2017年12月10日

ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命   英題:THE ZOOKEEPER’S WIFE

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監督:ニキ・カーロ(『スタンドアップ』) 
脚本:アンジェラ・ワークマン 
原作:ユダヤ人を救った動物園 ヤンとアントニーナの物語(亜紀書房)
出演:ジェシカ・チャステイン、ダニエル・ブリュール、ヨハン・ヘルデンベルグ、マイケル・マケルハットン 

1939年、ポーランド、ワルシャワ。ヤンとアントニーナの夫妻は、当時ヨーロッパ最大の規模を誇るワルシャワ動物園を営んでいた。
1939年秋、ドイツがポーランドに侵攻し、第二次世界大戦が勃発する。動物園の存続が危うくなる中、アントニーナはヒトラー直属の動物学者・ヘックから、動物を救うため希少動物を預かりたいと申し出を受ける。しかし、数日後、ヘックは態度を一変。「上官の命令だ」と、園内の動物たちを撃ち殺し始める。
この頃、ユダヤ人が次々とゲットー(ユダヤ人強制居住区)に連行されていた。その様子に、ヤンは妻のアントニーナに動物園をユダヤ人の隠れ家にすることを提案する。すでに動物園としては成り立たなくなっていて、ヤンは、動物園をドイツ兵の食料となる豚を飼育する「養豚場」として機能させていた。その餌となる生ごみをゲットーからトラックで運ぶ際に、ユダヤ人たちを紛れ込ませて運び出すという作戦を実行する。連れ出したユダヤ人たちを、自分たちの住む管理棟の地下に広がる動物のための檻が置かれた場所に匿う。園内にはドイツ兵が常駐していたが、夜になり彼らが寝静まった頃には、上の部屋に呼び出して温かい食事を提供し、くつろぎのひと時を過ごせるよう配慮した。上にあがっていい安全な時と、音をたてないで身を潜める時の区別は、アントニーナの弾くピアノの曲が合図だった。
ヤンは地下活動で留守がちで、アントニーナは一人でドイツ兵からユダヤ人たちを守る日々が続く・・・

ナチスの迫害からユダヤ人をいろいろな形で救った人たちがいることは、これまでにも映画で描かれてきましたが、動物園を隠れ蓑に匿ったことは初めて知りました。二人が匿ったユダヤ人は、数日の人から長期に亘った人まで総勢約300人にのぼるそうです。映画の最後に、ヤンとアントニーナの夫妻が、戦後およそ20年後、イスラエル政府から「諸国民の中の正義の人」に認定されたと記されていました。多くの非ユダヤの善意の人のお陰で命が救われたことを忘れないためのユダヤ人国家としての感謝の気持ちを表わすもの。そのユダヤ国家のパレスチナへの仕打ちを思うととても複雑な思いになります。そして、いま、世界全体に広まっている不寛容の空気。そんな時だからこそ、本作を鏡に、人種で他者を排除することの悲劇を繰り返さないようにしてほしいものです。(咲)
  
2017年/チェコ・イギリス・アメリカ/127分/スコープサイズ/5.1ch
配給:ファントム・フィルム
後援:ポーランド広報文化センター 公益社団法人日本動物園水族館協会 
協力:赤十字国際委員会(ICRC)
公式サイト:http://zookeepers-wife.jp/
★2017年 12月15日(金)より、TOHOシネマズみゆき座他にて全国公開




posted by sakiko at 09:29| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月03日

紅い襷 富岡製糸場物語

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(C)2017 富岡市/富岡製糸場映画製作委員会

劇場公開日 2017年12月2日

企画・製作:富岡市 製作総指揮:岩井賢太郎 
監修:今井幹夫、クリスチャン・ポラック
構成・総合プロデューサー:家喜正男 
プロデューサー:大谷千明樹、櫻井顕 
作:松井香奈 
監督:足立内仁章 撮影監督:間賢治(J.S.C.) 
美術:西沢和幸 音楽監督:谷川賢作
出演
水島優 吉本実憂 桐島ココ 木村夏子 ジリ・ヴァンソン 太田緑ロランス 金澤美穂 藤原希 中井ノエミ近童弐吉 木村知幸 愛華みれ 佐伯日菜子 磯部勉 高橋ひとみ
豊原功補 西村まさ彦 大空眞弓

激動の明治初期、女性たちの誇りがそこにはあった

明治政府は明治5年、群馬県富岡市に西洋と日本の技術を融合した世界最大規模の製糸工場、富岡製糸場を設立した。2014年、世界遺産に登録された富岡製糸場を題材に製作されたこの作品は、明治時代に日本の近代化を支える絹の生産に携わった女性たちの姿を描いている。
フランスから招いた“生糸の神様”に「生き血を抜かれる」という荒唐無稽な噂話が全国に広がって、工女集めに難航していると聞き、明治6年春、長野県松代の区長の娘、横田英は反対する父を松代と新しい日本の為と説得し、同郷の河原鶴らとともに富岡製糸場に工女として入場した。製糸場に到着した工女たちが目にしたのは、見たこともない美しいレンガ作りの建物とピカピカの機械。そして真摯に糸を紡ぐ先輩工女たちの姿だった。
全国から集った工女たちは、フランス人女性教師の厳しい指導のもと、繭から糸を取り出す作業から始め、糸を紡ぐまで技術を一日も早く習得し、紅い襷(たすき)を掛けることが許される一等工女になり、故郷で指導者になることを目指していた。しかし、身分や出身県による差別などの問題も出てきた。さまざまな苦労を味わいながらも、製糸業を通して日本の近代化に尽力した若き日本人女性たちの姿を描いた。長野・松代の工女、横田(和田)英の手記と取材資料をもとに作った作品。

製糸業というと「あゝ野麦峠」が有名だが、副題は「ある製糸工女哀史」。こちらは飛騨から岡谷の製糸工場に働きに出た少女たちの悲惨な姿を通して、国策で有力な貿易品であった生糸の生産を支えた工女たちの姿を伝えている。『紅い襷 富岡製糸場物語』は、その前の時代の女性たちの姿ということかなと思う。富岡製糸場で糸紡ぎをマスターした工女たちが故郷に帰って指導したということで、いずれも、そういう工女たちの働きが明治時代にあったということを忘れてはいけないと思う。(暁)

公開情報
東京都 12月2日(土)〜12月14日(木)渋谷シネパレス 
愛知県 12月9日(土)〜 名演小劇場 
宮城県 12月30日(土)〜 桜井薬局セントラルホール
埼玉県 1月6日(土)〜1月12日(金) MOVIXさいたま
公式HP https://akaitasuki.com/
(2017/100分/カラー/日本/ビスタサイズ/デジタル)
配給 パル企画 上映時間100分













posted by akemi at 21:07| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

女の一生(原題:Une vie)

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監督・脚本:ステファヌ・ブリゼ
原作:ギイ・ド・モーパッサン
撮影:アントワーヌ・エベルレ
音楽:オリビエ・ボーモン
出演:ジュディット・シュムラ(ジャンヌ)
ジャン=ピエール・ダルッサン(男爵:ジャンヌの父)
ヨランド・モロー(男爵夫人:ジャンヌの母)
スワン・アルロー(ジュリアン)、ニナ・ミュリス(ロザリ)

男爵家のひとり娘、17歳のジャンヌは親の決めた子爵ジュリアンと結婚が決まった。何不自由ない暮らし、仲睦まじい若夫婦…幸せな人生を送るはずだったが、女中のロザリがジュリアンの子を宿していることがわかった。乳姉妹だったロザリが自分の夫と密通していたと知り、ジャンヌは深く傷つく。ロザリが出て行き、ジュリアンは許しを乞い、元のさやに戻るがジュリアンの浮気はそれからも重なった。愛する母が死に、一人息子ポールは溺愛が過ぎたか、ジャンヌの期待を悉く裏切っていく。

修道院で教育を受けてきた清純な10代から数十年に渡り、運命に翻弄され続けた女性の一生。女性が主体的に生き方を選べなかった時代ではありますが、それにしても不幸の種は昔も今も変わりません。
原作の「女の一生」は1883年、モーパッサン33歳のときの作品です。Wikipediaによると両親が不仲で離婚し、母親に育てられた人だそうですが、苦難の多い女性の物語なので、もっと年取った作家の著作だと思っていました。そんなに若いときの作品だったと今回初めて知りました。20代から作家の道に進みましたが、先天性梅毒を病み苦しんだようです。43歳で没するまでに長編6作のほか、多くの中・短篇を残しています。波乱の人生だったんですね。監督・脚本は『母の身終い』『ティエリー・トグルドーの憂鬱』のステファヌ・ブリュゼ。3度目のタッグとなる撮影監督のアントワーヌ・エベルレの映像が美しいです。(白)


2016年/フランス/カラー/スタンダード/119分
配給:ドマ、ミモザフィルムズ
(C)TS PRODUCTIONS (PHOTO MICHAEL CROTTO)-AFFICHE NUITDECHINE
http://womanslife.jp/
★2017年12月9日(土)より岩波ホールほか全国順次公開
posted by shiraishi at 18:50| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ビジランテ

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監督・脚本:入江悠
撮影:大塚亮
音楽:海田庄吾
出演:大森南朋(神藤一郎)、鈴木浩介(神藤二郎)、桐谷健太(神藤三郎)、篠田麻里子(神藤美希)、嶋田久作(岸公介)、間宮夕貴(サオリ)、吉村界人(石原陸人)、岡村いずみ(亜矢)、般若(大迫護)、菅田俊(神藤武雄)

埼玉のとある町。三人の兄弟が、暴力を振るう父親にナイフを向ける。逆に袋叩きにあい、厳しい折檻を受けた。長男の一郎はその夜、着の身着のままで出奔して帰って来なかった。それから30年、町の有力者だった父親が亡くなった。次男の二郎は父親の遺した地盤を力に市会議員になり、やり手でしっかり者の妻と娘と暮らしている。三男の三郎はデリヘルの雇われ店長。
そんな折、行方知れずだった一郎が戻って来た。多額の借金で首が回らず、返済に充てるために遺産は自分のものにすると言う。一郎はあれほど嫌っていた父親とそっくりの暴力的な男になっていた。

『22年目の告白 私が殺人犯です』『SR サイタマノラッパー』(2009)シリーズの入江悠監督のオリジナル脚本。「ビジランテ」とは法や正義が及ばない世界で、自分の大切なものを守りぬく自警集団のことだそうです。二郎が自警団長ですが、団長とは名ばかりで議員の名誉職のようなもの。外国からの住人たちとの不穏な小競り合いを収められず、家では妻にリードを取られ、先行き不安な感じです。この妻役の篠田麻里子さんが、AKB時代の麻里子サマと別人(本当のところは知りませんが)の悪女っぽさぷんぷんで、二郎捨てられそう…。
一郎の大森南朋さんは期待どおり、菅田さんに負けない怖さ。そのくせ傷ついた内面が透けて見えそうな脆さもありました。そして三郎の桐谷健太さんがいい役でした!『彼らが本気で編むときは』も優しくて頼もしい役でしたが、窮地にあるデリヘル嬢を助けに行くなんざカッコ良すぎるではありませんか。3人兄弟の中で一番心根まともに育っていました。その男気に惚れます!
“とある町”は入江監督の地元、深谷でのロケだったようです。完成披露試写会の舞台挨拶では、入江監督が花束の代わりに深谷の名産「深谷ネギ」を贈呈したそうで、その晩はあちこちで美味しい鍋が囲まれたかも。暴力満載で痛いけれど、男たちの生き様に目が離せない、心に刺さる映画でした。入江監督&俳優さんに拍手。(白)


2017年/日本/カラー/シネスコ/125分
配給:東京テアトル
(C)2017「ビジランテ」製作委員会
http://vigilante-movie.com/
★2017年12月9日(土)より テアトル新宿ほか全国ロードショー
posted by shiraishi at 18:03| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ラ・ベア マッチョに恋して(原題:La Bare)

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監督:ジョー・マンガニエロ
撮影:アンドリュー・ホイーラー
音楽:Z-Trip
出演:マスターブラスター、チャニング、チェイス、トレント、DJニック・アダムス、シーザー、コール、ジョー・ミラー、アレックス、JD、オースティン

アメリカ・テキサス州ダラスにある男性ストリップクラブ「ラ・ベア」。そこで働く人気のダンサーたちの本音やショーの内側に迫ったドキュメンタリー。『マジック・マイク』(2013〜)シリーズで知られる俳優ジョー・マンガニエロの初監督作品。今も現役、大ベテランのランディをはじめ、映画を観てストリッパーに憧れて入った可愛い若手チャニング(映画にちなんだステージネーム)たちの舞台裏を見せます。

ハリウッドの人気スター、チャニング・テイタムが10代の頃にストリッパーとして働いたことがあり、その体験談を元にした『マジック・マイク』がヒットしました。へ〜〜と思いながらこのシリーズを楽しみましたが、そちらはフィクション。こちらは俳優として出演したジョー・マンガニエロがメガホンをとったドキュメンタリー。たぶん嫉妬も相まって男性の評価は低いかもしれませんが、熱狂する女性たちのコメントをよく聞いていただきたいもの。仕事とはいえ、女性にこよなく優しいイケメン&マッチョな男性ストリッパーをたっぷり観られますので、特に女性たちよ劇場へGO!それにしてもアンジェロは惜しいです…。(白)

2014年/アメリカ/カラー/ビスタ/91分
配給:パルコ
(C)2014 La Bare/3:59 Incorporated. All rights reserved
http://www.labare-movie.jp/
★2017年12月9日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田ほか全国ロードショー
posted by shiraishi at 16:32| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする