのうえ、彼らの主張や思想がいろいろで、とても関係すら理解したとは言えませんが、興味深い作品ではありました。
ラウル・ペック監督は『私はあなたのニグロではない』(2016)で山形国際ドキュメンタリー映画祭で優秀賞を受賞しています。(白)


2017年/フランス、ドイツ、ベルギー/カラー/シネスコ/118分
配給:ハーク
(C)AGAT FILMS & CIE - VELVET FILM - ROHFILM - ARTEMIS PRODUCTIONS - FRANCE 3 CINEMA ? JOUROR ? 2016
http://www.hark3.com/marx/
★2018年4月28日(土)岩波ホールにてロードショー
posted by shiraishi at 14:08| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年04月22日

オー・ルーシー!

        oh.jpg
監督:平柳敦子
脚本:平柳敦子、ボリス・フルーミン
撮影:パウラ・ウイドブロ
音楽:エリック・フリードランダー
出演:寺島しのぶ(川島節子/ルーシー)、南果歩(綾子)、忽那汐里(美花)、役所広司(小森/トム)、ジョシュ・ハートネット(ジョン)

43歳の独身OL川島節子。代わり映えのしない地味な仕事を惰性でこなしている。このまま勤めていずれ退職し、お一人様のまま生きるのか?誰も入れない部屋は、節子の心のスキマを生める物であふれている。そんなかさついた日常にちょっとした変化が訪れる。
姪の美花から頼まれて、妙な英会話教室に行ってみた節子は、やたら愛想のいいジョン先生に出会う。そこでは金髪巻き毛の鬘をかぶせられて「ルーシー」になる。同じ受講生の中年男・小森はトム。教室では互いにハグを交わすのが決まりで、節子はジョン先生のハグに思わずうっとりしてしまうのだった。久々に潤う心、ときめく胸・・・これは、こ、恋?しかーし節子の思いも知らず、なんと姪の美花とジョン先生は、手に手をとってアメリカに旅立ってしまったのでした。

寺島しのぶさんと役所広司さんが、ただのおばさんとおじさんになっていました。俳優さんのすごさを感じます。このツーショットは初めて見る気がしますが、節子が恋するのは、年下のジョン先生。いや、そっちでなく小森さんが確実よ、と声をかけたくなるところです。
寺島しのぶさんは『ヴァイブレータ』(2003)の舞台挨拶で大森南朋さんと並んだところを、間近で見たことがありますが、透明感のあるほんとに綺麗な方でした。何を演じても寺島しのぶでなく、その役に見える方です。
思い込みの強い節子はちょっとイタイ女性ですが、恋すると思わぬ力が出るもんだ、と納得させられます。眠ったように生きていた節子は突如行動を起こし、はるばるアメリカに飛んでいきます。シリアスでユーモラス、ドタバタもありながら、ほろりとさせる脚本。豪華な配役で驚かされた平柳敦子監督の初長編。ただものではありません。2016年サンダンス・インスティテュート/NHK脚本賞受賞作品でありました。(白)


2017年/日本、アメリカ/カラー/ヴィスタ/95分
配給:ファントム・フィルム
(C)Oh Lucy,LLC
http://oh-lucy.com/
★2018年4月28日(土)ロードショー
posted by shiraishi at 20:14| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。