2018年01月28日

スリー・ビルボード(原題:Three Billboards Outside Ebbing, Missouri)

3.jpg

監督・脚本:マーティン・マクドナー
撮影:ベン・デイビス
音楽:カーター・バーウェル
出演:フランシス・マクドーマンド(ミルドレッド)、ウディ・ハレルソン(ウィロビー)、サム・ロックウェル(ディクソン)、アビー・コーニッシュ(アン)、ジョン・ホークス(チャーリー)、ピーター・ディンクレイジ(ジェームズ)

ミズーリ州の片田舎の道路沿い。それまで忘れられ古びていた3枚の看板が真っ赤に塗り替えられ、地元警察のウィロビー署長の責任を問う言葉が書かれた。何者かに娘を無残に殺されたシングルマザーのミルドレッドが、7ヶ月前の事件にもかかわらず捜査は進展しないのに業を煮やしたのだった。真っ先に看板を見つけた警官のディクソンが広告会社に掛け合うが、違法ではないと突っぱねられる。
ウィロビー署長はミルドレッドを訪ね、捜査を続けていることを説明するが、ミルドレッドは撤去するつもりなどなく、テレビの取材陣にも怒りと悲しみをぶつける。ウィロビー署長を敬愛するディクソンや街の人々から嫌がらせを受け孤立しても、気持ちは揺るがない。

娘はレイプされたうえ火をつけられて殺されています。母親ならば怒り狂って当然。署長は捜査していると言うけれども、警察署の中はのんびりして暴力警官のディクソンはやりたい放題。署長の病気は気の毒でも、これは抗議されてもしかたがありません。ミルドレッドがさらに過激になるのには、ちょっと待てと思いましたが。
フランシス・マクドーマンドは『スタンドアップ』(2005)でも炭鉱のセクハラに立ち向かう主演のシャーリーズ・セロンを支える主婦役で、多くの賞にノミネートされていました。芯の強い姉御肌の女性が似合いますが、今回はさらに強くなっています。
サム・ロックウェルはほとんど一人で出ずっぱりだった『月に囚われた男』(2009)が忘れられません。差別主義者でマザコンの警官ディクソンは問題ばかり起こすのですが、実は多くの面を持っていて振れ幅が大きい役でした。本年度賞レースの大本命の作品をお見逃しなく。(白)


2017年/イギリス/カラー/シネスコ/116分
配給:20世紀フォックス
(C)2017 Twentieth Century Fox
http://www.foxmovies-jp.com/threebillboards/
★2018年2月1日(土)全国ロードショー
posted by shiraishi at 19:51| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

花咲くころ  原題Grzeli nateli dgeebi  英題In Bloom

hanasakukoro.jpg

監督:ナナ・エクフティミシュヴィリ、ジモン・グロス
出演:リカ・バブルアニ、マリアム・ボケリア

1992年春、ジョージア(グルジア)の首都トビリシ。ソ連解体後、独立したものの、まだまだ落ち着かない。14歳の少女ナティアとエカは、今日もパン屋に並び争奪戦。
ナティアの父は酒乱で父母の喧嘩が絶えない。一方、エカの父は不在がち。久しぶりに父が帰ってきた翌日、遅刻し「父がアブハジアから帰ってきたので」と言うと、先生から「あそこに行く目的は泥棒」と言われてしまう。
学校を飛び出し遊園地に行くエカたち。追いかけてきた男の子がエカに「結婚してくれ」と迫るが、「いや! 馬鹿だから」と追い払う。ナディアも二人の男の子から思いを寄せられていた。ナティアはその一人ラドから銃弾の入ったピストルを渡される。喧嘩している男の子たちに銃口を向けてみるエカ。
ある日、通りを歩くナティアは車で連れ去られ、彼女に目をつけていた男と無理矢理結婚させられてしまう。ナティアには好きな人がいたのに、諦めの境地。結婚式に招かれ、男踊りを踊ってみせるエカ。
ナティアの新居を訪れたエカは、学校をやめた彼女に皆の近況を報告する。結婚式で借金して、皆を家に招きたいけどできないと寂しがるナティア・・・

内戦の続く不安定な社会で友情をはぐくむ少女たちの姿をみずみずしく描いた作品。
ベルリン国際映画祭国際アートシアター連盟賞、2013年・第14回東京フィルメックスの最優秀作品賞など、各国の映画祭で評価されている。
ジョージアの女性監督ナナ・エクチミシヴィリと、ドイツのジモン・グロス監督との共同監督作品。ナナ・エクチミシヴィリは、1978年生まれで、本作の時代1992年の時には14歳。エカは自身の分身だという。

略奪婚(誘拐婚)といえば、トルコ系のキルギス族が代表格と思っていた。調べてみたら、グルジアや北コーカサスでも、何百年も続く土着の慣習とあった。持参金・結納金の心配をしなくてもいいという利点があってのこと。合意の上で、略奪場所も決めて女性を男性の家に連れ込むことも多い。それが、キルギスでも最近は誘拐まがいの略奪婚が横行していて問題になっているそうだ。人権無視もはなはだしい。 
 あと、注目したのが、冒頭、「キプチャク人4万人を移動させて…」と、ラジオから流れてくるニュース。ロシアが意図的に民族移動をさせたことが元で、今もあちこちで火種が絶えない。映画の最初にさりげなく入れたところに、監督たちの思いを感じた。(咲)


*岩波ホール創立50周年 記念作品第1弾

2013年/ジョージア(グルジア)・ドイツ・フランス/ジョージア語/102分/カラー/1:2.35
配給:パンドラ
後援:在日ジョージア大使館
公式ページ http://www.hanasakukoro.com/
★2018年2月3日(土)より岩波ホールほか全国順次ロードショー


posted by sakiko at 10:08| Comment(0) | グルジア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

東の狼

higasino ookami.jpg

監督:カルロス・M・キンテラ
エグゼクティブ・プロデューサー:河P直美
出演:藤竜也、大西信満、小堀正博

ニホンオオカミは、百年前に東吉野村で最後の一匹が目撃され、絶滅が認定されている。それでも、地元の年老いた猟師アキラは、いまだに狼がいると信じて森を彷徨っている。猟師会の会長を務めるアキラは皆の反対を無視して、猟師会の予算で監視カメラを森に据え付ける・・・

なら国際映画祭の映画制作プロジェクトNARAtive(ナラティブ)として誕生した作品。河瀬直美がエグゼクティブ・プロデューサーを務め、キューバ出身のカルロス・M・キンテラ監督がメガホンを取った。
藤竜也が、「狼は必ずいる」と信じる頑固者アキラを好演。
アキラが、東京に行くという青年に、こんな狭い日本にいないで世界に飛びたてという場面で、「モヒートが美味い。キューバはいいよ」と語らせているところに、キューバ出身のキンテラ監督らしさがチラリとみえます。40年前に恋したらしい相手も、どうやらキューバの女性。常に厳しい表情のアキラが、彼女を思い出す場面で、ふっと顔が緩みます。
はたして、ほんとうにニホンオオカミは絶滅したのでしょうか・・・ (咲)


2017年/日本・イギリス・スイス/79分/カラー/HD
配給:HIGH BROW CINEMA
公式サイト:https://ldhpictures.co.jp/movie/higashinoookami/
★2018年2月3日(土)より新宿ピカデリーほか全国順次公開




posted by sakiko at 09:54| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月27日

サファリ    原題:SAFARI

safari.jpg

監督:ウルリヒ・ザイドル(パラダイス3部作『愛』『神』『希望』)
出演:ゲラルド・アイヒンガー、エヴァ・ホフマン、マニュエル・アイヒンガー、ティナ・ホフマン、マンフレート&インゲ・エリンガー、マリタ&フォルカー・ネーマン、マルコルフ・シュミット

南アフリカ、ナミビアのハンティング・ロッジ。
瀟洒な部屋でカタログを見ながら値段を口にする老夫婦。料金はここで取り扱う動物の狩猟料だ。
サファリスタイルの若いカップルが、案内人のあとを静かに行く。今だ!と、木陰から獲物に銃口を向ける。命中。仕留めたシマウマと嬉しそうに記念写真を撮るカップル。
一転、カメラはシマウマの皮を手馴れた様子で剥ぐ黒人の男たちを映し出す。
肉の塊を貰って帰り、粗末な家の一室で焼いて食べる男・・・

本作はナミビアでハンティングをするドイツとオーストリアのハンターたち、ハンティング・ロッジを経営するオーナー、そして、サファリをガイドする原住民たちを追ったドキュメンタリー。

“トロフィー・ハンティング”という言葉を初めて知った。
獲物の毛皮や頭だけを目的に動物を狩猟するレジャー。現在、サハラ沙漠以南のアフリカ24カ国で野生動物の狩猟が許可されていて、年間1万8500人のハンターがトロフィー・ハンティングを楽しんでいるそうだ。収益は年間約217億円。アフリカ諸国では、一大観光収入源として積極的にハンティングを許可しているという。
本作は、淡々と映し出しているだけで、是非を語るわけではない。だからこそ、こうした享楽にお金を投じられる者と、黙々と動物を捌く者の対比が、なんとも虚しく胸に迫ってくる。(咲)


2016年/オーストリア/90分/DCP/カラー/16:9/5.1ch/ドイツ語、オーストリア語
配給:サニーフィルム
後援:オーストリア大使館 / オーストリア文化フォーラム
公式サイト:https://www.movie-safari.com/
★2018年1月27日(土)シアター・イメージ フォーラムほか全国劇場ロードショー




posted by sakiko at 21:10| Comment(0) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ゴーギャン タヒチ、楽園への旅  原題:Gauguin Voyage de Tahiti

gauguin.jpg

監督:エドゥアルド・デルック
出演:ヴァンサン・カッセル(『ブラック・スワン』『美女と野獣』)、ツイー・アダムス、マリック・ジディ、プア・タウ・ヒクティニ

株式仲買人だったゴーギャンは、ピサロなど印象派の画家たちとの親交を経て画家への道を志す。1876年にはサロンへの入選も果たすが、次第に近代主義全盛のパリに嫌気がさす。マルティニーク島やパナマへの旅を経て、ついに見つけた楽園がタヒチだった。詩人マラルメの働きかけで政府から渡航費も工面し、妻の実家コペンハーゲンから妻と5人の子どもたちを呼び寄せたが、妻子からは同行を拒まれる。ゴーギャンは一人で旅立つが、タヒチに着いた彼は病に罹り、白人医師のもとに運ばれる。入院を勧められるが、初心を貫こうと画材一式を持って島の奥地へと向かう。森の奥の部落で客人として迎えられ、少女テフラを妻にもらう。彼女に野生の美しさを見出したゴーギャンは、彼女をモデルに一日中絵を描き、村の暮らしにも馴染んでいく。しかし、タヒチの奥地にも西洋文明が忍び寄り、テフラも皆と同じように白い服を着て教会に行きたいと言い出す・・・

ゴーギャンといえばタヒチ。南太平洋で見つけた楽園で、のどかな後半生を過ごしたというイメージを持っていましたが、本作を観て、決してゴーギャンにとってタヒチは最後まで楽園ではなかったことを知りました。帰国を決意するも、飛行機で十数時間で飛んで帰れる今と違って、故国に帰るには日数も費用もかかった時代。どんな思いだったでしょう。ゴーギャンの描いたタヒチが、以前と違った印象で語りかけてくるように感じます。(咲)

2017年/フランス/102分/シネスコ/DCP
配給:プレシディオ
後援:タヒチ観光局
公式サイト:http://gauguin-film.com/
★2018年1月27日(土)よりBunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ他 全国順次ロードショー




posted by sakiko at 20:59| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。