2018年04月29日
蝶の眠り
監督・脚本・原案:チョン・ジェウン(『子猫をお願い』)
音楽監督:新垣隆
ストーリー・劇中小説:藤井清美
エンディングテーマ曲:根津まなみ
出演:中山美穂、キム・ジェウク(「コーヒープリンス1号店」『アンティーク〜西洋骨董洋菓子店〜』『ラスト・プリンセス 大韓帝国最後の皇女』)、石橋杏奈、勝村政信、菅田俊、眞島秀和、澁谷麻美、永瀬正敏
小説家の涼子(中山美穂)は、同業の作家の夫との愛と別れをもとに描いた小説で若い読者に根強い人気を得て、満ち足りた日々を送っていた。まだ50代の涼子だが、ある日、母と同じ遺伝性アルツハイマーに侵されていることを知る。人生の最期に、小説以外に何かやり遂げたいと、大学で文学の講師を務めることにする。講義の初日、学生たちと訪れた居酒屋に愛用の万年筆を忘れたことから、その店でアルバイトをする韓国人の留学生チャネ(キム・ジェウク)と知り合う。休学中で学費を稼ぎたいチャネに、涼子は愛犬トンボの散歩を依頼する。さらに、手首を痛めた涼子は、チャネに小説を口述してパソコンに打ち込んでもらう。ある日、トンボが突然いなくなったことから、涼子とチャネは急速に距離を縮める。年の差を越えて惹かれあうが、病が進行するにつれ、涼子は不安にかられチャネとの関係を絶つ決意をする。気持ちがすれ違ったまま、チャネは韓国に帰る。
2年後、韓国で作家として歩みだしたチャネの本が、留学生時代の同級生の尽力で日本で出版されることになり、チャネは久しぶりに来日する。涼子の最後の小説を読み、チャネは二人しか知らない記憶が甦る。涼子の家を訪ねると、そこは街の図書館になっていた。チャネは涼子の過ごす療養所に向かう・・・
韓国の女性監督チョン・ジェウンが、日本を舞台にして、韓国で人気の中山美穂を主役に迎え、若い韓国人男性との純愛を描いた物語。
撮影に使った涼子の住む家は建築家・阿部勤氏の邸宅。涼子が蔵書をチャネに自由な発想で整理させた本棚は、色別に並んでいて、グラデーションが素敵。涼子が療養所へ移り住んだ後、街の人たちに図書館として開放されています。50音順とか、分野別とかでなく、色別。偶然手にした本を読んでみるというコンセプト。こんな空間なら、どんな本も楽しめそうです。
私もいつどうなってもいいように、整理しなくては!(咲)
チョン・ジェウン
1969年、韓国ソウル生まれ。韓国芸術総合学校映像院映画科・マルチメディア映像科を同学の第1期生。2001年、長篇劇映画『子猫をお願い』で映画監督としてデビュー。
2017年/日韓合作映画/日本語/112分/5.1ch/DCP
配給:KADOKAWA
公式サイト:http://chono-nemuri.com/
★2018年5月12日(土)、角川シネマ新宿他 全国ロードショー .
クジラの島の忘れもの
監督・編集:牧野裕二
脚本:嶋田うれ葉
脚本協力:牧野裕二
撮影監督:今井孝博(J.S.C)
音楽:鈴木治行
主題歌:ReN「Umbrella」(Booost Music)
出演:大野いと(木元愛美)、森崎ウィン(グエン・コア)、幸地尚子(恵子)、嘉手納良智、神田青、宮島真一、黒田よし子、はるか、グエンニュークイン、北川彩子
2007年沖縄。 阪神大震災で母親を亡くし、一人になってしまった愛美は、しばらく施設で暮らした後沖縄に住む病弱な叔母と住むことになった。沖縄は母と旅した思い出の場所、楽しげな親子連れを見るたびに寂しさがつのった。通りかかったグエン・コアは、海を見つめる愛美に目が止まる。
旅行代理店に勤め始めた愛美は、先輩の恵子に連れられてIT企業アザナを訪ねる。社長が紹介した研修生は、台湾人のヤンと、ベトナム人のコアだった。恵子が愛美の歓迎会にアザナの3人を誘い、コアは「ベトナムの町や人々をもっと豊かにしたい」と夢を語る。愛美は「母と一緒に見たクジラのブリーチ(ジャンプ)をもう一度見たい」とうちあける。アザナから旅行の依頼が入った。愛美の話を聞いたコアが希望した「座間味島のホエールウォッチング」だった。
人生の意味を見失ってしまった愛美と、将来に夢を持っているコアが沖縄で出会うことから始まるラブストーリー。実話を元にしているそうです。傷ついて自分の殻に閉じこもっていた愛美の心を、純朴でまっすぐなコアが開いてゆきます。生きる力までなくしていた愛美が、自分の中に残されていたものに少しずつ気づかされていく過程が丁寧に描かれていました。沖縄とベトナムの美しい風景が心身を満たしていきます(あ〜私も行きたい!)。
2人のちょっとじれったい恋の進み具合が初々しく、演じる大野いとさんの透明感、森崎ウィンさんの誠実さ、お2人の持ち味がピュアなストーリーを支えていました。牧野裕二監督は沖縄在住。沖縄の俳優さんたちが多数出演しています。(白)
☆森崎ウィンさんインタビューはこちら
☆完成披露試写会舞台挨拶はこちら
2018年/日本/カラー/シネスコ/98分/
配給:エムエフピクチャーズ
(C)クジラの島の忘れもの製作委員会
http://www.kujiranoshima.com
★2018年5月12日(土)より渋谷シネパレス他全国公開
ボストン ストロング ダメな僕だから英雄になれた(原題:Stronger)
監督:デビッド・ゴードン・グリーン
原作:ジェフ・ボーマン、ブレット・ウィッター
脚本:ジョン・ポローノ
撮影:ショーン・ボビット
音楽:マイケル・ブルック
出演:ジェイク・ギレンホール(ジェフ・ボーマン)、タチアナ・マズラニー(エリン・ハーリー)、ミランダ・リチャードソン(パティ・ボーマン)、リチャード・レイン・Jr.(サリー)、ネイサン・リッチマン(ビッグD)、クランシー・ブラウン(ビッグ・ジェフ)
ジェフ・ボーマンは仕事よりも野球が大切な、いまだ独り立ちできていない男。振られてはヨリを戻している恋人のエレンとは、今は別れている状態だ。未練ありありのジェフは、募金を頼みにバーにやってきたエレンにいいところを見せたいと張り切る。明日のボストンマラソンに出場する彼女に、プラカードを持って応援に行くと約束するが、エレンはいつもいい加減なジェフを信じない。
当日やっぱり遅れそうになったジェフは、大急ぎでゴール地点に向かう。人混みでエレンの到着を待っていると、突然真横で爆発が起きた。目を覚ますと病院のベッドにいて、すでに両脚が切断されていた。生き残ったジェフは、事件の直前に追い越していった男を覚えており、それが犯人逮捕につながる。
2013年4月15日、ボストンマラソンの沿道で起きた爆弾テロ事件。3人が死亡、282人が負傷しました。主演のジェイク・ギレンホールはこの原作にほれ込み、「プロデューサーとして映画を確実に実現したかった」と自分の製作会社の第1作目に選んだそうです。
かなり個性的な役柄の多い彼ですが、この映画ではジェフ・ボーマン本人と時間をかけて交流し、普通のちょっとダメな男を演じています。悲しみに沈んだボストンで、ジェフは再起のシンボルとなりました。英雄扱いされることにとまどい、実際の自分とのギャップに苦しむことになります。
ジェフを支えるためにそばに戻ってきた恋人エレンをタチアナ・マズラーニ。ダメな男につきものの強くて愛情溢れ(すぎ)る母親は、ミランダ・リチャードソン。沢山の家族・友人が両脚をなくしたジェフを心身両面から支え、周りの人たちの大切さに今更ながら気づかされます。何もなくても大事にしなくちゃ。
ボストンの事件を扱った映画に『パトリオット・デイ』があります。(2016/ピーター・バーグ監督)(白)
2017年/アメリカ/カラー/シネスコ/120分
配給:ポニーキャニオン
(C)2017 Stronger Film Holdings, LLC. All Rights Reserved. Motion Picture Artwork (C)2018 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.
http://bostonstrong.jp/
★2018年5月11日(土)TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー
名もなき野良犬の輪舞 (英題:The Merciless)
監督・脚本:ビョン・ソンヒョン
撮影:チョ・ヒョンレ
音楽:キム・ホンジプ、イ・ジニ
出演:ソル・ギョング(ジェホ)、イム・シワン(ヒョンス)、キム・ヒウォン(ビョンガプ)、チョン・ヘジン(チョンチーム長)、イ・ギョンヨン(コ・ビョンチョル)、ホ・ジュノ(キム・ソンハン)
刑務所を牛耳るジェホの野望は、組織のトップになること。そのためにどんな無慈悲なことも顔色ひとつ変えずにやってきた。新しく入所してきたヒョンスに興味が湧き、親しく言葉を交わすようになる。ヒョンスはジェホのピンチを救い、母の葬儀を出してくれたジェホを兄貴と慕う。兄弟分となった2人は出所後、組織を乗っ取ろうと計画する。
信頼と裏切りの中で踊る名もなき男たちの運命とは・・・名もなき野良犬の輪舞(ロンド)と予告編が閉じたときは、なんだかお洒落なノワールではないか、と想像しました。裏社会に生きる男たちの騙し騙されの攻防は、これまでの韓国ノワール同様冷徹で苦痛がこっちまで届きそうです。しかし人物の表情にフォーカスした画面、写真誌のグラビアかと思うような風景がスタイリッシュです。
名優ソル・ギョングにがっぷり四つで取り組んだヒョンス役のイム・シワン。『戦場のメロディ』は歌手でもあるシワンに似合った優しい少尉役でしたが、今回はしっかりアクション俳優に変身。脇で渋く光るイ・ギョンヨンにホ・ジュノ。これが3作目の長編、それも前作と全く違うテイストというビョン・ソンヒョン監督、すごいじゃないですか。(白)
2017年/韓国/カラー/シネスコ/120分
配給:ツイン
(C)2017 CJ E&M CORPORATION ALL RIGHTS RESERVED
http://norainu-movie.com/
★2018年5月5日(土)新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル(原題:I, Tonya)
監督:クレイグ・ギレスピー
脚本:スティーブン・ロジャース
撮影:ニコラス・カラカトサニス
音楽:ピーター・ナシェル
出演:マーゴット・ロビー(トーニャ・ハーディング)、セバスチャン・スタン(ジェフ・ギルーリー)、アリソン・ジャネイ(ラヴォナ・ハーディング)、ジュリアンヌ・ニコルソン(ダイアン・ローリンソン)、ポール・ウォルター・ハウザー(ショーン)、マッケンナ・グレイス(トーニャ・ハーディング8〜12歳)
トーニャ・ハーディングは貧しい家庭に育った。幼いうちにスケートを始め、才能を見い出した母親は娘を一流のスケーターに育てて、貧困から脱出しようとする。トーニャは母の罵倒に耐え、1991年の全米選手権で、アメリカ人で初のトリプルアクセルを成功させる。念願のオリンピック代表選手となったが、アルベールオリンピックではメダルに届かず。リレハンメルオリンピックの選考会となる全米選手権の会場で、ライバルのケリガン選手の殴打事件が起こる。ケリガン選手が欠場してトーニャが優勝する。リレハンメルオリンピックの出場権を得たが、入賞に留まった。一方怪我から復帰したケリガンは銀メダルを獲得した。事件の犯人は元夫の友人だったが、トーニャはスケート界から追放されてしまう。
トーニャ・ハーディングのニュースは日本でも流れて「靴紐が〜」と審査員の前で泣くようすをうっすら覚えています。どういう育ち方をしてきたのか、この映画で初めて知りました。子どものころから唯一の頼りの母から愛されるどころか虐待を受け、逃げ出すように結婚した男は最低。その友だちは輪をかけてバカというマイナスの足し算ばかり(かけるとプラスになるので足す)。せっかくの才能をこんな形でつぶしてしまい、本当にもったいない!
マーゴット・ロビーが制作・主演して、美しい顔をゆがめて怒鳴りまくっています。スケートも特訓して身につけたという根性ある方です。『ウルフ・オブ・ウォールストリート』でレオナルド・ディカプリオの妻ナオミを演じて印象に残っていましたが、最近では『スーサイド・スクワッド』の 過激で可愛いハーレイ・クイン。どの役でも存在が際立つ人で、トーニャ役もぴたり。
この鬼母役で強烈な印象を残すアリソン・ジャネイは、TVシリーズ「ザ・ホワイトハウス」のCJ・クレッグ報道官役で大ブレイク、エミー賞受賞のベテラン女優さん。今回の母役でゴールデン・グローブ、アカデミー賞ほかで助演女優賞に輝きました。(白)
2017年/アメリカ/カラー/シネスコ/120分
配給:ショウゲート
(C)2017 AI Film Entertainment LLC. All Rights Reserved.
http://tonya-movie.jp/
★2018年5月4日(金)ロードショー