2017年11月12日

密偵(原題:The Age of Shadows)

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監督:キム・ジウン
脚本:イ・ジミン、パク・ジョンデ
撮影:キム・ジヨン
音楽:モグ
出演:ソン・ガンホ(イ・ジョンチュル)、コン・ユ(キム・ウジン)、ハン・ジミン(ヨン・ゲスン)、鶴見辰吾(ヒガシ)、オム・テグ(ハシモト)、イ・ビョンホン(チョン・チェサン)

1920年代、日本統治下にあった朝鮮。イ・ジョンチュルは総督府警務局部長のヒガシから「義烈団監視」の特命を受ける。朝鮮人警察官でありながら愛国の同胞を監視せねばならない。日帝から祖国を取り戻そうとする義烈団のリーダーのキム・ウジンと懇意になり、互いの立場を知りながらの腹の探り合いが展開する。情報が錯綜する中、ジョンチュルは義烈団のチョン・チェサン団長にも引き合わされる。義烈団は京城の施設を破壊するため大量の爆弾を列車に積み込んだ。息詰まる諜報合戦が続くが、どこからか情報が洩れていた。

『悪魔を見た』(2010)のキム・ジウン監督のもと、ソン・ガンホ、コン・ユ、イ・ビョンホンら主役級のスターが集まりました。日本がアジア各地で行ってきたことを、支配されていた側の映画で知らされると、毎度身の置き所がありません。フィクションの形ではあっても、近い史実はあるわけです。学校の近代史ではほぼ端折られていて、映画で初めて知ったときは「自分の無知」に驚きました。同じ敗戦国のドイツが自国の過ちを振り返っていくつもの作品で描いているのになぁ。
この作品は自分の立場と祖国との間で苦悩するソン・ガンホの演技と、日韓双方の諜報合戦が見ものです。ほんの少し出てくるイ・ビョンホンがその場をさらっていきます。
ソン・ガンホは第53回 百想芸術大賞で主演男優賞、ハシモト役のオム・テグ(目力あり。日本語はいまいち)が第53回 大鐘賞で助演男優賞を受賞しています。(白)


2016年/韓国/カラー/シネスコ/140分
配給:彩プロ
(C)2016 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
http://mittei.ayapro.ne.jp/
★2017年11月11日(土)シネマート新宿ほか全国順次ロードショー
posted by shiraishi at 17:47| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

南瓜とマヨネーズ

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監督・脚本:冨永昌敬
原作:魚喃キリコ
撮影:月永雄太
音楽監修・劇中歌:やくしまるえつこ
出演:臼田あさ美(ツチダ)、太賀(せいいち)、浅香航大(寺尾)、若葉竜也(田中)、大友律(川内)、清水くるみ(可奈子)、岡田サリオ(尚美)、光石研(安原)、オダギリジョー(ハギオ)

ライブハウスで働くツチダはミュージシャンを夢見るせいいちと同棲中。スランプに陥っているせいいちは無収入で、作曲に専念してほしいツチダはこっそりキャバクラでも働くことにした。客の安原がもっと稼ぎたいならと、愛人契約を持ちかけてそれも承諾してしまう。せいいちはツチダが隠してあった現金を見つけてしまい、出どころを聞いて大喧嘩になった。配送の仕事を見つけたせいいちとギクシャクしながら、ライブハウスに戻ったツチダは初恋の相手だったハギオにばったり出会う。以前の恋心が蘇り、昔と同じくまとわりついてしまうツチダだったが。

せいいちの夢を叶えてやりたくて風俗で働くツチダ。そんな女心もつゆ知らず、せいいちが傷つくのは仲間からの一言。尽くす女は男をダメにするのかも。こういうカップルはあちこちにいそうです。同年代の人には刺さるはず。これは私だ、俺だと思うことでしょう。臼田あさ美さんと太賀くんはぴたりとはまっていました。いつでもどこにでもありそうな若いカップルのささやかな暮らしが、気恥ずかしくも愛おしいです。
二人の隙間にふわふわと入ってくるのは、元恋人のハギオ。オダギリジョーはこんな役がほんとによく似合います。あの笑顔で「お金」と言われたら使い道も聞かず、返してくれないと思っても渡してしまうよね。大概。
冨永昌敬監督は2006年の『パビリオン山椒魚』を観て、私にはわからんと思ってしまったのですが、そういえば、この作品で出会ったオダギリジョーさんと香椎由宇さんは後に結婚したんでした。(白)


2017年/日本/カラー/93分
配給:S・D・P
(C)魚喃キリコ/祥伝社・2017「南瓜とマヨネーズ」製作委員会
http://kabomayo.com/
★2017年11月11日(土】新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
posted by shiraishi at 16:43| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

不都合な真実2 放置された地球   原題:An Inconvenient Sequel: Truth to Power

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監督:ボニー・コーエン、ジョン・シェンク
出演:アル・ゴア

2016年に製作され、アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞・主題歌賞を受賞した『不都合な真実』の第2弾。前作で地球の気候変動が人類を滅亡させる可能性もあることを訴え、人間が創りだした温室効果ガスの削減への対策の必要性を問うたアル・ゴア元アメリカ副大統領。
あれから10年。アル・ゴアは地球環境問題啓発に貢献したとしてノーベル平和賞を受賞し、さらに自身のすべてを気候変動問題解決の道に賭けてきた。今、出来ることは何か?を問い、2015年にはパリ協定が締結され、全世界が温室効果ガス削減に向け心を一つにした。
ところが、トランプ大統領が就任。地球温暖化はないと言い切り、パリ協定離脱を宣言する。この絶望的な状況の中でも、アル・ゴアは諦めない。「人類の運命は今の私たちに懸かっている。未来の子どもたちを救おう!」と、温厚なアル・ゴアが珍しく声を荒げる・・・

まずは、政治家の判断が、地球の将来をも左右することを見せつけられました。
アメリカ・ファーストを掲げるトランプ大統領ですが、アメリカの企業もパリ協定合意の内容に沿って軌道修正しているはず。アメリカ国内各地で洪水被害も起こり、ニューヨークのグランドゼロも水浸しになった現実をどう考えているのでしょう。国土が荒れては、元も子もないはずです。

本作では、アル・ゴアを追って、グリーンランド、インド、ヨーロッパ、アジア、アメリカへと撮影隊は権力者や科学者と精力的に接する彼の姿を映し出します。
印象に残ったのは、発展途上国の視点での再生可能エネルギーの利用への転換です。
インドでは、化石燃料による大気汚染が深刻な問題になっていますが、インフラ整備も進んでいない中、低コストの化石燃料に頼らざるを得ない実情があります。3億人の貧困層は、そのエネルギーを使うことすらできないでいることに胸を痛めます。太陽光や風力利用のエネルギー開発に転換することで両方の問題を解決すべく、アル・ゴアは資金援助してくれるところを必死になって探します。その努力が実って、低金利の世銀借款が決まったとのこと。

さて、今、私たちが地球の未来のためにできることは?
皆が映画を観て、感じて、実行していけば、きっと大きな力になっていくと思います。(咲)


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第30回東京国際映画祭 クロージング作品として上映され、登壇したアル・ゴア元アメリカ副大統領。

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コンペティション部門審査員長のトミー・リー・ジョーンズとはハーバード大学でルームメイトだった仲。
思わぬ東京での再会となりました。

2017年/アメリカ/98分/カラー/英語
配給:東和ピクチャーズ株式会社
公式サイト:http://futsugou2.jp/
★2017年11月17日 (金) TOHOシネマズ みゆき座ほか全国ロードショー


posted by sakiko at 11:41| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

泥棒役者

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(C) 2017「泥棒役者」製作委員会

監督:西田征史
出演:丸山隆平、市村正親、石橋杏奈、宮川大輔、片桐仁、高畑充希、峯村リエ、ユースケ・サンタマリア

大貫はじめ(丸山隆平)は、泥棒稼業から足を洗って、今は可愛い恋人の藤岡美沙(高畑充希)と同棲しながら町工場で働いている。美沙の誕生日を外で祝おうと、駅前で待ち合わせていたところ、かつての泥棒仲間の畠山則男(宮川大輔)から声をかけられる。鍵開け名人のはじめと組んで、また盗みに入ろうというのだ。嫌なら彼女にばらすと脅され、しぶしぶ、とある豪邸に忍び込む。
そこへ、開いたままの玄関から、油絵の教材セットのセールスマン轟良介(ユースケ・サンタマリア)が入ってくる。はじめを豪邸の家主と勘違いして、売り込みを始める。何とか追い返し金庫を開けようとしていたところに、今度は本物の家主の絵本作家、前園俊太郎(市村正親)が部屋から出てくる。はじめのことを原稿の督促に来た新入り編集者と勘違いしたのをいいことに、編集者に成り切り、前園を部屋に戻すが、今度は本物の編集者の奥江里子(石橋杏奈)が訪ねてくる。新入りで前園の顔を知らない江里子は、はじめを前園と思って話すので、今度は絵本作家に成り切る。そんな中、はじめは、前園が小さい頃に大好きだった絵本「タマとミキ」の作者だと知る・・・

セールスマンの轟も、売り込み再挑戦に戻ってきて、豪邸のリビングで4人が鉢合わせ、カオス状態に。台詞の一つ一つが吟味されていて唸りました。それにしても、泥棒の相棒、畠山はずっとクローゼットに入ったまま! 
勘違いされる度に、家主や編集者に成り切るはじめを演じた「関ジャニ∞」の丸山隆平。
部屋から出てくる度に、奇抜な服装の絵本作家を演じた市村正親。
売り込みの下手なうだつのあがらないセールスマンをひょうひょうと演じたユースケ・サンタマリア。
3人のかもし出す、なんともいえない可笑しさ。
思いもかけない成り行きに、ほっこりさせられました。(咲)


2017年/日本/114分/カラー
配給:ショウゲート
公式サイト:http://dorobou-yakusha.jp/
★2017年11月18日(土)TOHOシネマズ 新宿ほかにて全国ロードショー



posted by sakiko at 11:23| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月11日

人生はシネマティック!(原題:Their Finest)

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監督:ロネ・シェルフィグ
原作:リッサ・エバンス
脚本:ギャビー・チャッペ
撮影:セバスチャン・ブレンコー
音楽:レイチェル・ポートマン
出演:ジェマ・アータートン(カトリン・コール)、サム・クラフリン(トム・バックリー)、ビル・ナイ(アンブローズ・ヒリアード)、ジャック・ヒューストン(エリス・コール)、ヘレン・マックロリー(ソフィー・スミス)、エディ・マーサン(サミー・スミス)、ジェレミー・アイアンズ(陸軍長官)

1940年のロンドン。カトリンは傷痍軍人で画家志望の夫を支え、コピーライターの秘書として働いていた。人手不足のため、彼女が代わりに書いたコピーが情報省映画局特別顧問バックリーの目に留まる。そのころ話題だったのはダンケルクでドイツ兵の包囲の中、イギリス兵を救出した姉妹の感動秘話。戦争で疲弊した国民を勇気づけるため映画化されることになっていた。カトリンは脚本執筆の経験はなかったが抜擢されて脚本チームに加わり、女性ならではのセリフを期待される。
いざ製作が始まるとベテラン俳優アンブローズの要求、軍部から検閲や横やりなどトラブルが続出する。問題が起こるたびに脚本の書き直しに迫られるが、厳しい状況の中スタッフや俳優の結束は高まっていく。

第2次世界大戦中にもかかわらず、映画製作に情熱を傾けていた人たちがいました。実話とは書かれていませんが、どこの国でもプロバガンダであれ、映画が作りたいと頑張っていた映画人たちがいたはずです。劇中劇のプロバガンダ映画製作の過程や楽屋話は面白く、それにからめての家族や恋人との愛憎など小さなドラマが詰め込まれています。不慣れな脚本執筆に悪戦苦闘しながらも、やりがいを見出していく主人公の気持ちにいつか共感します。英国の名優が多数出演している映画愛もたっぷりの作品。
ロネ・シェルフィグ監督は『幸せになるためのイタリア語講座』(00)、『17歳の肖像』(09)、『ワン・デイ 23年のラブストーリー』(11)などで知られています。ちょっとお久しぶりの全国上映。(白)


2016年/イギリス/カラー/シネスコ/117分
配給:キノフィルムズ
(C)BRITISH BROADCASTING CORPORATION / THEIR FINEST LIMITED 2016
http://jinsei-cinema.jp/
★2017年11月11日(土)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開中
posted by shiraishi at 13:46| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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